2023.3.12

サイクリングでわかった人生における大切なこと、それは「結果」ではなく「継続」だ

爪切男、四十にして惑う？
ドラマ化もされた『死にたい夜にかぎって』で鮮烈デビュー。『クラスメイトの女子、全員好きでした』をふくむ3か月連続エッセイ刊行など、作家としての夢をかなえた著者が、いま思うのは「いい感じのおじさん」になりたいということ。これまでまったくその分野には興味がなかったのに、ひょんなことから健康と美容に目覚め……。

前回は同棲生活の家事分担で洗濯を担当することになり、毎日着る衣服や布団など、肌に直接触れるものを清潔に保つことも美容と健康において大切なことだと気づいた話でした。
今回は、体重がリバウンドした著者が、健康にダイレクトに直結する、ある運動の楽しさにはハマったエピソードです。

（イラスト／山田参助）

第16回　リバウンドおじさん、街を駆ける（ただしシェアサイクリングで）

　太った。
　また太ってしまった。
　
　炭酸飲料とカップラーメンを口にしないという私なりの食事革命に加え、同棲中の彼女が作ってくれる栄養バランスの取れた料理のおかげで、一時期は130㎏近くまであった体重は、ついに80㎏台にまで減少。このままいけば標準体重の65㎏も狙えるのではといったところでのまさかのリバウンド劇であった。

　私を待っていた落とし穴。それは〝背徳グルメ〟である。
　俗に〝背徳グルメ〟とは、食べることに罪悪感を感じてしまう食べ物のことを指す。深夜のカップラーメンや、健康のことを全く考えていない高カロリーのデザートなどがその好例である。後ろめたさを感じつつも、食したときに感じる喜びと達成感、それがクセになってしまうからたちが悪い。

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　昔からその気はあった。夜に焼肉を食べに行く約束をしている日のランチでひとり焼肉をキメてしまったり、映画デートの前日に、一緒に観る予定の映画を先に見てしまったりといった具合に、相手が大切な人であればあるほど、その人に対してけしからん行為をすることに私は快感を感じてしまうのだ。

「溜まったゴミ捨ててくるね」とか「卵と牛乳切れてたよね」など、もっともらしい口実を作り、家の外に飛び出す。恋人の目の届かぬところ、わずかな自由時間を使って内緒で口にする甘ったるい缶コーヒー、そしてローソンの「からあげクン」の美味しさといったら筆舌に尽くしがたいものがある。クン付けで呼ぶのは失礼だ。これからは「からあげ殿」と呼ばせていただこう。

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次のページ:自分が犯してきた罪がきちんと数値化して現れるのはちょっと面白い。

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