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遅れて春がやってくる山中湖のほとりで、野点(のだて)をやりたいのだ!

東京生まれ、東京育ちの“シティボーイおじさん”が、山中湖畔に中古の一軒家を購入! 妻、娘、犬とともに東京←→山梨を行き来する2拠点生活=「デュアルライフ」をはじめました。 音楽や読書など山の家での趣味活動から、仕事やお金のやりくりといった現実的な話題まで、 著者が実体験したデュアルライフのリアルを綴ります。 別荘暮らしが優雅な富裕層の特権だったのはもう過去の話。 社会環境や生活スタイルが大きく見直されている今、必読のライフエッセイです。

1ヶ月近く山の家から遠ざかっているのには、深い理由がある

3月某日。
小学6年生の娘と、もうすぐ卒業式だねえという話をしていた流れで、
「じゃあそろそろ夜の校舎に忍び込んで、窓ガラスをたたき壊してきなよ」
と、パパちゃんジョークをかましたら、
「え……。なんでそんなことするの?」
とすごく悲しそうな顔をされてしまいました。
そこで、尾崎豊とその時代背景について説明しましたが、娘はたぶん20%くらいしか理解できなかったと思います。
いや。いまどきの小学生の間でも流行っている『うっせえわ』を引き合いに出さなかったら、理解度はもっと低かったに違いありません。
それにしても、くだらない大人のクソみたいな社会に抗う往年のユースカルチャーについて嬉々として語る父を、我が子はどう解釈したのか。ちょっと気になります。

東京・世田谷区と山梨県・山中湖村の二拠点で生活する我が家。
でもここ1ヶ月はまったく山の家に行かず、ずっと東京で生活しています。
娘の卒業・進学準備や、僕&妻の仕事が忙しいからなのですが、それ以前に、この時期はあまり行く気になれない理由があります。

彼岸もすぎ、東京は春本番。
明るく暖かな陽光が降りそそぎ、満開の桜や菜の花が目を楽しませてくれます。
一方、標高1000メートルの山中湖村は季節の巡りが東京より約1ヶ月遅く、3月下旬〜4月上旬は、感覚的に言えばまだ冬なのです。
花のツボミは固く閉じていて、あたり一面は枯れた景色です。日中の気温は徐々に上がりはじめていますが、夜間は氷点下になる日も多々。
この時期、東京から山中湖へ行くということは、春から冬へと季節を逆行するに等しく、その心理的抵抗感は意外と大きいのです。

東京は春本番なのに……。
東京は春本番なのに……。

山の家に行っていた2月下旬のある日、ガソリンスタンドでマイカーのタイヤをスタッドレスからノーマルへと交換してもらいました。
スタッフのおニイちゃんが「大丈夫すか? まだ早いすよ」と心配してくれたので、僕は東京にも家があるデュアルライフ組であり、おそらく4月まではこちらに来られないことを説明しました。

山中湖村では3月下旬でも、冬将軍の置きみやげのような大雪の降ることがあります。
昨年はまさにそうでした。
降りはじめたなと思ったらあっという間に積もり、あたり一面は白銀の世界に。
ご近所さんに聞いたところによると、3月のドカ雪はよくあることで、それがすっかりとけると、村にも本格的な春がやってくるのだそうです。
車がなければ生活できない山中湖村では、4月に入るまでスタッドレスタイヤを履いておく。これは鉄則です。

ドカ雪が降った2020年3月29日の山中湖村。
ドカ雪が降った2020年3月29日の山中湖村。
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新刊紹介

佐藤誠二朗

さとう・せいじろう●児童書出版社を経て宝島社へ入社。雑誌「宝島」「smart」の編集に携わる。2000~2009年は「smart」編集長。2010年に独立し、フリーの編集者、ライターとしてファッション、カルチャーから健康、家庭医学に至るまで幅広いジャンルで編集・執筆活動を行う。初の書き下ろし著書『ストリート・トラッド~メンズファッションは温故知新』はメンズストリートスタイルへのこだわりと愛が溢れる力作で、業界を問わず話題を呼び、ロングセラーに。他『オフィシャル・サブカル・ハンドブック』『日本懐かしスニーカー大全』『ビジネス着こなしの教科書』『ベストドレッサー・スタイルブック』『DROPtokyo 2007-2017』『ボンちゃんがいく☆』など、編集・著作物多数。

ツイッター@satoseijiro

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