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畠山理仁「アラフォーから楽しむ選挙漫遊記」
20年以上、国内外の選挙の現場を多数取材している、開高健ノンフィクション賞作家による“楽しくてタメになる”選挙エッセイ。

前回の第13回では、著者が出席、質問した安倍首相会見について、その狙いと首相の回答に含まれた大切なことについてお伝えしました。
今回は「ホリエモンも出馬?」など、いよいよ話題も大きくなってきた東京都知事選挙についてのお話です。

何かを訴えたい候補者にとって「日本一コスパのいい」東京都知事選挙がやってくる!

前回2016年の都知事選ポスター。都知事選史上最多の21人が立候補。みなさんは何人覚えているだろうか?(撮影/畠山理仁)
前回2016年の都知事選ポスター。都知事選史上最多の21人が立候補。みなさんは何人覚えているだろうか?(撮影/畠山理仁)

候補者を育てなければ、選挙は「『よりマシな地獄』の選択」のまま

 選挙が待ち遠しくてたまらない。
 6月18日告示、7月5日投開票の日程で東京都知事選挙が行われるからだ。

 みなさんは都知事選にかけられる経費がどれくらいになるかご存知だろうか。
 2011年は42億円、2012年は38億円、2014年は46億円、2016年は約48億円かかっている。今回も同様の経費がかかる。これだけの経費をかけた大イベントなのだから、おおいに楽しんだほうがいいに決まっている。

 選挙を楽しむことは政治に親しむ第一歩だ。最初は野次馬でもいい。まずは選挙の存在を認識することから始めてほしい。
 選挙に関心を持てば、選挙の楽しさがわかる。誰が出ているのか、どんなことを主張しているのかを知れば、必ず結果が気になる。
 運良く「応援したい」と思う人も見つかるかもしれない。候補者は嫌いでも、「これはいい」と賛同できる政策が見つかるかもしれない。いいと思える人が見つからずに「あの人に出てもらいたかった」と誰かのことが頭に浮かぶかもしれない。
 もし、そんな出会いがあれば、あなたはとても運がいい。

 長年選挙を取材してきた経験から言えることがある。それは「すべてを任せられる候補者は滅多に出てこない」ということだ。
 自分自身が立候補しない限り、100%満足できる候補が出てくることはない。だから多くの人は、候補者の中から「よりマシな誰か」を選んで一票を投じている。

 限られた選択肢の中から選ぶのだから、当然、不満は出る。しかし、自分で選ぶことを放棄してしまうと、自動的に「別の人が選んだ候補」が当選することになる。だから選挙にはできるかぎり行ったほうがいい。

 もう少しキツい言葉で言う。
 自分たちで候補者を育てる気がなければ、選挙はいつまで経っても「『よりマシな地獄』の選択」のままだ。
 理想の政治家は誰かが用意してくれるものではない。一票を入れたいと思う人がいないなら、入れたくなるような人に立候補してもらうしかない。その人を説得できなければ、一から候補者を育てるしかない。
 当選した人に、自分たちの望みを理解してもらえるように伝えていくことも一つの方法だ。対話を重ねることで、当選した人を「理想の政治家」に近づけていく。これは政治家が聞く耳を持っていれば最も効果的な方法だ。しかし、当選した途端に耳をふさいでしまう政治家もいるから注意が必要だ。

 有権者を抜きにして「理想の政治家」は誕生しない。だからこそ、政治家をただ甘やかすのではなく、叱咤激励して育てる努力を怠ってはいけない。
 候補者も有権者も選挙を通じて育つ。それこそが民主主義の醍醐味だと私は思っている。

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畠山理仁

はたけやま・みちよし●フリーランスライター。1973年生まれ。愛知県出身。早稲田大学第一文学部在学中の93年より、雑誌を中心に取材、執筆活動を開始。主に、選挙と政治家を取材。『黙殺 報じられない“無頼系独立候補”たちの戦い』で、第15回開高健ノンフィクション賞を受賞(集英社より刊行)。その他、『記者会見ゲリラ戦記』(扶桑社新書)、『領土問題、私はこう考える!』(集英社)などの著書がある。
公式ツイッターは@hatakezo

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