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「真央ちゃん」を「真央さん」と呼ぶようになる日~浅田真央(元フィギュアスケート選手)

思うに、そのおっとりとした表情や天真爛漫な笑顔が、15歳の時とほとんど変わらないからではないだろうか。

もちろんその15年間にはさまざまなことがあった。
バンクーバー五輪での銀メダル、ソチ五輪・ショートプログラムで16位になってからのフリーでの巻き返し、その後の休養宣言、そして2017年の引退……。その陰には、普通の人には想像もつかないような努力や葛藤があったことだろう。しかしわれわれがメディアで目にする真央ちゃんの笑顔は、15歳の時のそれと何一つ変わっていないように見えた。そのため、強烈な第一印象が、いまだにわれわれの中に保たれたままなのである。
 

突然「真央さん」と呼びたくなった浅田真央の姿とは……

引退後、真央ちゃんは日本各地を回って、これまでのプログラムを演じる「サンクスツアー」を行うほか、活動の幅をさまざまに広げている。
料理雑誌の連載で、自ら作ったグラタンを手に微笑むエプロン姿の真央ちゃん。ファッション雑誌の特集で、妖艶な衣装に身を包む大人メイクの真央ちゃん。30歳ならば何の不思議もない。しかし受け取るこちらの情報処理能力の問題で、どうにも違和感がぬぐえない。「15歳の真央ちゃん」のイメージのままで眺めてしまっているからである。

この先、私はずっと「真央ちゃん」と呼び続けるのだろうか……と思っていた矢先、思わず「真央さん」と呼びたくなるような映像を目にした。それは鼻炎薬のCMで、和服姿で花を活ける姿だったのである。
これまでにも真央ちゃんは何度か着物雑誌に登場しており、本人のインスタグラムにも画像が投稿されている。どの和服姿もしっとり落ち着いており、本当によく似合っているのだ。この姿は「15歳の真央ちゃん」からは想像できなかった姿でもあり、大人の雰囲気を漂わせている。

今後の彼女の活躍を願うとともに、「人を第一印象で決めつけてはいけない」ということを、和服姿の真央さんの姿を思い浮かべながら肝に銘じたいと思う。

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オギリマサホ

1976年東京都出身。イラストレーターとしてシュールな人物画を中心に雑誌や書籍などで活躍。中学1年までは巨人ファンだったのが、中2のときに投手王国・広島カープに魅せられ、広島ファンに転向。そのカープ愛が炸裂するイラストエッセイ『斜め下からカープ論』を刊行。野球のみならず、広くスポーツ界を愛している。
Twitter@ogirim

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