2021.8.6
あの家に住んでいた頃のこと
以降、妹とお互いの夢を報告し合うようになった。しかし日数を重ねても、この奇妙な一致は毎晩毎晩続いていく。妹がすっかり怯えだしたので、全てを両親に報告してみた。
最初は二人とも半信半疑だった。妹と口裏を合わせて噓をついていると思ったのだろうか。
しかし夢に出てくる表札の苗字を告げたとたん、顔色が変わったのを覚えている。
父も母も、予想もしないほどの慌てぶりだった。特に母は、もうこんなところに住んでいてはいけないと強く言い張った。
結局、すぐにあの家を引き払うこととなった。
理由は、大人になってから聞いた。
自分たちが越してくる前に、あそこに住んでいた家族がいた。やはり父母と兄と妹という、我々と同じ構成だったそうだ。
しかしある日、その兄妹は死んでしまった。
そうして空き家となったあの家に引っ越してきたのが、自分たち家族だったのだ。
それ以上の詳細は、両親もよく知らないのだという。ただ、二つの事実だけは打ち明けてくれた。
一つ、彼らが死んだ年齢は、自分と妹があの夢を見るようになった歳と同じだったこと。
そしてもう一つ、兄妹は誰かに殺されたのだということ。
8月6日 あの家に住んでいた頃のこと
8月9日 川の上流から流れてくるもの
8月13日 「チヨちゃんが来たんだね」
8月16日 小人が見える女子大生
8月20日 夏休みに流れた噂
8月23日 振り向いてくれない美人教師
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7月4日 設置されては撤去されるブランコの秘密
7月6日 クラスメイトの机に置かれた手紙
7月9日 誰も来ないはずの男子トイレで目にしたもの
7月13日 息子に見えている母の顔
7月15日 内線電話から聞こえてくる声
7月19日 祖母に禁じられた遊び
7月22日 僕にだけ聞こえてくる音
7月27日 この子は大人になる前に死ぬから
7月30日 隙間から入り込もうとするもの