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夫から逃げて、幸せです。【逃げる技術!第1回】モラハラ離婚の「ダンドリガイド」つくります!

結婚には『結婚情報誌』があるけれど、離婚には、そんな便利なものは……ない! 
ならば我々でつくろう!というこの企画。

警察や児童相談所からも勧められ、DV夫と暮らした家から、子連れで「昼逃げ」を敢行したエッセイストの藤井セイラさんがお送りする、モラハラ離婚のダンドリガイド!

役所ではどの窓口にいくべき? 弁護士さんには何をお願いするの? 子どもの学校や園にはどう伝える? えっ、「養育費」じゃなくて「婚姻費用」なの? 離婚調停ってどれくらいお金と時間がかかるの――

などなど、最初は藤井さんも知らないことだらけだったそう。モラハラ・DVに疲れた状態での情報収集は本当に大変です。だからこそ、同じ境遇の方には、なるべくラクに知識を手に入れて、ご自身の「これから」について前向きに考えてほしい――。そんな思いを込めて、モラハラ・DVから逃げて「安心・安全・HAPPY」に暮らすためのTipsをお届けします!

初回は、DVサバイバーの藤井さんが妄想でつくった「架空の離婚情報誌」をご紹介! モラハラから「逃げる」ことは「負け」や「失敗」ではなく、自分らしさを取り戻す戦いなのです。

母子3人、ワンルームマンションで平和に暮らしています

みなさん、はじめまして。編集者でエッセイストの藤井セイラと申します。
わたしには7歳と4歳の子どもがいて、いま、親子3人で都内のワンルームマンションに暮らしています。24平米です。もう、ギュウギュウです(笑)。
今年、夫のいる元の家を出て、いまの住まいに引っ越しました。原因は夫のDVです。

このことを中学の同窓会で何気なく話したところ「えええ!」「めっちゃ大変やん!」と周りの男子をドン引きさせてしまったのですが(女性の反応はわりと好意的でした)、実際のところ大変だったのは、家を出るまでの15年間のほうなのです。つねに体調は悪く、さまざまな病気にかかり(またそのことで夫から日々バカにされ)、会社も辞めました。

いまは夫から離れたので元気になってきています。
日々、おひさまにあたって雪がとけるように、少しずつ活力が戻ってきているのを実感しています。

子どもたちは、住まいは狭くなったものの以前よりずっとのびのびしていて、自由で楽しい生活を送っています。学校や園の先生方にも昨年度はご心配をおかけすることが多かったのですが、引っ越し後の面談では「○○ちゃん、調子戻ってきましたね!」「絶好調ですね」とおっしゃって下さいました。

子どもは小学校と幼稚園に通っています。料理も買い物も洗濯も掃除も、子どもの通院も、習い事の送り迎えも、宿題やピアノの練習を見るのも、病気になったときの看病も、わたしひとりです。実家は遠方で頼れません。大変といえば大変ですが、夫と暮らしていたときに比べたら精神的にはたいへん楽な暮らしになりました。

そんなわけでかけだしのシングルマザーなのですが、夫の同意がないためいまだ婚姻関係にあり、離婚調停中というステータスです。この状態を役所では「みなしひとり親」と呼ぶことがあります。

結婚には『ゼクシィ』がある。じゃあ離婚には?

ちょうど1年ほど前、夫についてあれっ?と思うことがあったのです。そこからわたしの生活はどんどん崩れていきました。夫が子どもを叩いたので役所に相談にいくと、「重度のDVですよ」といわれ、どうしたらいいのかと悩みました。いろいろな人や機関に相談し、警察や弁護士や児童相談所などからも強く別居を勧められて、半年以上の試行錯誤ののちにやっと踏み出すことができました。

そのときひとつずつ知っていったTips=幸せになるためのコツや技術=を、この連載で書いていきたいと思っています。このような貴重な場をいただけて、本当に感謝しています。

わたしは、離婚における『逆ゼクシィ』のようなものをつくりたいと思っています。
みなさんは結婚情報誌をお手にとったことはありますか? 重さが約3キロ、分厚くて、その重量でギネスブックにも載ったこともある、あれです。

結婚情報誌には、結婚に必要な「ダンドリ」が詰まっています。実家や親族への挨拶や手紙、式場やドレス、指輪の相場と選び方、式までのスケジュールが見渡せるカレンダー、ペーパーアイテムや手作りキット、前撮り、メモリアルアルバム、両親へのサプライズ、新居探しに家具選び、それから引っ越し、引き出物、内祝い、さらにはおめでた婚の場合のガイドといった、ありとあらゆる情報がぎっしりと。
 
ちなみに、姉妹誌『アネーロ』(いまのゼクシィプレミア)では世にさきがけて2012年から同性婚の結婚式も取り上げていました。まさに総合結婚情報誌といえるでしょう。
わたしも結婚する前にはコンビニで1冊、買い求めました。帰り道、重さでビニール袋が指にくい込んだのを憶えています。

では、離婚するときには何を参考にしたらいいのでしょう?

カレンダーでスケジュールを知り、ダンドリガイドで進め方とコツを学ぶ

そっか、こんなにやらなきゃいけないことがあるんだ! という驚きが、結婚情報誌を読んだときの感想でした。あのとき、26歳か27歳だったと思います。
めまいのするような圧倒的な情報量を前にして抱く感想は、人によってさまざまでしょう。
 
ワクワクする! とか、
このたくさんのタスクの先に新生活が待っているのね。 とか、
一生に一度の結婚式なんだもの、ちょっとくらい贅沢したっていいよね? とか。

そんなふうに思わせる提案やアイデアの数々が、結婚情報誌には載っています(もちろん最近は、そんなふうに「結婚」や「結婚式」に夢を見る人も減っているのかもしれませんし、式を「気の重いタスク」ととらえて仕事のようにこなす人もいるでしょうが)。

日本初「離婚ダンドリ情報誌」創刊!?

では、
「この結婚は失敗だったかもしれない」
「パートナーが重度のモラハラ(精神的虐待)・DV加害者だった」
と気がついてしまったときに頼れる、結婚情報誌のようにオールインワンで情報がまとまっているメディアってあるでしょうか? いうならば、「離婚ダンドリ情報誌」です。

離婚ってどうするの? 結婚ってなんなの? モラハラ・DVって? 養育費って? 調停って? 弁護士って? そんな疑問が黒雲のように心の中にたちこめたとき、何を見たらよいのか、わたしには最初、わかりませんでした。

だからこそ、そういうものをつくりたいのです。

さて、わたしのイメージしている「離婚ダンドリ情報誌」の企画案を勝手にいろいろと立ててみました。
雑誌のショルダー(ショルダーキャッチコピー:表紙タイトルロゴの左上などに書いてある、雑誌の自己紹介のような短い文のことです)は「安心・安全・HAPPYな離婚がしたい!」もしくは「私たちは、何歳からでも、自由になれる。」はどうだろうか、と思っています。パワーポイントで架空の表紙もつくってみました。表紙のお写真は、フリー素材のぱくたそ様からお借りいたしました。

企画・構成・レイアウト/藤井セイラ
企画・構成・レイアウト/藤井セイラ
《巻頭大特集》先輩達の体験談Special!!
・わたしたち、Re:シングルです! 先輩離婚経験者のクチコミ100連発
・ダンドリ丸わかり!「離婚への道」カウントダウンカレンダー
・即離婚から3年かかった修羅場まで、大人女子のリコカツ記録

シリーズ:家族親族へのカミングアウト& more
・実家にはどう切り出す? ママ/パパ/祖父母 相手別攻略法
・これからどうなる? 義実家とのおつきあい 断絶/継続/自然消滅?
・お義母さん・お義父さんにどう伝える? LINE/電話/対面/手紙…etc.
・ありえない!「結納金返せ」「お前が説明しに来い」相手家族の暴言録
・やっぱり孫には会わせるべき? 義父母との対面交流のリアル

第1特集★ 第二の人生リスタート!大人の別居AtoZ
・弁護士さんに聞きました! やっぱりわたしが出てかなきゃダメ?
・専業主婦&子ども2人、契約結べる賃貸物件はどこにある?
・〈読者座談会〉転校する? しない? できれば園&学校は変えたくない!
・ Let’s 昼逃げ! 夫にバレずに引っ越す10のコツ
・先輩Re:シングル達の1LDKでもこんなに広々!間取りの工夫大紹介

第2特集★ 児相はある日、突然に
・DVファミリーに児童相談所からの電話! 出頭/立入/保護を解説
・児相にはこんな専門職が常駐! 育児のアドバイスがもらえることも?
・虐待は叩く・蹴るだけじゃない やっちゃってない!? 教育虐待/面前DV
・臨床心理士が語る「離婚/別居のときの子どものメンタルケア」
・小児精神科医に聞きました〈年齢別〉OK?NG?子どもへの説明&接し方
 
・ひとりで背負いこまないで! いますぐ行くべき役所の窓口TOP3
・離婚/別居の基礎用語 意外と知らない「婚費」「受任通知」「調停」「訴訟」…
・調停中の編集部員Bがレポート! 初めての法テラス&ハロワ徹底使いこなし術
・役所にいくなら忘れずに!「離婚届不受理申出」「みなしひとり親申請」

・いざ調停!家庭裁判所通いのメイク・バッグ・ヘア&ネイルの正解はコレ!
・子どもにガマンはさせたくない!これが賢い令和のキッズファッション&習い事
・離婚だけがゴールじゃない! 復縁・別居婚 and more… わたしたちの出した答え

大好評シリーズ!! 離婚と別居のお金の話
<保存版> お金&医療 シングルになると使える制度チェック表
・ちょっと待って! その慰謝料請求、アリorナシ? 弁護士がジャッジ
・いまさら聞けないお金の話 離婚&再スタートに準備したいのは最低●●万
<別冊付録>『どう違う? 誰が決める? 取り立てできる? 婚姻費用と養育費』

<挟み込み付録> 持ち歩いてご利益UP! 東京最強「縁切り榎」ピンナップ

「逃げる」ことは「負け」ではない。自分を取り戻すための第一歩

離婚しよう、と思ったとき、わたしの頭の中は不安と疑問でいっぱいでした。どこから手をつけていいのかさっぱりわからないのです。「結婚したときの話」「結婚式の話」「ふたりのなれそめ」などは聞いたことがあっても「離婚したときの話」を順を追って聞いたことはありませんでした。

いまのわたしなら、上に書いた、架空の「離婚ダンドリ情報誌」の目次の編集記事をすべて書くことができます。

(まじめな話として、役所や児童センターにこんなフリーペーパーが置いてあったらいいのに、と思っています。官公庁でご興味を持っていただけた方がいらっしゃいましたら、ぜひご連絡ください。
わたしは子どもが0歳だった頃、児童館の女性用トイレで「こんなDVにあっていませんか?」というカードを見て、すべてのチェック項目に当てはまることに気づき、ショックを受けました。

しかし、「自分はそんなかわいそうな人間ではない」と打ち消してしまったのです。そのカードを見て、うしろめたく、つらい気持ちになりました。ですからそのとき、書かれていた窓口に電話をかけることはありませんでした。そして、それから7年後にやっと公的機関につながることができたのです。その間にDVはどんどんエスカレートしていきました。

 「DVから逃げる」ことについて、みじめさ、負け、不幸、弱者といったイメージをとりはらうためには、それは「新しい一歩」であり「自分を取り戻す」ことなのだというポジティブな表現、さらっと話せる雰囲気づくりが必要だと思っています)。

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藤井セイラ

編集者、エッセイスト。2児の母。東京大学文学部卒業後、広告・出版を経てフリーに。子育てに関連する勉強が好きで、気がつけば、保育士、学芸員、幼保英検1級、絵本専門士、小学校英語指導者資格、日本語教師、ファイナンシャルプランナー2級など、さまざまな資格を取得。趣味はマンガとボードゲーム。苦手なものはお寿司。最近、映画館で観たのはプリキュア。

X(ツイッター) @cobta https://twitter.com/cobta

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