2026.8.9
伊藤泰藏 「そこにある素材と向き合いシンプルに」が、ものつくりの原点【実録・メンズノンノモデル 第9回 後編】
今回のゲストは、1994年から3年にわたって、当時のメンズノンノでは異色とも言えるワイルドな風貌で誌面を彩った伊藤泰藏さん。モデル時代のエピソードを語った前編に続き、後編では、メンズノンノモデル卒業後の知られざる経歴を辿りながら、空間デザインや廃材を使ってのリノベーションなどを手がける現在の仕事についてじっくり語ってもらった。
取材・文/徳原 海 撮影/岩田 笙
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ファッションだけではなく、建物や空間を作ることもスタイリング
メンズノンノモデルを卒業と同時に故郷に戻った伊藤泰藏は、すぐに、かねてより興味を抱いていた建築の分野で働き始める。数年間さまざまな現場で研鑽を重ねた後、弟の亮陽とともに「墨壺屋デザインワークス」を立ち上げた。
伊藤泰藏(以下、伊藤) 山梨に帰ってきて、いろいろと今と似たような仕事をしつつ、きちんと屋号をつけて工務店業務を始めたのが20数年前でしょうか。弟と創業して、今も2人だけでやっています。仕事は店舗や住宅の設計とリフォーム、什器のデザインなどが多いですね。(仕事の進め方としては)まずはお客さんがどうしたいかという思いをしっかり聞くところから始めて、物件と予算に合わせて、解体から仕上げまで自分たちだけでやり通します。中には、いわゆる大手の工務店にはとてもじゃないけど高くて頼めない、というような大変な物件も多いですよ(笑)。その点、僕らは2人だけでやれることをやる、というスタンスなので、頼みやすいのかもしれません。
たった2人で、限られた資材や役目を終えた廃材を駆使しながらほぼDIYのようなスタイルで作り上げるのが墨壺屋デザインワークスのポリシー。そのために伊藤兄弟が何より大事にしているのが、自分たちのフットワークを使っての素材集めだ。
伊藤 「あそこの物件が解体しますよ」という情報が入れば、すぐに飛んでいって廃材を安く売ってもらい、自分たちで運んで、磨いてっていう。錆びた折板なんかも、長野の資材置き場まで出向いて直接交渉してもらってきたり。とにかく現地に直接買い付けにいくほうが安いので、資材集めには常に自分たちの足を使います。今すぐ使わなくても、持っておけばきっと何かのときに役立つはず、というような考え方で資材を集めたり組み合わせたりすることは、僕にとって古着のコーディネートと近いものがあるのかもしれません。例えば、加工されたダメージジーンズよりもリアルに着古されたジーンズのほうに魅力を感じるのと同じように、エイジング加工された資材もいいですけどやっぱり元々の(自然にエイジングした)素材感には敵わないわけで。


その点で、小学6年で目覚めたというファッション、なかでも「お金がなかったから」という理由から、頭を使って古着を軸にしたスタイリングを日々研究していた経験が、今の仕事に繋がっていると彼自身も実感している。
伊藤 建物や空間を作ることもスタイリング。僕はそう思っていますし、限られた予算をやりくりしながら工夫して作っていくことは、雑誌の企画をこういうテーマで作ろうとかっていう編集作業にも通じますよね。それに、メンズノンノでモデルをやらせてもらっていた中で、業界の第一線で活躍されているクリエイターの方々の感覚を知らず知らずのうちに肌感覚で学べたことも、間違いなく活きています。だから、大工はとてもクリエイティブな仕事だと自負しているんですよ。もちろん失敗もありますし(笑)、「ああ、もうちょっとこうしておけばよかったな」ってことも少なくありません。そういうときは解体し、もう一度やり直したりもします。
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