よみタイ

じいちゃんのアーミースプーンから、戦争と人の生き方について考える
2月26日に、元「smart」編集長・佐藤誠二朗さんの新刊『オフィシャル・サブカルオヤジ・ハンドブック ストリートおじさんの流儀100』が発売されました。 「よみタイ」で大好評だった連載コラム、「グリズリー世代のバック・トゥ・ザ・ストリート」(2019年4月~2020年9月)の中から、著者自らが厳選した100篇を、ファッション、スピリッツ、ライフ&ホビー、カルチャーの4カテゴリーにカテゴライズ。ウンチクとこだわり満載のコラムを豊富な写真とともに収録しています。 この刊行を記念し、連載や書籍の中から著者の佐藤さんが「特に思い入れが深い!」と選び抜いた3篇を、その理由とともに特別掲載。 全3回のスペシャル企画です! 第1回はこちら。 そして、2回目は2019年7月31日に配信した「じいちゃんのアーミースプーンから、戦争と人の生き方について考える」をお送りします。

じいちゃんのアーミースプーンから、戦争と人の生き方について考える

@佐藤誠二朗
何気なく使っている一本のスプーンにも、深い想いが詰まっていたりする。くどくど説明せずとも、行間から察してほしいなと思った回。

我が家には、「U.S.」の刻印が入った1本のスプーンがある。ステンレス製のアメリカ軍用食器である。

検索してみるとまったく同じ仕様のものが、米軍払い下げ品として販売されている。新品もあればヴィンテージとされているものもあるが、何十年もまったくデザインが変わっていないので、両者は見分けがつきにくい。

サープラスのヴィンテージグッズはよく偽物が出回る。ベトナム戦争で“米軍兵士が使っていた実物”として販売されているジッポーなんか、ほとんどが怪しいと聞く。
でも我が家のアーミースプーンは、正真正銘のヴィンテージ。第二次世界大戦当時に使われていたものだ。

なぜならこれは、フィリピンに出征し終戦とともに捕虜となった祖父が、二年間の抑留生活で使用していたものだからだ。
祖父はもうとっくに天国に行ったが、家でもずっとこのスプーンを使っていた。
そして数年前、妻が僕の実家の引き出しから見つけ、「これ、かっこいいね。もらっていい?」と持ち帰ってきたのだ。

何も知らなかった妻にスプーンのバックグラウンドを話したら驚いていたけど、今は普通にサラダの取り分け用にしている。
あまりにも普通に使っているのでほとんど忘れているが、8月に入ると、「あ、そうだった」と思い出すのだ。

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佐藤誠二朗

さとう・せいじろう●児童書出版社を経て宝島社へ入社。雑誌「宝島」「smart」の編集に携わる。2000~2009年は「smart」編集長。2010年に独立し、フリーの編集者、ライターとしてファッション、カルチャーから健康、家庭医学に至るまで幅広いジャンルで編集・執筆活動を行う。初の書き下ろし著書『ストリート・トラッド~メンズファッションは温故知新』はメンズストリートスタイルへのこだわりと愛が溢れる力作で、業界を問わず話題を呼び、ロングセラーに。他『オフィシャル・サブカル・ハンドブック』『日本懐かしスニーカー大全』『ビジネス着こなしの教科書』『ベストドレッサー・スタイルブック』『DROPtokyo 2007-2017』『ボンちゃんがいく☆』など、編集・著作物多数。

ツイッター@satoseijiro

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