2026.11.1
登山道自体がアトラクション! しかし「黒部に怪我なし」とは? 断崖絶壁に刻まれた黒部峡谷「水平歩道」【山の名&珍プレイス 第12回 前編】
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トラブルがあっても逃げ場はなし。だが、漆黒のトンネルや滝の風景もおもしろい
水平歩道では支谷の志合谷を通過する際に長いトンネルを通る。冷たい空気に包まれながら、足元に水が溜まった真っ暗なトンネルを進んでいくのは、人によっては相当に怖いだろう。ランプ類を忘れてしまうと、進退窮まる。トンネル内ではいくら歩いても外界の光で明るくならず、不安になる。だが、スリルがあって楽しい。北アルプスの岩盤に抱かれているような感覚も不思議におもしろい。



水平歩道にはエスケープルート(緊急時に短時間で下山できる道)がなく、欅平から進んだ場合、いったん足を踏み入れたら10.5km先にある阿曽原温泉小屋まで歩き切るか、もしものときは引き返すしかない。休憩する場所が少ないのもつらいところだ。


秘湯で知られる「阿曽原温泉小屋」。その裏にも長大なトンネルが……
一般的な脚力の登山者であれば、欅平から阿曽原温泉小屋までは6~7時間。その大半は緊張感が途切れない断崖絶壁の道だ。しかし、小屋が見えてくれば、少しは気楽になれる。水平歩道から150mほど下がった阿曽原には温泉があり、ゆったりと心身の疲れをとることができるだろう。



阿曽原温泉のお湯は、小屋裏に位置する岩盤に掘られた通称「高熱隧道」から引かれたものだ。じつは、水平歩道を開削して物資を運べるようになった後、水平歩道と並行するように岩盤内に長大な隧道(トンネル)も掘られており、その当時のエピソードは実話をもとにした吉村昭の小説『高熱隧道』の原案にもなっている。1940年に開通すると、同時期に稼働し始めた黒部第三ダム(黒部ダムのひとつ下流にあり、正式名称は「仙人谷ダム」)へトロッコ電車で資材や人員を運ぶことが可能になり、黒部川の水力発電は飛躍的にパワーアップしていく。
しかし、隧道工事の際、岩盤の熱は165℃に達してダイナマイトは暴発、しかも人智を超える雪崩も発生し、工事中の死亡者は300人を数え……。このあたりの話は「後編」でお伝えしたい。
(11月8日公開の<後編>に続く)

次回、連載第12回<後編>は11/8(日)9:00公開予定です
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