2022.7.23
【中村憲剛×尾形貴弘対談 後編】サッカー界の人気を引き上げるには外からの力も必要!
サッカーに関心のない若い人たちの多いことに衝撃を受けた
中村
尾形さんの変化には、(奥さんの)あいさんの力も大きいんでしょうね。
尾形
あいちゃんのブログ、すごく読まれているのよ。あの人、俺より影響力あるから。
中村
川崎フロンターレのFRO(フロンターレ・リレーションズ・オーガナイザー)をやっているので、尾形家を試合にぜひ招待したいです。スタジアムに来てもらって、サッカー観戦において何が良くて何がダメか、ママ目線で評価してもらうことも大事なのではと思うんです。子どもも含めて家族で試合やイベントを楽しんでもらうためには、ママという立場からのシビアな目線が必要なんですよ。サッカーのスタジアムはそのイメージだけで敬遠する人もいますから。
尾形
招待してくれたら、あいちゃん喜ぶよ。確かにサッカー自体にあまり興味ない人だと、スタジアムには行きづらいってあるのかもな。
中村
はい。そこに風穴を開ける意味としても、スタジアムに来ていただいて、奥さまに率直な感想をブログで発信してもらうだけで、フロンターレやJリーグに興味を持ってもらえるかもしれませんから。
尾形
サッカー自体の人気は、今どうなの?
中村
4月にJFA(日本サッカー協会)の活動の一環でもあるのですが、母校の中央大学でサッカー低関心層の人たちにどう関心を持ってもらうアプローチをするかなど、サッカー界の課題解決に取り組むワークショップに参加して、学生たちとディスカッションしに行ったんです。学生たちと話してみると、サッカーにまるっきり関心のない若い人たちの多いこと! もうね、衝撃を受けました。世の中、サッカーを知らない人のほうが大多数なんだな、自分の世界は狭いんだなと思い知らされました。サッカーに興味のない方たちからすれば、そんなの当然だろと言われるかもしれませんが(苦笑)。
尾形
今は地上波で日本代表の試合を中継しないこともあるもんな。サッカーファンからしたら、やっぱりショックだよ。
中村
僕らの世代なら「ドーハの悲劇」とか「ジョホールバルの歓喜」とかみんなテレビの前で固唾をのんで見ていたわけじゃないですか。行けるか行けないか、あのスリリングな展開は多くの視聴者を魅了したと思います。でも今は、あれほど焦がれた大会に7大会連続出場と、当たり前のようにワールドカップに出られるようになって、Jリーグも30年やってきて。みなさんの生活のなかにサッカーが入ってきて、文化が醸成されて来ていることはすごく良いことだと思うんですけど、同時に慣れがきているところもあると思うんですよ。当時ほどの熱量がなかなか出にくい状況なのかなと。
尾形
海外はどうなの? 昔はワールドカップに出られるか出られないかで熱くなって、出ることが当たり前になった今なら、そこで根付くってこともあると思うけど。
中村
特に欧州はサッカー自体がもう根付いて、文化になっているじゃないですか。おじいちゃん、おばあちゃん、子どもたちまでサッカーの話をするし、カフェとかバーでもサッカーで盛り上がって。何世代にもわたってサッカー文化が脈々と受け継がれているじゃないですか。それに比べると日本はまだまだそこまで文化として根付くところまではいってないし、サッカー以外にもいろんな娯楽がある。さらにいまはインターネットやSNS社会になって、それぞれの人の趣味や興味も好きなものに一点集中じゃないですか。
尾形
なるほど。やっぱり難しい時代に入ってんだな。
中村
はい。難しい時代です。だからこそ本気で思うんです。尾形さんのような熱量のある方はサッカー界を盛り上げるのに必要なんじゃないかって。
尾形
俺のなかでもサッカー界に何か貢献したいっていうのはやっぱりあるんだよ。最近、Amazon Primeで「尾形スタジアム2022-23」っていうサッカー番組も始まったし、もっといろんな人にサッカーのことを知ってもらいたいと思ってる。
中村
あの番組、面白いです(笑)。お笑い芸人の方たちからサッカー界にアプローチしてくれるのはものすごくありがたい。みなさんがサッカーの話をしてくれるだけで反応が全然、違ってくるので。
尾形
確かにお笑いを見に来てくれる人は、サッカーが好きとか嫌いとか、そのレベルにまで行ってない人が多いような気もするな。
中村
はい。あいさんのブログの話じゃないですけど、いろんな方面からアプローチをすることで、サッカーに関心のない人たちを振り向かせることにもなりますから。サッカー界だけで人気を引き上げることはもう簡単ではなくなってきているので、そこを突き破るにはやっぱり外からの力が必要だと、僕はそう思ってます。
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