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コロナ禍選挙も1年以上。内閣の「支持率下落、不支持率上昇」が選挙結果に直結しないことには理由がある

当選時の河村たかし名古屋市長事務所。集まった支持者の一人から「でっかいキンタ◯〜!」の声が!(撮影/畠山理仁)
当選時の河村たかし名古屋市長事務所。集まった支持者の一人から「でっかいキンタ◯〜!」の声が!(撮影/畠山理仁)

候補者を直接見ることで、いろんな情報が見えてくる。

 私は以前から、候補者を直接見ることをすすめてきた。現場に行くと、いろんな情報が見えてくるからだ。

 まず、ポスターに写っている候補者の顔と実際の顔が一致しないことがよくある。本当だ。街頭演説場所で「ずいぶん司会者の話が長いな」と思っていたら、候補者本人だったことが何度もある。私はポスターや選挙カーに大きく掲げられた候補者の写真と、候補者本人の顔を何度も見比べた。嘘だろ、と言われるが、本当だ。ポスターの写真には「直近3カ月以内に撮影したもの」などの法律上の規程がない。だからこういうことが起きる。
 ベテラン政治家が数十年前の顔写真を平気で使っていることもある。たしかに「本人の写真」だが、それが最新のものとは限らない。印象を良くしようとして写真を加工している場合の方が多いと思ったほうがいい。無修正は本当に珍しい。

 また、演説の前後に見せる候補者の振る舞いも投票する上でのヒントになる。自らの陣営のスタッフとの関係はどうか。有権者との距離感はどうか。事務所に集まる支持者はどんな人たちなのか(※名古屋市長選挙の回を参照)。現場に行くと、いろんな情報が手に入る。これも大切な判断材料になる。
 コロナ禍の選挙では、屋内での集会がぐっと減った。しかし、候補者は有権者とコミュニケーションを取ろうとしている。だから一生懸命な陣営の中には、感染症対策に気を使いながら、屋内集会を開く候補者も出てきた。

 先の参議院議員広島県選出議員再選挙では、自民党公認の西田ひでのり候補が屋内での集会を行っていた。200人近くが参加していた決起集会で、「これはなかなか支持者が増えているな」と感じさせた。
 しかし、最初から最後まで会場にいると、面白いことがわかった。集会の途中で「応援する地方議員の皆さん」が演台前に並んで、会場に集った人たちに応援の言葉を述べるシーンがあった。司会者が一人ひとりの名前を読み上げ、名前を呼ばれた地方議員のみなさんが会場前方に並んでいく。
 ところが、この名前を呼ぶ人のリストがなかなか終わらない。あまりにも多くの地方議員が前に出てしまったために、会場の椅子がスカスカになっていた。つまり、出席していたのはほとんどが関係者だということが現場にいるとよくわかった。
 コロナ禍において、これだけの人数を集められる組織力はすごい。しかし、集まっているのはほとんどが関係者。こうしたことも判断材料の一つになると私は思う。なによりも、候補者本人の話を直接聞くことは最大の判断材料になる。同じ候補者の演説を複数回聞くことも大切だ。同じことしか話さないのか。それともいろいろな引き出しを持っているのか。これも政治家を見る上では大切なことだ。

参議院議員広島県選出議員再選挙の西田候補の屋内での決起集会。「応援する地方議員の皆さん」が演台前に並ぶと、会場はこうなった。(撮影/畠山理仁)
参議院議員広島県選出議員再選挙の西田候補の屋内での決起集会。「応援する地方議員の皆さん」が演台前に並ぶと、会場はこうなった。(撮影/畠山理仁)
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畠山理仁

はたけやま・みちよし●フリーランスライター。1973年生まれ。愛知県出身。早稲田大学第一文学部在学中の93年より、雑誌を中心に取材、執筆活動を開始。主に、選挙と政治家を取材。『黙殺 報じられない“無頼系独立候補”たちの戦い』で、第15回開高健ノンフィクション賞を受賞(集英社より刊行)。その他、『記者会見ゲリラ戦記』(扶桑社新書)、『領土問題、私はこう考える!』(集英社)などの著書がある。
公式ツイッターは@hatakezo

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