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登山道自体がアトラクション! しかし「黒部に怪我なし」とは? 断崖絶壁に刻まれた黒部峡谷「水平歩道」【山の名&珍プレイス 第12回 前編】

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トラブルがあっても逃げ場はなし。だが、漆黒のトンネルや滝の風景もおもしろい

水平歩道では支谷の志合谷しあいだにを通過する際に長いトンネルを通る。冷たい空気に包まれながら、足元に水が溜まった真っ暗なトンネルを進んでいくのは、人によっては相当に怖いだろう。ランプ類を忘れてしまうと、進退窮きわまる。トンネル内ではいくら歩いても外界の光で明るくならず、不安になる。だが、スリルがあって楽しい。北アルプスの岩盤に抱かれているような感覚も不思議におもしろい。

10月中旬にも死亡事故が起きたばかりの志合谷。急峻な雪渓の裏にトンネルが掘られている
10月中旬にも死亡事故が起きたばかりの志合谷。急峻な雪渓の裏にトンネルが掘られている
志合谷のトンネルは長さ150m。途中で屈折していることもあり、出入り口付近以外は漆黒の闇で、ヘッドランプがなければ先へ進めない
志合谷のトンネルは長さ150m。途中で屈折していることもあり、出入り口付近以外は漆黒の闇で、ヘッドランプがなければ先へ進めない
手掘りのために内部は岩でゴツゴツしており、低い場所もあって頭をぶつけやすい
手掘りのために内部は岩でゴツゴツしており、低い場所もあって頭をぶつけやすい

水平歩道にはエスケープルート(緊急時に短時間で下山できる道)がなく、欅平から進んだ場合、いったん足を踏み入れたら10.5km先にある阿曽原温泉小屋まで歩き切るか、もしものときは引き返すしかない。休憩する場所が少ないのもつらいところだ。

水平歩道では数少ない休憩スポットが、落差40mの「折尾(おりお)ノ大滝」。下部はいくらか開けているが、それでも落石には気を付けたい
水平歩道では数少ない休憩スポットが、落差40mの「折尾(おりお)ノ大滝」。下部はいくらか開けているが、それでも落石には気を付けたい
折尾谷を通過する際には、コンクリートで覆われた短いトンネルを使う
折尾谷を通過する際には、コンクリートで覆われた短いトンネルを使う

秘湯で知られる「阿曽原温泉小屋」。その裏にも長大なトンネルが……

一般的な脚力の登山者であれば、欅平から阿曽原温泉小屋までは6~7時間。その大半は緊張感が途切れない断崖絶壁の道だ。しかし、小屋が見えてくれば、少しは気楽になれる。水平歩道から150mほど下がった阿曽原には温泉があり、ゆったりと心身の疲れをとることができるだろう。

中央に見える青い屋根が、阿曽原温泉小屋。その下にはテント場も。黒部峡谷下ノ廊下で登山者が気持ちを緩められる唯一の場所である
中央に見える青い屋根が、阿曽原温泉小屋。その下にはテント場も。黒部峡谷下ノ廊下で登山者が気持ちを緩められる唯一の場所である
テント場から一段下がった場所にある露天温泉。湯船はひとつしかなく、男性が入る時間と女性が入る時間を分けている。お湯は写真奥のトンネルから引かれている
テント場から一段下がった場所にある露天温泉。湯船はひとつしかなく、男性が入る時間と女性が入る時間を分けている。お湯は写真奥のトンネルから引かれている
お湯はトンネル内から引かれ、「高熱隧道」として知られる地下の通路に続いている
お湯はトンネル内から引かれ、「高熱隧道」として知られる地下の通路に続いている

阿曽原温泉のお湯は、小屋裏に位置する岩盤に掘られた通称「高熱隧道ずいどう」から引かれたものだ。じつは、水平歩道を開削して物資を運べるようになった後、水平歩道と並行するように岩盤内に長大な隧道(トンネル)も掘られており、その当時のエピソードは実話をもとにした吉村昭の小説『高熱隧道』の原案にもなっている。1940年に開通すると、同時期に稼働し始めた黒部第三ダム(黒部ダムのひとつ下流にあり、正式名称は「仙人谷ダム」)へトロッコ電車で資材や人員を運ぶことが可能になり、黒部川の水力発電は飛躍的にパワーアップしていく。

しかし、隧道工事の際、岩盤の熱は165℃に達してダイナマイトは暴発、しかも人智を超える雪崩も発生し、工事中の死亡者は300人を数え……。このあたりの話は「後編」でお伝えしたい。

(11月8日公開の<後編>に続く)

黒部川の流れに合わせ、地図上での水平歩道は「く」の字を書いてジグザクに延びている(地図の参照元:YAMAP  <a href="https://yamap.com/mountains/11#mountains-id-included-mountain" rel="noopener" target="_blank">YAMAPの当該箇所はこちら</a>)
黒部川の流れに合わせ、地図上での水平歩道は「く」の字を書いてジグザクに延びている(地図の参照元:YAMAP YAMAPの当該箇所はこちら)

次回、連載第12回<後編>は11/8(日)9:00公開予定です

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高橋庄太郎

たかはし・しょうたろう
山岳/アウトドアライター。1970年宮城県仙台市生まれ。高校の山岳部で山歩きを始め、出版社勤務後の2年間の無職時代には国内外のアウトドア旅へ。その後フリーランスのライターとなり、ウェブメディアや雑誌を中心に執筆活動を続けている。近年はイベントやテレビへの出演も多く、アウトドアギアのプロデュースも手掛けている。著書に『テント泊登山の基本テクニック』(山と渓谷社)、『トレッキング実践学』(ADDIX)、共著に『“無人地帯”の遊び方』(グラフィック社)など多数。

Instagram: @shotarotakahashi
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