よみタイ

畠山理仁「アラフォーから楽しむ選挙漫遊記」
20年以上、国内外の選挙の現場を多数取材している、開高健ノンフィクション賞作家による“楽しくてタメになる”選挙エッセイ。

前回の第37回では4月25日に投開票が行われた名古屋市長選挙の河村市長、だけでなく、大村愛知県知事も取材した濃いレポートでした。

今回は同じ4月25日に投開票が行われた広島の参議院議員再選挙のお話。名古屋取材の合間をぬって広島でも取材をしていた畠山氏。結果はご存知のように宮口治子氏が当選を果たしましたが、「その他の4候補」として多くのメディアでは取り上げられなかった4人の候補のことを中心にお伝えします。その言葉、その選挙戦。かなり考えさせることも多いはず。選挙から時間が経った今こそぜひ読んで知ってほしいリポートです!

参議院広島県選出議員再選挙で「その他の候補」とされた4名の選挙戦をしっかり伝えたい!

6人が立候補していたが、顔と名前がすぐわかるのが3候補。1候補は文字のみ。残る2候補は?(撮影/畠山理仁)
6人が立候補していたが、顔と名前がすぐわかるのが3候補。1候補は文字のみ。残る2候補は?(撮影/畠山理仁)

コロナ禍は選挙取材のあり方も当然変えてしまった

 選挙は「不要不急の外出」にはあたらない。しかし、新型コロナウイルス感染症がここまで拡大すると、取材者としても気を遣う。選挙の基本は現地取材だが、自分自身が感染拡大の要因にならないようにする必要があるからだ。
 毎回、地方で行われる選挙を取材しにいくべきかどうかで大いに悩む。しかし、今のところはできる限りの対策を取って出かけることにしている。
 記者は人の話を聞くのが仕事だから、コロナ禍での選挙取材はとてもやりにくい。話を聞くとしても、なるべく屋外で距離を取って話を聞いている。お互いリスクを意識しながらの取材になるため、コロナ禍での選挙取材はどうしても「漫遊」感が薄くなる。
 基本的に移動は可能な限り自分の車で完結させるようにしている。公共交通機関を使う場合も他の乗客とは距離を取る。選挙取材を終える夜の時間帯には多くの飲食店が閉まっているため、弁当を買って一人で食べる。せっかく地方に行っても、その土地の名物をゆっくり堪能する機会は大幅に減ってしまった。

 それでも全国で選挙は行われる。現地では営業している飲食店もある。店外から中を覗くと、多くの場合、お客さんがいない。そんな時はなるべく空いているお店を選んで入り、黙々と食事を摂るようにしている。
 これまでのように自由な選挙取材はできなくなった。それでもやはり、現地に足を運ぶことの大切さは変わらない。その土地でしか食べられない物があるように、その土地でなければ聞けない話があるからだ。

「その他の4人」とされた候補者たちの得票数は東京ドームの定員以上だ

 だから4月中旬には、参議院広島県選出議員再選挙の取材に行った。この選挙には6人が立候補していた。
 東京にいても、新聞やテレビ、インターネットの情報である程度の情報を手に入れることはできる。私もそうした情報を大いに活用している。取材現場の記者たちが現地から貴重な情報を発信してくれていることは本当にありがたい。

 しかし、選挙の場合、毎回、奇妙な現象が起きる。多くの候補が立候補していても、限られた人しか報道されないことがよくあるからだ。
 せっかく立候補してくれた人がいるのに、情報がない。選挙はその場限りで終わるものではなく、選挙後の政治を考える上でも参考になる。その機会が失われるのは、あまりにももったいない。自分が知りたいことを知るためには、やはり現地に行くしかない。
 最近は候補者自身がインターネットやSNSを通じて自身の活動を発信するケースも増えてきた。それだけで十分だ、と考える人もいるかもしれない。しかし、それはあくまでも候補者側の発信だ。陣営が「伝えたいと思う情報」はあっても、自分たちが知りたい情報があるとは限らない。だから私は細心の注意を払いながら現地に行く。

 広島での参議院再選挙において、多くのメディアは「事実上の一騎討ち」と報じていた。たしかに選挙結果を見れば、有効投票総数に占める上位2人の得票率は9割を超えている。しかし、「その他の4人」として括られた候補者たちの得票数も「59,131票」あった。これは東京ドームの定員(5万5千人)より多い。私はこうした有権者の一票を、どうしても無視したくない。

1 2 3 4 5

[1日5分で、明日は変わる]よみタイ公式アカウント

  • よみタイ公式Twitterアカウント
  • よみタイ公式Facebookアカウント
畠山理仁

はたけやま・みちよし●フリーランスライター。1973年生まれ。愛知県出身。早稲田大学第一文学部在学中の93年より、雑誌を中心に取材、執筆活動を開始。主に、選挙と政治家を取材。『黙殺 報じられない“無頼系独立候補”たちの戦い』で、第15回開高健ノンフィクション賞を受賞(集英社より刊行)。その他、『記者会見ゲリラ戦記』(扶桑社新書)、『領土問題、私はこう考える!』(集英社)などの著書がある。
公式ツイッターは@hatakezo

週間ランキング 今読まれているホットな記事