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メイクを武器に100度目の表彰台を目指してほしい~高梨沙羅(スキージャンプ)

それから数年は、高梨の「純朴さ」という印象は変わらなかったように思う。
その間にも高梨は2012―13年シーズンのFISワールドカップで、16歳4か月の史上最年少の個人総合優勝、14年のソチ五輪出場などの実績を残していった。

2016-17年シーズン、ワールドカップで男女最多優勝記録となる53勝目をあげたときのことだ。表彰台に上がる高梨をテレビで見て「あれ、随分印象が変わったな」と思った。

これまで天然だった眉毛は整えられ、アイメイクもバッチリ決まっていたからだ。
「沙羅ちゃんも大人になって、お化粧するようになったんだな」と感慨深かった。実際高梨自身も、20歳を過ぎてから身だしなみとして化粧をするようになったと語っている。

一方、この時期に放映されていたCMで「私、高梨沙羅はセブンイレブンで育ちました」と語ったり、キムチを頬張って「こくうまっ」と驚いたりする高梨は中学生の時と同じ顔で、「周囲が求めている高梨沙羅像」と「本人がこうありたい高梨沙羅像」との間のギャップを感じたものである。

その後、高梨の化粧テクニックはどんどん上達していった。
反面、その化粧に対する批判の声もネット上で見受けられるようになった。

大体が「以前の素朴な感じが良かった」とか「スポーツ選手なのに化粧にうつつを抜かして」とかいった内容だ。「整形なのでは」と疑う人もいる。
普通の20歳頃の女子であれば、「化粧をしていない中学時代の顔」と比較されることはまずない。なまじ中学時代から顔が知られているスポーツ選手は、その点大変だ。

そのメイクテクを学びたいくらいだ。ジャンプはとても無理だが。
そのメイクテクを学びたいくらいだ。ジャンプはとても無理だが。

メイクは女にとって、自信をもつための武器なのだから

化粧批判をする人は「以前の印象を引きずる派」と「スポーツ選手はスポーツ以外のことをするな派」とに大別されると思うが、どちらも大きなお世話である。
どういう顔で表に出るかは本人の自由だ。
私は、整形であっても別に構わないと思う。化粧や整形は、本人が自信を持つための武器だと思うからだ。恐らく高梨にとっても、化粧はヘルメットやゴーグルと同じ、防具の一つなのではないだろうか。

今シーズン、高梨はワールドカップでの通算100度目の表彰台を目指しながら足踏みの状態が続いている。
自分が納得のいく顔で勝利する瞬間を、ぜひ見てみたい。

そしていつか、メイク本を出して欲しい。
私は絶対買う。

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新刊紹介

オギリマサホ

1976年東京都出身。イラストレーターとしてシュールな人物画を中心に雑誌や書籍などで活躍。中学1年までは巨人ファンだったのが、中2のときに投手王国・広島カープに魅せられ、広島ファンに転向。そのカープ愛が炸裂するイラストエッセイ『斜め下からカープ論』を刊行。野球のみならず、広くスポーツ界を愛している。
Twitter@ogirim

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