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息子に見えている母の顔

息子に見えている母の顔

 その後、二人での夕飯もなんだか話がはずまない。大人げないのはわかってるけど、さすがに私も楽しい気分じゃないし、息子は息子でどうもこちらと距離を置いている様子。
 そう、そうなのだ。よく考えてみれば「お尻発言」の時の息子はいつも、ふざけて笑っている感じではない。冗談ではなく、私の顔を本気で気持ち悪がっているような……。
 おいおい、だとしたら、それこそ、マジでやばいでしょ。そんなに母親の顔を嫌う幼児ってなによ。ダメだ泣きたくなってきた。
 
 その夜は結局、寝かしつけるまで息子とギクシャクし続けてしまった。
 さすがに気が重くて眠れず、いつもは待たない旦那の帰りを深夜まで待った。どうせ笑い飛ばされるだろうけど、これまでの件をあらいざらいぶちまけ、愚痴をこぼすためだ。
 ただ意外にも、旦那の反応は神妙なものだった。
「ごめん。隠してたけど、これ」
 なんだか青ざめた顔で、自分のスマホの画像を見せてくる。この前、遊園地に家族で行った時の写真だ。表示されていたのは、私と息子のツーショット。それを見た瞬間、思わずスマホを落としそうになった。
 
 私の顔が、のっぺらぼうになっている。
 いや違う、ぎゅうっと絞られたように歪んでいるのだ。
 目も鼻も口も、異様なまでに奥へひっぱられ、中心に集まっている。
 うずまきのような、ねじれた顔面。
 夫は黙ったまま、震える指を画面に置き、次々と画像をスライドさせていく。
 その日写された、どの私も、どの私も、同じ顔をしていた。

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7月の『日めくり怪談』特集一覧
7月2日 夜道を歩く女性の二人組が向かう先
7月4日 設置されては撤去されるブランコの秘密
7月6日 クラスメイトの机に置かれた手紙
7月9日 誰も来ないはずの男子トイレで目にしたもの
7月13日 息子に見えている母の顔
7月15日 内線電話から聞こえてくる声
7月19日 祖母に禁じられた遊び
7月22日 僕にだけ聞こえてくる音
7月27日 この子は大人になる前に死ぬから
7月30日 隙間から入り込もうとするもの
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吉田悠軌

よしだ・ゆうき●1980年東京都出身。怪談、オカルト研究家。怪談サークル「とうもろこしの会」会長。オカルトスポット探訪マガジン『怪処』編集長。怪談現場、怪奇スポットへの探訪をライフワークとし、執筆活動やメディア出演を行う。『怪談現場 東京23区』『怪談現場 東海道中』『一行怪談』『一行怪談漢字ドリル 小学1~4年生』『禁足地巡礼』『日めくり怪談』『一生忘れない怖い話の語り方 すぐ話せる「実話怪談」入門』など著書多数。
Twitterアカウント:@yoshidakaityou

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