よみタイ

肉好きの聖地、松阪にて和牛の頂点を存分に味わう

伝統を守りながら進化する【牛銀本店

松阪ですき焼きといえば、金銀が外せないのだ。

金とは和田金。
そして銀が牛銀である。

和田金が自社牧場の松阪牛のみを扱うのに対して、牛銀では数人の契約生産者から厳選した松阪牛を仕入れている。

松阪の生産者に話を聞くと、牛銀に扱ってもらえるというのがステータスであり、自身への評価だと感じているとのこと。

だからこそ牛銀の松阪牛の品質はすこぶる高いが、中でも特産松阪牛は別格。

兵庫県産の純但馬牛を素牛として、松阪で900日以上肥育したものが特産松阪牛と呼ばれるもの。

肥育が難しく、繊細で大きく育ちにくい但馬牛は、生産者の立場からはビジネス的には割には合わないものだ。
結果として、松阪牛の中でも特産松阪牛の割合は2%ほどしかない。

だからこそ、特産松阪牛の仕入れがあった時には、絶対にこちらをオススメしたい。

厚めにカットされたロースを仲居さんが丁寧に焼いてくれる。
砂糖の甘みと醤油の塩味、そして松阪牛の濃厚な旨味を卵が見事にまとめてくれている。

ほろほろとほどけるように口の中から消えていくロースが愛おしくて仕方ない。

厚めにカットされた牛銀の特産松阪牛ロース
厚めにカットされた牛銀の特産松阪牛ロース

牛銀にはオリジナルメニューの汐すきが存在する。

牛肉を鍋に敷いてから、胡椒と白醤油、昆布出汁で味付けする。
肉そのもののポテンシャルがよりくっきりとして、すき焼きとは全く違った味わい。
さっぱりとしていて、何枚でも食べたくなってしまう。

効率性を追い求めるのではなく、非効率と感じても伝統を守ることで維持されてきた特産松阪牛を、より美味しく食べる追求を続ける姿に感服する。

牛銀ではオリジナルメニューの汐すきも必食
牛銀ではオリジナルメニューの汐すきも必食
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小池克臣

こいけ・かつおみ●1976年、神奈川県横浜の魚屋の長男として生まれたが、家業を継がずに肉を焼く日々。焼肉を中心にステーキやすき焼きといった牛肉料理全般を愛し、さらには和牛そのものの生産過程、加工、熟成まで踏み込んだ研究を続ける肉の求道者。著書に『No Meat,No Life.を実践する男が語る和牛の至福 肉バカ。』がある。
公式ブログ「No Meat, No Life.」→ http://d.hatena.ne.jp/BMS12/

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