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畠山理仁「アラフォーから楽しむ選挙漫遊記」
20年以上、国内外の選挙の現場を多数取材している、開高健ノンフィクション賞作家による“楽しくてタメになる”選挙エッセイ。

前回の第17回は東京都知事選挙で全22名の立候補者を取材した著者だからこそわかる選挙活動の裏側と、心に残ったある演説を取り上げました。

今回は、都知事選から2週間。コロナウイルス感染者数が増加する中、改めて思う「よい政策の取り上げ方」について。

東京都知事選に落選した候補者の政策が実現した例もある

感染者の再拡大は“夜街”の問題だけではない。知事の防災服とボードの色を変えることでも危機感は簡単に広報できたのでは?(撮影/畠山理仁)
感染者の再拡大は“夜街”の問題だけではない。知事の防災服とボードの色を変えることでも危機感は簡単に広報できたのでは?(撮影/畠山理仁)

自分の意見を表明することは「微力かもしれないが、無力ではない」

 東京都知事選挙の結果が出て2週間が過ぎた。投票した有権者の皆さんは後悔していないだろうか。「こんなはずではなかった」と思ってはいないだろうか。

 私がそんなことを書くのには理由がある。東京都内では都知事選終盤から新型コロナウイルス感染症の新規患者数が増加し始め、いまだに歯止めがかかっていないからだ。
 今回の都知事選で、現職の小池百合子氏は「公務を優先する」「ポストコロナの選挙をする」という理由から、オンラインでの情報発信が中心だった。街頭での選挙運動は一切行わなかった。つまり、小池氏のリソースの多くは「都政」に注ぎ込まれたことになる。
 しかし、選挙戦最終盤になると、東京都の新規感染者数は7月2日が107人、7月3日が124人、7月4日が131人と3日連続で100人を超えた。選挙終了後の7月17日には過去最大の293人を記録している。そして本日7月20日の感染者数は168人。依然として油断できない状況が続いている。

 この数字が意味するところは何か。それは「小池氏が都政に集中しても、感染者増大に歯止めをかけられなかった」ということだ。
 もちろん、都知事が他の人であれば感染者がもっと増えていた可能性もある。だから「小池氏はよくやっている」という評価をする有権者もいるはずだ。

 政治の世界に「たら」「れば」はない。そして、政治は結果責任だ。都知事選は4年に一度、有権者が自分の意思を示す貴重な機会なのだから、有権者は想像力を働かせ、常に「自分の選択が正しいのか」「正しかったのか」と意識しなければならない。選挙が終わっても、あなたの人生は続いていくからだ。
 有権者一人ひとりが権力を監視することは、自分の生活を守ることにもつながる。自分が選んだ政治家に、より良い政治をしてもらうためのエネルギーにもなる。
 選挙の時にイメージだけで政治家を祭り上げるのではなく、冷静に評価し、良い方向に進んでもらうための提言を続けてほしい。そうしないと、何度も同じ後悔を繰り返すことにもなりかねない。

 最近では、検察庁法改正案、GoToキャンペーンなど、一人ひとりが声を上げることで政治が軌道修正するケースが続いている。このことからもわかるように、誰もが自分の意見を表明することは決して無駄ではない。今回の選挙で「微力かもしれないが、無力ではない」と言い続けたのは宇都宮健児候補だった。
 当事者一人ひとりの声が、社会をより良い方向に導く力になる。
 この連載の読者には何度も言ってきたことだが、今回の都知事選を経ても私の思いは変わらない。
 候補者を愛すれば愛するほど、候補者を厳しい目で見て励ましていくことが必要だ。

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畠山理仁

はたけやま・みちよし●フリーランスライター。1973年生まれ。愛知県出身。早稲田大学第一文学部在学中の93年より、雑誌を中心に取材、執筆活動を開始。主に、選挙と政治家を取材。『黙殺 報じられない“無頼系独立候補”たちの戦い』で、第15回開高健ノンフィクション賞を受賞(集英社より刊行)。その他、『記者会見ゲリラ戦記』(扶桑社新書)、『領土問題、私はこう考える!』(集英社)などの著書がある。
公式ツイッターは@hatakezo

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