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「ポテンシャルが高く、真剣に楽しめる」大注目の名古屋市長選挙戦、最速&候補者4名の告示日レポート!

河村氏は吠える!「今までやってきたことで、できゃーのは(市長の)給料800万」

 私は告示日に全候補者に会ってきた。実りの多い時間だった。実際に候補者の話を聞くことで、それぞれの魅力や足りない点が伝わってくるからだ。
 ぜひ、みなさんも一日休みを取って、全候補者を追いかけてみてほしい。投票先を選ぶ際、大いに参考になる。多様な考えに触れ、自分自身の人生も豊かにしてほしい。
 まずは告示日の各候補の動きをお伝えする。
 
 現職の河村たかし氏は事務所前で出発式を行った。

「ようおいでいただきまして(※たくさん来てくださり)、サンキューベリーマッチ、ということでございます」

 ものすごく訛った名古屋弁だ。スピーカーの音が割れていることもあり、愛知県出身の私でも意味がとれないところがある。しかし、聴衆は笑顔で聞いている。とにかく河村氏のキャラクターが全面に出る。その口ぶりは、どこかアメリカのトランプ前大統領を思わせる。
 河村氏は選挙直前に追加政策を発表した。そこには「電子マネーを利用して買物金額の30%(消費税10%相当を超える3倍)をキャッシュバック」「買物還元総額200億円、経済効果860億円消費拡大」という政策が掲げられていた。これは横井利明氏が先に発表した「生活応援商品券おひとり20,000円分配布」に対抗する景気対策だといえる。
 出発式でマイクを握った河村氏は、名古屋市長としての12年間の実績を語りだした。

「今までやってきたことといえば、できゃー(※でかい)のは(市長の)給料800万。12年になりますので、3億5千万円受け取らずに市民の皆様に返した。これから給料減らすと言ってる人(他の候補者)がいますけど、実績とこれからじゃ全然違いますよ。まあ、3億5千万よ。言わんとけば(※言わないでおけば)よかったと思うけどよぉ。12年前は(妻が怒って)家に入れんから、そこのカプセルサウナに泊まっとったがね(泊まっていた)。とんでもにゃーですわ(※とんでもないことですよ)」

 ちょっと読む方も辛くなってきたかもしれない。

「あと、市役所の職員の給料10%下げとるんよ。これがデカい。市の職員は続けております。それで180億作って行政改革をやってきた。(その中から)100億ずつ、みなさんに返しとる。100億。100万世帯ありますから、全世帯に1万円。12万円。全世帯12万ずつ戻っております。日本で名古屋だけなの! こういうことを続けれるところは」

 出発式に集ったのはコロナもあってか70人ほど。河村氏は演説が終わると28年前から乗っている自転車に「本人」という旗を立てて遊説に出かけていった。
 河村氏の主張を聞くと、「1000m級のタワーを作る」など、他の候補者にはない独自色が強いものもある。もし、別の候補がその主張をしていたら、有権者はどう受け止めるだろうか。そう考えると、河村氏のキャラクターで受け入れられている部分もあるかもしれない。

28年前から乗っている自転車に「本人」の旗を掲げて遊説に向かう河村氏。(撮影/畠山理仁)
28年前から乗っている自転車に「本人」の旗を掲げて遊説に向かう河村氏。(撮影/畠山理仁)
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畠山理仁

はたけやま・みちよし●フリーランスライター。1973年生まれ。愛知県出身。早稲田大学第一文学部在学中の93年より、雑誌を中心に取材、執筆活動を開始。主に、選挙と政治家を取材。『黙殺 報じられない“無頼系独立候補”たちの戦い』で、第15回開高健ノンフィクション賞を受賞(集英社より刊行)。その他、『記者会見ゲリラ戦記』(扶桑社新書)、『領土問題、私はこう考える!』『コロナ時代の選挙漫遊記』(ともに集英社)などの著書がある。またその取材活動は『NO 選挙, NO LIFE』(前田亜紀監督)として映画化された。
公式ツイッターは@hatakezo

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