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“初期衝動”を保ち続ける男、ザ・スタークラブのHIKAGEが人生を捧げた「パンク」と憧れのヒーローたち

試行錯誤しながら模索した自分なりのパンクスタイルとは

「パンクにもいろいろなスタイルがあるけど、俺はやっぱりビートルズやキャロル、ラモーンズの流れから、シドの革ジャンに影響を受けました。
 ほかのアイテムでは、クラッシュの『ロンドン・コーリング』のオフィシャル映像でいきなり大写しになるラバーソール。そういうのを見て“すげえ!”と思っても、そのころの日本ではどこにも売っていなかった。だから、自分の中でイメージが一番近かった登山靴を履いていました。
 服も同じで、徐々にいろいろなものが入ってくるんですけど、最初は何もなかった。だから限られた情報を頼りに工夫して、自分でシャツを破ったり安全ピンや鎖をつけたりしてましたよ」

 筆者である僕は1969年生まれだが、パンク好きになった中高生の頃、1980年代半ばにはすでにたくさんのパンクショップがあり、お金さえあれば難なくそれらしいファッションを揃えることができた。
 しかし、初期パンクムーブメントを実体験しているHIKAGEは、何もない中で試行錯誤しながら自分なりのパンクスタイルを模索したのだ。DIYを旨とするパンク精神を地でいくようなその話は、僭越ながら少々うらやましかったりもする。

(撮影/木村琢也)
(撮影/木村琢也)

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 そんな日本のパンクのオリジネーターであるHIKAGEに、取材する側の態度としてはあまり好ましくはないと知りながら、丸投げ気味の質問をしてみた。
 HIKAGEさんにとって、“パンク”とは何ですか? と。

「パンクとかロックとかという言葉が持つ響きへの憧れは永遠に変わんないけど、別に今さら、“パンクだからどうのこうの”っていうのは全然ない。そういう年齢になったということなんだろうけど、今は自分が好きか嫌いか。それ以外は、もう何もないですね。
 でもパンクというのは、本当の居場所を探し、とにかく自分を今とは違う場所に持っていきたい、そして熱くなりたい――そんな思いに尽きるんです。だからすべてが満たされていて、今の場所で十分だと思っている人に、パンクは向かないんじゃないかな。
 ただ、あまりにも真面目に窮屈に『パンクとはどうあるべきか』って考えると、『結局そこには何もない』という結論にぶつかってしまう。だから今は昔と比べると、もっとオープンになろうという気持ちもあります」

 机上のロック史ではなく、リアルタイムでムーブメントを体験し、自分なりの“パンク”を実践してきたHIKAGEの言葉の一つ一つは重く、そして貴重だ。

以下、第2回へ続く。9月18日配信予定です。お楽しみに!

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【プロフィール】
ヒカゲ/1959年生まれ、愛知県名古屋市出身。
1977年、名古屋でHIKAGEを中心に結成したザ・スタークラブのヴォーカル。
現メンバーは、HIKAGE(ヴォーカル)、TORUxxx (ギター)、HIROSHI(ベース)、MASA(ドラムス)。
1977年、名古屋でHIKAGEを中心に結成。後のインディーズ・ブームに先駆けて1980年1stミニ・アルバム発表。1984年、徳間ジャパンからメジャー・デビューするまでインディーズ・チャートを独走する。
1986年、ビクターへ移籍後、2003年にスピード・スター・ミュージック、
2004年にクラブ・ザ・スター・レコーズ、そしてノートレスとレーベルを移しながら、年ごとの新作発表及び全国ツアーと絶え間ない展開を現在まで続けている。
2023年、バンド結成47年目を迎える今も、止まる事なく走り続ける、唯一無比の日本のパンク・ロック・バンド。

公式X(旧ツイッター):@thestarclub
公式HP:ザ・スタークラブ公式HP

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佐藤誠二朗

さとう・せいじろう●児童書出版社を経て宝島社へ入社。雑誌「宝島」「smart」の編集に携わる。2000~2009年は「smart」編集長。2010年に独立し、フリーの編集者、ライターとしてファッション、カルチャーから健康、家庭医学に至るまで幅広いジャンルで編集・執筆活動を行う。初の書き下ろし著書『ストリート・トラッド~メンズファッションは温故知新』はメンズストリートスタイルへのこだわりと愛が溢れる力作で、業界を問わず話題を呼び、ロングセラーに。他『オフィシャル・サブカル・ハンドブック』『日本懐かしスニーカー大全』『ビジネス着こなしの教科書』『ベストドレッサー・スタイルブック』『DROPtokyo 2007-2017』『ボンちゃんがいく☆』など、編集・著作物多数。

ツイッター@satoseijiro

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