2026.8.9
伊藤泰藏 「そこにある素材と向き合いシンプルに」が、ものつくりの原点【実録・メンズノンノモデル 第9回 後編】
記事が続きます
わざとらしさがない、わびさびの効いた“粋な”仕事にこだわっていきたい
技術は、弟とともにすべて現場で学んだ。そして自分たちの感性とローカリズムを大事に、インダストリアル、モダン、古民家のエッセンスなどを盛り込みながら独自のスタイルを地道に構築してきた。その施工クオリティの高さが評判を呼び、これまで地元の山梨県内や富士五湖エリアを中心に、数々のデザインホテルやカフェなどを手がけている。都心から離れたこれらのスポットが、ファッションや広告の撮影によく起用されているというのも、そのデザイン性とクオリティの高さを物語っている。
伊藤 やはり15〜16歳の頃から親父の仕事を手伝っていたことが大きかったです。そして弟のおかげでもありますね。ものづくりが好きで、やさしくて実直な男。それでいて段取りをスパスパ組んでくれる。逆に僕はそこが全然ダメなので…いい意味でバランスが取れているのかもしれません。それにこんな見た目ですから、子供たちからは「パパは大工じゃないんでしょ?」って言われます。だから「そうだよ、大工じゃなくてアーティストなんだよ」と答えています(笑)。

足で集めた資材や廃材を使って、建物を作りなおし、その空間に新しい息吹を注ぎ込む作業について、「自分としては美術に近い感覚」と語る伊藤。それならばと、聞いた。「お客さんが心地いいと感じられる空間をデザインする上で、必ず心がけていることは?」
伊藤 うーん、ひと言では難しい。日が暮れてハイボールを飲みながらじゃないとその話はできないかも(笑)。ひとつ言えるとしたら、元々ある建物の素材をどう活かすか、ということ。僕らの仕事って、ある意味、スタイリストや料理人とも近い。シンプルに、限られた材料で何が作れるか。「好みは和風ですか、それともイタリアンですか?」という感じで。だから「一貫してこうあるべき」みたいな考えはあえて持たないようにしています。ただ粘り強く、諦めずにその素材を使う。そして奇をてらった面白さは目指さない。わざとらしさや過剰さがなくて、ある意味で、わびさびの効いた感じと言いましょうか。その微妙なさじ加減や塩梅にはこだわっていたいです。
山梨にしっかりと根を張りながら、メンズノンノモデル時代に育んだクリエイティビティを地元に還元しているところも気骨のある伊藤らしいが、青春時代を過ごした東京のことを、最近はどう見ているのだろうか。
伊藤 東京にもたまに行きますよ。仕事でというより、自分なりに刺激を求めて。いいお店がたくさんあるので、そのあたりを周ったり、街並みを眺めながら常に何かヒントがないか探しています。でも、やっぱり東京に行くと鼻毛が伸びますね(笑)。
さて、伊藤には故郷の山中湖村で近いうちに実現したいささやかな目標があるという。それは、かつて父が営んでいたような貸別荘を建てること。
伊藤 実はこの作業場を、貸別荘に作り替えたいんですよ。ここを拠点に、別荘を経営しながら、何か面白いプロダクトを作って販売したり。実現したら、いつか撮影スタジオとして使ってくださいね!

PROFILE
1975年北海道生まれ、山梨県育ち。1994年10月号で第9回メンズノンノモデルに選出され、1997年まで専属モデルとして誌面に登場。ファッションページから企業タイアップ、アウトドア企画などの取材ページまで幅広い分野で活躍した。卒業後、地元である山梨県山中湖村に戻り、弟の亮陽とともに起業。「墨壺屋デザインワークス」を立ち上げ、店舗・別荘・住宅の空間デザインや、リノベーション、什器制作などを継続的に手がけている。特殊モルタル塗装やエイジング加工などを得意としており、また古民家鑑定士の資格も持つ。これまで施工した物件に、「yl&Co. Hotel in Mt.Fuji」、「kagelow Mt.Fuji Hostel Kawaguchiko」など。
記事が続きます
次回、連載第10回は9/4(金)公開予定です
![[1日5分で、明日は変わる]よみタイ公式アカウント](https://yomitai.jp/wp-content/themes/yomitai/common/images/content-social-title.png?v2)
















