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【対談】麻布競馬場と冬野梅子が考える「東京に来なかったほうが幸せだった?」

発売前から増刷し、たちまち3刷の麻布競馬場さんによる初の短編集『この部屋から東京タワーは永遠に見えない』。もうお読みいただけましたか?
帯のフレーズ「東京に来なかったほうが幸せだった?」は、本作を象徴する一言となっています。
東京に来なかったほうが幸せだった――?
“令和の生き地獄コメディ”と評された『まじめな会社員』が絶賛発売中の漫画家冬野梅子さんを迎えて、地方出身のお二人にその「問い」について語り合っていただきました。
9月14日に本屋B&Bにて満員御礼で開催されたトークイベントの様子を、ダイジェスト版でお楽しみください。

(構成/よみタイ編集部 撮影/齊藤晴香)
麻布競馬場さん(左)と、冬野梅子さん(右)。麻布競馬場さんは覆面作家のため、会場には磨りガラスによるついたてが用意されました。
麻布競馬場さん(左)と、冬野梅子さん(右)。麻布競馬場さんは覆面作家のため、会場には磨りガラスによるついたてが用意されました。

冬野梅子(以下、冬野) 私、自分もTwitterでマンガが話題になった人なんですけど、そのくせ、バズった人って信用ならないって勝手に思っていて。本当に大丈夫な人なのかなとか、対談のお話をいただいた後でいっぱいTwitterで調べてました。「麻布競馬場 炎上」とか調べて、意外とそういうのはなくてよかったです。
『この部屋から東京タワーは永遠に見えない』は、『ここは退屈迎えに来て』(山内マリコ・著)とか、よく似てるって言われてますよね。

麻布競馬場(以下、麻布) 言われます。僕も参考にしてるって公言してるぐらいで。

冬野 その感じとか、あと、『なんとなく、クリスタル』(田中康夫・著)とかも。ああいう、固有名詞をいっぱい出しながら東京の若者を書く作品の系譜ですよね。
私から見ると、出てくる人がみんな仕事ができる人だから、悲惨な感じっていうよりかは、はたから見たらすごい人とか人生うまくいってそうな人の、そうじゃない部分っていうのを書いてるんだなって思いました。

麻布 ありがとうございます。僕ももともと冬野さんは存じ上げていて、「普通の人でいいのに!」(編集部注:『まじめな会社員』2巻収録)の、あの有名な画像を見られた方、多いと思うんですけど、あれがTwitterで回ってきたときに、「これはすごいのが出てきたな」と思って。いにしえの2ちゃんの名作コピペみたいな形で、この画像はおそらくこれから10年、20年語り継がれて、人を嫌な気持ちにさせていくんだろうなと思って。
『まじめな会社員』も買ったんですけど、3巻でしんどくなって実は一度読むのやめちゃったんですよ。こないだ4巻が出て、頑張って続き読むかと思ってたら、途中で田舎に帰るシーンでまたつらくなって、2日ぐらい中断して、どうにか読み切ったってぐらいで。

©冬野梅子/講談社
©冬野梅子/講談社

冬野 休み休み読んだほうがつらくないんですね。

麻布 僕の本で描かれてる人たちと『まじめな会社員』に出てくる人たちとは、なんか違う属性なんだなって感覚はあって。冬野さんのほうだと、会社員だけど何かクリエイティブなことをやってる人みたいな、そこが理想像として描かれてる一方で、僕のほうはもうちょっと権威的というか、お金で成功するとか、会社で地位を勝ち取るみたいな、そこで描かれるゴールも違うし、そこを目指して挫折する人たちの人物像とか挫折の仕方も違うし。描かれてるものは違うけど、共通してる部分もあるんだろうなと思ってるんですけど、まだ言語化できてないんですよね。僕らは何が違って、何が同じなのか。

冬野 地方から東京に出てきて、同じような挫折の体験をする人はやっぱり多いのかなとは思いましたね。たぶん、麻布さんの本だと、本当だったら社長になれたみたいな、そういうのも視野に入ってる人が、イメージしていた自分に届かない。私の漫画だと、個性を仕事にするみたいな、クリエイティブなことをするのは東京じゃないとできないっていうのがあって東京にいるんだけど、全く届かないみたいなのが似てるのかなって思いました。

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冬野梅子

漫画家。2019年『マッチングアプリで会った人だろ!』で 「清野とおるエッセイ漫画大賞」期待賞を受賞。その後『普通の人でいいのに!』(モーニング月例賞2020年5月期奨励賞受賞作)が公開されるやいなや、あまりにもリアルな自意識描写がTwitterを中心に話題となり、一大論争を巻き起こした。2022年7月に、派遣社員・菊池あみ子の生き地獄を描いた『まじめな会社員』(講談社)全4巻が完結。

麻布競馬場

あざぶけいばじょう
1991年生まれ。

Twitter@63cities


(イラスト:岡村優太)

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