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なぜ私は目立つ女子から「排除」されたのか? 第5話 初めてのいじめ

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 また、カリアちゃんが家族で旅行した時は、同じ班の男子にはお土産のキーホルダーを買ってきていたが、私だけには買わず、こちらを見ながら同じ班の男子に耳打ちして「言っちゃダメだよ?」とか微妙に聞こえるようなコソコソ話をしていた。

 隣の席の男子には、「ほら、これゼッテー当たんねーから!」と何度か顔を殴る真似をされ、結局目に当たって泣く羽目になった。これは一見この男子が思いつきでやっただけにも見えるかもしれないが、彼は私の遠い親戚で小学校に入る前から家族同士の付き合いがあり、今までにこういうことはなかったので、やはりカリアちゃんの作った「意地悪して面白がる空気」の影響に思えた。

 授業中は班での作業やグループ発表があると私の発言は無視されたり、カリアちゃんからの「へー、で?」という冷たい相槌をもってあしらわれた。
 そんな感じで班の主導権はカリアちゃんが握っているも同然である。
 最初は他のクラスメイトと同じように、カリアちゃんにも普通に接していたつもりだったが、一時的なものではなく継続して他人から敵意を向けられるのは初めてだったので、私なりに好かれようと、いや、怒らせまいと、下手に出る方法をとった。
 
 調理実習のような授業が行われたある日のこと、当然のごとくカリアちゃんがリーダー的なポジションになり、男子とわいわい調理をはじめ、私の出る幕はなかったので、カリアちゃんに「私も何かやらせて」と申し出た。すると、水を打ったようにさっきまでの盛り上がりが消え、まるで全然見知らぬ他人に不躾なお願いをされたような怪訝な顔で「え?」と言われた。てっきり私は、自分から積極的にリーダーであるカリアちゃんに許可どりをすれば気をよくしてもらえると思っていたので、予想外の返答に黙っていると「じゃあ、野菜でも洗えば?」と言われたので渋々レタスを洗う。
 しかし、私も私で空気を読んで黙っていればいいものを、もっと調理実習っぽいことがしたい気持ちを抑えられず、よせばいいのに「あの、なんか、もっと切るのとか、やりたい」とリクエストする。今なら嫌われている空気にヤバいと思ったらとりあえず食器洗い、鍋の用意、テーブルの片付けという思いつく限りの雑用を終わらせるか、体調が悪いとか言ってその場から消えるところだが、まだ子供なので対処法がわからないし、相手の気持ちより自分の「したい」という気持ちの方が明確でついつい従ってしまう。するとカリアちゃんは当然ながらめんどくさそうに「え? 切るの終わったし、じゃ、ハイ」と言ってかき混ぜていた鍋のおたまを渡して去った。そして意味なく鍋をかき混ぜる私の横で男子とワイワイ盛り上がっている。その時に、私は調理がしたいのではなくみんなの輪に入りたかったのだ、とまでは気づかないが、やりたいと思ったはずの調理の工程に関わったのに惨めな気持ちになることの謎を解き明かせないまましゅんとしていた。

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冬野梅子

漫画家。2019年『マッチングアプリで会った人だろ!』で 「清野とおるエッセイ漫画大賞」期待賞を受賞。その後『普通の人でいいのに!』(モーニング月例賞2020年5月期奨励賞受賞作)が公開されるやいなや、あまりにもリアルな自意識描写がTwitterを中心に話題となり、一大論争を巻き起こした。2022年7月に、派遣社員・菊池あみ子の生き地獄を描いた『まじめな会社員』(講談社)全4巻が完結。
最新刊は『スルーロマンス』(講談社)全5巻。

Twitter @umek3o

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