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80年代UKカルチャーを描いた映画『アウェイデイズ』の公開が待ちきれない!

グリズリー……それは北アメリカ北部に生息する大きな灰色のヒグマの名であると同時に、白髪交じりの頭を形容するスラング。頭にちらほら白いものが目立ち始める40~50代を、アラフォー、アラフィフといってしまえば簡単だけど、いくつになってもオシャレと音楽が大好きで遊び心を忘れない彼らを「グリズリー世代」と名付けよう―― そんな思いを胸に、自身もグリズリー世代真っ只中の著者がおくる、大人の男のためのファッション&カルチャーコラム。

イギリスではモッズムーブメント終了後の1970年代前半、イングランド北部のマンチェスターで、かつてのモッズの音楽とファッションセンスを見直す動きがはじまり、ノーザンソウルと呼ばれるカルチャーが誕生する。
レアなソウルミュージックに合わせ、ダンスホールで派手なステップのダンスを決める彼らソウルボーイズ(=ノーザンソウル愛好者)のいでたちは、踊りやすいように極端な幅広バギーパンツにアディダスなどのスポーツウェアを合わせるスタイルだった。

1970年代後半になると、ソウルボーイズはよりペリーボーイズ(別名・ペリーズ)へと変質する。
フィラフレッドペリーなどのスポーツウェアを着こなしたペリーボーイズは、ダンスホールよりもサッカー場を好んだ。
同年代の若者同士で徒党を組み、地元チームであるマンチェスター・ユナイテッドを熱狂的に応援したのである。

ペリーボーイズはやがて、イギリスの各都市で同時発生的に誕生していた同様の指向性を持つ集団、リバプールのスカリーズ、リーズのドレッサーズ、ロンドンのチャップス(別名・ロンドナーズ)などとまとめて、「カジュアルズ」と呼ばれるようになっていく。

ワーキングクラス出身者が大半を占めたカジュアルズは、小ぎれいなスポーツウェアを着こなしていたが、一皮むけば、忌み嫌われたスキンヘッズと同様のフーリガン的な荒っぽさを持っていた。
そして、1980年代中頃から後半にかけてサッカー場で起きた、複数の悲劇的な群衆事故をきっかけに衰退していく。

だが、1980年代後半にイビザ島とロンドンで巻き起こったダンスカルチャーのレイヴァー、およびマンチェスターで盛り上がったロックカルチャーであるマッドチェスターの核にいたのは、彼らカジュアルズだったとも言われている。

カジュアルズは前述のブランドに加え、ルコックスポルティフやアンブロ、エレッセ、セルジオ・タッキーニなど、イギリス、フランス、イタリアのスポーツウェアがワードローブだった。
スニーカーは決まってアディダスで、今では入手がやや困難なフォレストヒルズやトリムトラブ、それに定番品として現代でも人気なミュンヘンやガッツレー、キャンパスなどを履いていた。

本当は公開初日に鑑賞し、感想を書きたかったのだが……

などと、頼まれもしないのに唐突にカジュアルズについて解説しているのは、10月16日に日本で初公開される映画、『アウェイデイズ』が待ち遠しくて仕方がないからだ。
2009年にイギリスで公開されたこの映画、1979年のイングランド北西部、マージーサイド州バーケンヘッドの若者たちを描いた物語だ。

エコー&ザ・バニーメンのギグで運命的な出会いを果たした主人公の二人の男の子の、青春模様が描かれているらしい。
当時流行したポストパンクやニューウェーブ、ゴシックロックなどの音楽に乗せ、黎明期であったカジュアルズの姿が活写されているのも大きな見どころとされる。

僕はモッズから始まり、スキンヘッズ、ソウルボーイズ、パンクス、カジュアルズ、そしてマッドチェスターへと流れ込む1960〜80年代のUKカルチャーが大好物。
もちろん映画は公開初日に全速力で観にいく予定で、観賞後に感想をまじえて紹介しようと思っていたのだが、このコラム連載も明日が最終回なので、ちょっと前倒ししたというわけだ。

多分、映画を観終わったあとは強く感化され、今年の秋冬はカジュアルズファッションで過ごすことになると思う。
「いい歳して、カジュアルズはないだろ。あれは25歳未満の若者カルチャーだよ」と笑われるかもしれないけど、いいじゃん、好きなんだから。

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佐藤誠二朗

さとう・せいじろう●児童書出版社を経て宝島社へ入社。雑誌「宝島」「smart」の編集に携わる。2000~2009年は「smart」編集長。2010年に独立し、フリーの編集者、ライターとしてファッション、カルチャーから健康、家庭医学に至るまで幅広いジャンルで編集・執筆活動を行う。初の書き下ろし著書『ストリート・トラッド~メンズファッションは温故知新』はメンズストリートスタイルへのこだわりと愛が溢れる力作で、業界を問わず話題を呼び、ロングセラーに。他『オフィシャル・サブカル・ハンドブック』『日本懐かしスニーカー大全』『ビジネス着こなしの教科書』『ベストドレッサー・スタイルブック』『DROPtokyo 2007-2017』『ボンちゃんがいく☆』など、編集・著作物多数。

ツイッター@satoseijiro

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