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カップ麺中毒の男、自炊はじめました。今日が私たちの「卵焼き記念日」です。

爪切男、四十にして惑う?
ドラマ化もされた『死にたい夜にかぎって』で鮮烈デビュー。『クラスメイトの女子、全員好きでした』をふくむ3か月連続エッセイ刊行など、作家としての夢をかなえた著者が、いま思うのは「いい感じのおじさん」になりたいということ。これまでまったくその分野には興味がなかったのに、ひょんなことから健康と美容に目覚め……。

前回は彼女いわく「樹海の臭い」という体臭についてのお話でした。
今回は、新恋人と、10年ぶり自身2度目の同棲生活をスタートさせた著者。愛する恋人との話し合いで食生活の乱れも改善していくことに……。

(イラスト/山田参助)

第13回 カップ麺中毒の男、自炊はじめました

 およそ十年ぶり、人生で二度目となる同棲生活がスタートした。
 恋人から「樹海」と形容されたオンボロアパートを巣立ち、日当たりの良いベランダ付きの賃貸マンションへ。角部屋ということもあって風通しの良さは抜群、厚めの壁で防音もバッチリ、24時間使えるゴミ捨て場もあるわと、まさに至れり尽くせりだ。

 いっこうに荷解きが終わらず、段ボール箱が積み上がったままのリビングの床に大の字になって考える。
 誰かと生活を共にする上で大切なことって何だろう。
 金銭面に関するルールをしっかり決めること。お互いの生活リズムを把握すること。家事の分担を明確にすること。これだけは言われたくない、されたくないNG要素を事前に伝え合うこと。
 どれも大事な約束事だが、私たちにとっては「食事」が大きなテーマになりそうである。

 ルイボスティーとの運命的な出会いにより、長きにわたる炭酸飲料の過剰摂取から抜け出した私。おかげさまで1年間で約30キロの大減量に成功したわけだが、それは単に糖分の摂取量が減ったことによる当然の結果であり、肝心の食生活の乱れは全くと言っていいほど改善されていなかった。

 もはや主食として口にしているカップ麺。不規則なリズムで書き仕事を行う私にとって、いつでも簡単に作れるカップ麺は〝お口の恋人〟といっていいほどかけがえのない存在である。三食すべてカップ麺という日も決して珍しくない。
 どのカップ麺も大好きだが、とくにマルちゃんの「赤いきつね」と「緑のたぬき」を長年偏愛している。普通に食すだけでは飽き足らず、「赤いきつね」の麺を「緑のたぬき」のスープで食べる〝マッシュアップ〟や、きつねとたぬきを豪快に混ぜ合わせる〝ミックス〟など、さまざまな食べ方を駆使して、優雅なカップ麺ライフを楽しんできた。

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爪切男

つめ・きりお●作家。1979年生まれ、香川県出身。
2018年『死にたい夜にかぎって』(扶桑社)にてデビュー。同作が賀来賢人主演でドラマ化されるなど話題を集める。21年2月から『もはや僕は人間じゃない』(中央公論新社)、『働きアリに花束を』(扶桑社)、『クラスメイトの女子、全員好きでした』(集英社)とデビュー2作目から3社横断3か月連続刊行され話題に。
最新エッセイ『きょうも延長ナリ』(扶桑社)発売中!

公式ツイッター@tsumekiriman
(撮影/江森丈晃)

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