よみタイ

サイクリングでわかった人生における大切なこと、それは「結果」ではなく「継続」だ

 さて、最初は家の近所をぐるぐると回っているだけだった私だが、そのうち欲が出てきて遠出をしてみたくなってきた。
 電車や地下鉄に乗るのが苦手な私にとって、東京にはまだ行ったことのない街が、食べたいものが、見たことのない景色がたくさんある。そこに行ける。自転車でならそこに行けるんだ。こんなに嬉しいことはない。
 中野を出発して浅草、上野の方まで足をのばしてみようかな、なんなら東京を飛び出して別の県にまで行ってみるのも一興だ。旅行の計画を立てるように、サイクルスポットの位置を確認する。電動自転車の充電が切れそうな地点でうまく乗換をしなければ、なんだか駅伝のタスキをつないでいるようでワクワクする。

「はたして電動自転車で運動になるのか?」という問いには「わからない」としか私には答えられない。ただ、電動自転車の力を借りれば、しばらくの間は愛のままにわがままにサイクリングを楽しめそうな気がしている。
 四十半ばを迎える太っちょおじさんのこれからの人生における大切なこと、それは「結果」ではなく「継続」だと思う。効果があるかどうかはわからないけれど続けられそうなことがある。少なくとも私の人生には「化粧水」と「ルイボスティー」と「電動自転車」がある。それって結構贅沢な幸せなんじゃないか。

 完璧なサイクリング計画が完成したあとで私はあることに気づく。しまった、この計画通りに行動したら、うまいメシ屋に寄り過ぎて、体重がいっこうに落ちそうにない。

(イラスト/山田参助)
(イラスト/山田参助)

当連載は毎月第2、第4日曜更新です。次回は3月26日(日)21時配信予定です。お楽しみに!

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爪切男

つめ・きりお●作家。1979年生まれ、香川県出身。
2018年『死にたい夜にかぎって』(扶桑社)にてデビュー。同作が賀来賢人主演でドラマ化されるなど話題を集める。21年2月から『もはや僕は人間じゃない』(中央公論新社)、『働きアリに花束を』(扶桑社)、『クラスメイトの女子、全員好きでした』(集英社)とデビュー2作目から3社横断3か月連続刊行され話題に。
最新エッセイ『きょうも延長ナリ』(扶桑社)発売中!

公式ツイッター@tsumekiriman
(撮影/江森丈晃)

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