「トダ先生がお亡くなりになりました」
　
　二学期の始業式で、校長先生がそう告げた。
　正直なところ、それを聞いた瞬間、「怖い」や「かわいそう」とは思わなかった。やっぱり、そうだったのか……と納得してしまったのだ。
　夏休みに入ってすぐに急死したらしいので、あの時見た人がトダ先生のはずはない。だけどいくら考えても、見間違いではないとはっきり断言できる。
　先生が死んだ理由は知らされずじまいだった。担任クラスの生徒たちですら、まったく説明されていないそうだ。

　ただ、クラスメイトの中に、母親が先生のお葬式に参列したという男子がいた。
　彼が聞いた話では、棺の中のトダ先生は「すごく怖い顔」をしていたそうだ。あんなにキレイだったのに、同じ人とは思えないほど歪んでいた、と。
　そしてまた、彼の母親はこんなことも呟いていたそうだ。
「かわいそうに、葬儀屋さんでも直せなかったのね。ああいう死にかた選んだら……」
　
　あの時、先生が振り向いてくれなくて、ほんとうによかった。

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