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畠山理仁「アラフォーから楽しむ選挙漫遊記」
20年以上、国内外の選挙の現場を多数取材している、開高健ノンフィクション賞作家による“楽しくてタメになる”選挙エッセイ。

前回の第38回では広島の参議院議員再選挙で「その他の4候補」として多くのメディアで取り上げられなかった4人の候補の言葉と選挙戦をリポートしました。

今回は、もうコロナ禍の選挙が始まって1年以上。その間の起きた変化と、いまこそ考えておきたい選挙の重要性について改めてお伝えします。

コロナ禍選挙も1年以上。内閣の「支持率下落、不支持率上昇」が選挙結果に直結しないことには理由がある

菅義偉内閣の世論調査は「支持率下落、不支持率上昇」の流れがはっきりしている。 (撮影/小川裕夫)
菅義偉内閣の世論調査は「支持率下落、不支持率上昇」の流れがはっきりしている。 (撮影/小川裕夫)

最新の各社世論調査での内閣支持率を比べてみた

 新型コロナウイルス感染症が拡大する中、私が初めてコロナ禍での選挙戦を取材したのは2020年3月の熊本県知事選挙(3月5日告示、3月22日投開票)だった。
 あれから一年以上が経った。この間、「緊急事態宣言」は3回出された。しかし、新型コロナウイルス感染症の拡大は今も収まっていない。緊急事態宣言発出後も期間が延長されることが続き、もはや「緊急事態宣言」が日常化している。
 これでいいのか。よくないのか。
 評価は人によって異なるし、捉え方は自由だ。しかし、「人の意見も気になる」というみなさんは、世論調査を見てみるといい。社によって調査方法は異なるが、世の中の大きな傾向を掴むことはできる。
 そこで、5月に入ってから行われた各社世論調査での内閣支持率を見てみる。

【各社世論調査による内閣支持率】
NHK 世論調査(5月7~9日実施)
内閣支持35%、不支持43%

読売新聞・日本テレビ 世論調査(5月7~9日実施)
内閣支持43%、不支持46%

JNN(TBSテレビ) 世論調査(5月8、9日実施)
内閣支持40.0%、不支持57.0%

時事通信 世論調査(5月7~10日実施)
内閣支持32.2%、不支持44.6%

ANN(テレビ朝日) 世論調査(5月15~16日実施)
内閣支持35.6%、不支持45.9%

共同通信 世論調査(5月15~16日実施)
内閣支持41.1%、不支持47.3%

朝日新聞 世論調査(5月15~16日実施)
内閣支持33%、不支持47%

選挙ドットコム・JX通信社合同調査(5月15~16日実施)
内閣支持27.9%、不支持48.0%(電話調査)
内閣支持13.4%、不支持51.2%(ネット調査)

毎日新聞・社会調査研究センター 世論調査(5月22日実施)
内閣支持31%、不支持59%

 どうだろう。みなさんの感覚と一致するだろうか。それとも乖離しているだろうか。

 内閣支持率が一番低かったのは、選挙ドットコム・JX通信社合同調査のネット調査で、内閣支持率は13.4%。一方、不支持率が最も高かったのは、毎日新聞・社会調査研究センターの調査で、不支持率59%だった。共通しているのはいずれの調査でも不支持率が支持率を上回り、「支持率下落、不支持率上昇」の流れがはっきりしていることだ。
 つまり、菅義偉内閣に対する世間の評価は芳しくない。私たちが選んだ政治家に、私たちはあまり満足していないということになる。

 しかし、こうした世論調査の結果は選挙結果に直結しない。いくら支持率が低くても、選挙となると話は別だからだ。
 世論調査は向こうから連絡が来て答えるものだ。一方、選挙は自分が投票所に出向いて一票を投じなければカウントされない。たとえ政治に強い不満を持っていても、一票を投じなければ結果に反映されない。これが民主主義社会における基本中の基本だ。
 ところが、この基本を実行していない人が今の日本には半数近くいる。2019年7月に行われた参議院議員選挙の投票率は48.80%で、投票に行かなかった人は4400万人を超えた。

 内閣支持率が低い中で行われた過去の選挙でも、与党は強かった。それは「投票所に行って自分が支持する政党に入れる」という強固な応援団をしっかり育てているからだ。地道な努力と関係性の維持が得票につながっている。
 各政党の支持率を見てもわかるように、自民党の政党支持率は高い。一方、野党の政党支持率は遠く及ばない。固定化した支持層がそのまま選挙に行くだけでは与野党逆転は起きない。大きな変化があるとすれば、これまで選挙に行ってこなかった人たちが投票所に足を運び、野党に票を投じたときだろう。
 しかし、これまで選挙に行ってこなかった人たちを投票所に向かわせることは非常に難しい。その票を自分たちの党に入れてもらうことは、もっと難しい。
 どの政党も頭を捻っているが、特効薬はなかなか見つからない。有権者自身が「政治は自分の生活に直結する」という意識にならないと、この状態は変わらない。つまり、世論調査結果と選挙結果の乖離はいつまでもなくならないだろう。

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畠山理仁

はたけやま・みちよし●フリーランスライター。1973年生まれ。愛知県出身。早稲田大学第一文学部在学中の93年より、雑誌を中心に取材、執筆活動を開始。主に、選挙と政治家を取材。『黙殺 報じられない“無頼系独立候補”たちの戦い』で、第15回開高健ノンフィクション賞を受賞(集英社より刊行)。その他、『記者会見ゲリラ戦記』(扶桑社新書)、『領土問題、私はこう考える!』(集英社)などの著書がある。
公式ツイッターは@hatakezo

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