よみタイ

「真央ちゃん」を「真央さん」と呼ぶようになる日~浅田真央(元フィギュアスケート選手)

広島カープを、プロ野球を、いやいやスポーツ界をこよなく愛するイラストレーター、オギリマサホ。その愛ゆえか、職業柄か、なんだか気になる、なんとも魅かれる、スポーツ選手たちの顔、顔、顔……見渡せばスポーツ界にはイケてる顔面が大豊作。愛すべきその面々、ちょっと斜め下から分析しちゃいます!
浅田真央(あさだ・まお)●90年愛知県生まれ。元・女子シングルフィギュアスケート選手。中京大学体育学部卒業。ジュニアの頃から大きく頭角を現し、その後、選手としての数々の輝かしい実績はもちろん、可憐でピュアな表情と演技でも多くの人々を魅了した。
主な記録は、2010年、バンクーバー五輪銀メダル、2014年ソチオリンピック6位入賞を始め、2008、2010、2014年世界選手権優勝。グランプリファイナル優勝、4回、四大陸選手権優勝、3回。全日本選手権優勝、6回……と、まさに日本の女子フィギュアシングルの歴史を代表する選手。

スケートの天才少女は演技だけでなく、その愛らしさでも飛びぬけていた

人というのは勝手なもので、ある人に第一印象で抱いたイメージを、ずっとその人に押し付けてしまいがちだ。たとえば子役の時に話題となった俳優が、その後どんなに成長して大人の演技を身につけたとしても、見ている側のイメージは子役の時のままだったりする。私の中の安達祐実は今でも「私はかわいいアライ“グ”~マ」と歌って、小林稔侍に「母さん、どうしてこの子は具が大きいのかなぁ」と言われている印象だし、鈴木福、芦田愛菜はいつまで経っても「くん」「ちゃん」付けで呼んでしまいそうな気がしている。

それはスポーツ選手についても同様で、若いうちから頭角を現した選手を、われわれはいつまでも「ちゃん」付けで呼んでしまっていないだろうか。その筆頭に挙げられるのが、フィギュアスケート選手・浅田真央だと思う。普段私がコラムを書く時には人名に敬称を付けないのだが、ここでは特別に「真央ちゃん」と呼ばせてもらいたい。

幼い頃から「天才少女」と呼ばれ、小学6年生の時に特別推薦で出場した全日本選手権で3連続3回転ジャンプを飛んで注目された真央ちゃん。15歳でシニアに転じた2005-2006シーズン、グランプリシリーズ初戦中国杯で2位、第2戦エリック・ポンパール杯で優勝した後、東京で行われたグランプリファイナルで優勝を果たし、「真央ちゃん」の名前は一躍全国区となった。
ピンクの衣装に身を包んだ真央ちゃんが、軽やかにトリプルアクセルを決めて「くるみ割り人形」を舞ったフリーの演技は、まるで妖精のようでもあった。演技後、ドラえもんのぬいぐるみを抱えながら得点発表を待ち、高得点に大喜びする笑顔とともに、日本中の大人たちに「かわいい真央ちゃん」という強烈な印象を残したのである。

ところで先日、朝日新聞デジタルの記事に「浅田真央30歳、夢は古民家生活」(2021年2月23日)というタイトルを見つけて仰天した。私の中の真央ちゃんは、15歳の印象のままで止まっていたからだ。思えばあのグランプリファイナルから15年が経っているのだから、30歳になっているのは当たり前である。本来ならば「真央さん」と呼ばなければならない年齢のはずだ。それなのになぜ、「真央ちゃん」の方がしっくりくるのだろう。
 

おっとりと天真爛漫な笑顔は年を重ねても微塵も変わらないようだ
おっとりと天真爛漫な笑顔は年を重ねても微塵も変わらないようだ
1 2

[1日5分で、明日は変わる]よみタイ公式アカウント

  • よみタイ公式Facebookアカウント
  • よみタイX公式アカウント

新刊紹介

オギリマサホ

1976年東京都出身。イラストレーターとしてシュールな人物画を中心に雑誌や書籍などで活躍。中学1年までは巨人ファンだったのが、中2のときに投手王国・広島カープに魅せられ、広島ファンに転向。そのカープ愛が炸裂するイラストエッセイ『斜め下からカープ論』を刊行。野球のみならず、広くスポーツ界を愛している。
Twitter@ogirim

週間ランキング 今読まれているホットな記事

  1. 中村憲剛対談「思考のパス交換」

    【中村憲剛×尾形貴弘対談 前編】最低の先輩だったパンサー尾形が「頑張ることこそカッコいい」と思えるようになった理由

  2. 稲田俊輔「西の味、東の味。」

    イナダシュンスケが〝世界一好き〟なラーメン店は鹿児島にあった

  3. 中村憲剛対談「思考のパス交換」

    【中村憲剛×尾形貴弘対談 後編】サッカー界の人気を引き上げるには外からの力も必要!

  4. 「わかり合えなさ」を社会言語学で解きほぐす

    第3回 友人からのマウント。挑発に乗らず、どう切り抜ける?

  5. 藤井セイラ「モラハラ・DVから 逃げる技術! 「この結婚失敗かも……?」と思ったら知っておきたいTips50」

    夫から逃げて、幸せです。【逃げる技術!第1回】モラハラ離婚の「ダンドリガイド」つくります!

  6. 新刊 : 青山ゆみこ・細川貂々
    自分を助けるための「対話の仕方」がわかる本

    相談するってむずかしい

  7. 藤井セイラ「モラハラ・DVから 逃げる技術! 「この結婚失敗かも……?」と思ったら知っておきたいTips50」

    殴る蹴るだけがDVじゃない【逃げる技術!第2回】あなたの周りにも隠れ被害者はいませんか?

  8. 群ようこ「ちゃぶ台ぐるぐる」

    母の無水鍋

  9. 伊藤弘了「感想迷子のための映画入門」

    岩井俊二『Love Letter』のヒロインが一人二役である理由 ――あるいは「そっくり」であることの甘美な残酷さ

  10. 藤井セイラ「モラハラ・DVから 逃げる技術! 「この結婚失敗かも……?」と思ったら知っておきたいTips50」

    相談するって難しい【逃げる技術!第3回】合わなかったら「チェンジ!」も大事

  1. なかはら・ももた/菅野久美子「私たちは癒されたい 女風に行ってもいいですか?」

    一見理想の環境でも…三世代同居という「牢獄」からの逃げ道を探して【漫画:なかはら・ももた/原作:菅野久美子「私たちは癒されたい」第6話前編】

  2. なかはら・ももた/菅野久美子「私たちは癒されたい 女風に行ってもいいですか?」

    依存しては捨てられ……男に絶望した私がレズ風俗で見つけた「生きる理由」【漫画:なかはら・ももた/原作:菅野久美子「私たちは癒されたい」第5話】

  3. なかはら・ももた/菅野久美子「私たちは癒されたい 女風に行ってもいいですか?」

    誰にも言えなかった性的願望…それを解放できるのが「女風」だった【漫画:なかはら・ももた/原作:菅野久美子「私たちは癒されたい」第7話前編】

  4. なかはら・ももた/菅野久美子「私たちは癒されたい 女風に行ってもいいですか?」

    私も誰かを癒すことができる…?39歳人妻が女性用風俗から得た「気づき」【漫画:なかはら・ももた/原作:菅野久美子「私たちは癒されたい」第6話後編】

  5. なかはら・ももた/菅野久美子「私たちは癒されたい 女風に行ってもいいですか?」

    女性用風俗に通う女性たちの心のうちを描くコミック新連載【漫画:なかはら・ももた/原作:菅野久美子「私たちは癒されたい」第1話前編】

  6. なかはら・ももた/菅野久美子「私たちは癒されたい 女風に行ってもいいですか?」

    普段は厳しい女性上司を演じているけど……SM専門女性用風俗で見つけた「本当の私」【漫画:なかはら・ももた/原作:菅野久美子「私たちは癒されたい」第4話】

  7. 進藤やす子「イラストレーター、准教授になる」

    愛犬が虹の橋を渡る…離れて暮らすデュアルライフだから考える家族との距離 【イラストレーター、准教授になる 第22回】

  8. なかはら・ももた/菅野久美子「私たちは癒されたい 女風に行ってもいいですか?」

    同世代の男にはもう懲りたと思っていたけど、新人セラピストの彼に出会って…【漫画:なかはら・ももた/原作:菅野久美子「私たちは癒されたい」第1話後編】

  9. なかはら・ももた/菅野久美子「私たちは癒されたい 女風に行ってもいいですか?」

    30代独身女性が女風を利用して気づいた「一番大切にするべきなのは…」【漫画:なかはら・ももた/原作:菅野久美子「私たちは癒されたい」第2話後編】

  10. なかはら・ももた/菅野久美子「私たちは癒されたい 女風に行ってもいいですか?」

    容姿も仕事も平均以下……劣等感に苦しむ私が女風セラピストの〝沼〟にはまるまで【漫画:なかはら・ももた/原作:菅野久美子「私たちは癒されたい」第2話前編】