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なぜ私は目立つ女子から「排除」されたのか? 第5話 初めてのいじめ

それは、まだ別のどこかのことは知らない、遠い北の地での暮らしでした――

『まじめな会社員』で知られる漫画家・冬野梅子が、日照量の少ない半生を振り返り、地方と東京のリアルライフを綴るエッセイ。
前回は、かわいい従姉と自分とで大人の態度が変わることに気づいたエピソードでした。
今回は、冬野さんが直面した初めての「いじめ」体験が明かされます。
(文・イラスト/冬野梅子)

第5話 初めてのいじめ

 小学校2年生の時、初めての「いじめ」を経験する。
「いじめ」といってもクラス全員が敵にまわるような大げさなものではなく、席替えで決まった班の中でのみ標的にされるというものだ。
 班というのは、だいたい男女3人ずつ6人ほどで組まされるグループである。それは任意で作る友達グループとは違い、たまたま席が近くなった者同士で給食の時は机を向かい合わせ食事を共にし、調理実習やグループ学習ではチームになるといった程度の関わりである。とはいえ、毎日の給食や授業で班になるのだから、仲良しの子と同じになるとか、教室を盛り上げる面白い子が一緒だとかの方が圧倒的に楽しい。実際どういうメンツが揃うかで、次の席替えまでの学校生活の充実度はかなり影響されるだろう。その班の中で、生まれて初めて意地悪の標的にされたのだった。
 
 班のメンバーは私含め女子が2人、男子3人の5人グループで、首謀者はカリアちゃん(仮名)だった。残りの男子3人は面白がって意地悪に乗っかる男子が一人、残りの男子はカリアちゃんと親しくする程度で私に対しては特に関わらない、という形で積極的な意地悪はしてこなかった(当然助けることもしないのだが仕方ない)。
 カリアちゃんとはもともと面識があり、近所に住んでいた幼馴染の女の子とカリアちゃんが同じ保育園で仲がよかったため、一回くらいは遊んだことがあった。
 カリアちゃんは明るく活発で男の子と遊ぶことが多く、日焼けした肌がより一層元気で純朴な印象を与えていた。運動神経もよく、スキーを習っていて入賞することもしばしばで、小学校高学年になる頃にはよく新聞に名前が載っていた。毎日三つ編みのおさげで登校する彼女を、私は可愛いと思っていたが、席替えで一緒になるまでは関わることはなかった。

 カリアちゃんからのいじめ、というか意地悪は以下のようなものである。
 カリアちゃんは私の後ろの席だったが、休み時間に席を離れると机を前に押し出して私が座れないようにしていた。当然最初はたまたまかと思い、机を下げてほしいと言うのだが、ちょっとだけ下げてギリギリ座れるかどうかのスペースしか空けてくれなかった。席を外すたび毎回なので、こちらも困惑し「もうちょっと下げて?」と言うとほんのちょっとだけ机をずらし「ホラ、下げたよ?」とか面白がった声色で言われたり、時には寝たふりをされたりした。
 授業中も背中をツンツンされ振り向くと「え? なに?」とそっけなく言われたり、先生に当てられて立った矢先、机を前に出して座れないようにされたりということがよくあった。

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冬野梅子

漫画家。2019年『マッチングアプリで会った人だろ!』で 「清野とおるエッセイ漫画大賞」期待賞を受賞。その後『普通の人でいいのに!』(モーニング月例賞2020年5月期奨励賞受賞作)が公開されるやいなや、あまりにもリアルな自意識描写がTwitterを中心に話題となり、一大論争を巻き起こした。2022年7月に、派遣社員・菊池あみ子の生き地獄を描いた『まじめな会社員』(講談社)全4巻が完結。
講談社のマンガWEBコミックDAYSにて「スルーロマンス」連載中。

Twitter @umek3o

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