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リリースから40年! 愛され続けるラフィンノーズの名曲『GET THE GLORY』誕生秘話

チャーミーの『GET THE GLORY』は、今もずっと続いている

 メジャーになること、大きくなることを否定するような空気感もあるハードコアパンクシーンの中で、「栄光をつかめ」という異質のメッセージを掲げて世に出てきたラフィンノーズ。
 そのフロントマンであるチャーミーは62歳になったいま、何を見つめ、何を思っているのだろうか。

「いつも何もかもひっくるめて楽しみたいし、100パーセントでいたいって気はあります。本日をもって62歳になりましたけど、今でももっともっと昇っていきたい。つまり、そういうことなんです。あのとき降りてきた『GET THE GLORYy』が、今もずっと続いてるような……」

――僕は今年54歳になります。ラフィンのライブで見かける周りの人たちも、同じぐらいの年齢が多いけど、めちゃくちゃ元気で楽しんでいます。この歳であんなふうに騒げる場ってなかなかないから、ラフィンのライブは最高のパーティなんですよね。

「今のラフィンの客は、40代や50代がほとんどですよ。でも、『俺が引っ張ってったるから、おまえらついてこいや!』と思って、こちらも全力でやってます。ライブは楽しくないと。人生は楽しむためのものと思っているし」

――チャーミーさんにとってファンはどんな存在ですか。

「来てくれるみんなが、本当にいとおしいですね。みんな『ライブでパワーもらった』と言ってくれるけど、本当にもらってるのこっちのほうです。みんなのおかげで、俺がいまだにおまんま食えてるというのもあるしね(笑)。ラフィンのライブは1回やるごとに、客も俺らもひとつ若返る。そんな感じ」

――演奏がはじまると、後ろの方でゆっくり見てはいられなくなります。いつも前の方で騒いでいますよ。

「そうですか。俺は人のライブに行ったら、後ろの方で見るけどね(笑)。おまえら、よくモッシュとか怖いことできるなって。絶対、無理(笑)」

――でも、客はみんな優しいですよ。足を滑らせたら周りがすぐに助けてくれるし、みんな楽しそうにニコニコして、誰も怪我しないようにモッシュしてる感じですね(笑)。

「俺らの伝えたいこともそこで、みんな理解してくれてますね。『楽しもうぜ!』ってのが一番。人生、死ぬときに後悔したくないじゃないですか。『いろいろ楽しかったからまあいいっか。好きなことやって、俺、楽しかったから、オールOK』で死んでいきたいなと思ってます。食の話もしましたけど、いくら健康管理してても、万人に必ず死は訪れるんだから。
 もう死ぬなっつうとき、もっと楽しんどきゃよかったと悔やむんじゃなくて、『なんか楽しかったな。OK!』で死ぬのがいいと思っている。だからとにかく、楽しもうぜって」

――それがラフィンの基本姿勢。近々の発売が告知されている新曲、『Be Fun, Be Free, Laughin’Nose』にも通じる心意気ですね。昔からそう思っていたんですか?

「いや。ラフィンノーズがこういうバンドだと自覚したのは、本当にここ数年のことかもしれない。それまでも無意識ではあったと思うけど。ここ数年はしっかり意識していてお客さんにもそう感じてもらいたいんですよ」

 チャーミーはライブのMCでよく「おまえらパンクやろ!」とか「俺はパンクだから」と言う。そしてチャーミーの言う“パンク”とは、髪の毛を逆立ててそこらじゅうに唾を吐き、鋲ジャンやリストバンドを手放さないといったティピカルなものではなく、もっと大きなくくりの“心の持ちよう”のようなものだ。
 
 長いファン歴を持つ僕は、今回のインタビューを終え、やっぱりチャーミーは心の恩師で、パンクの先生だと感じた。
 ラフィンノーズの曲は、それこそ80年代のインディーズ時代からここ数年でリリースされたものまで、いくつもお気に入りがあるが、中でも僕がとりわけ好きなのは、1996年発表のアルバム「A SAIN REVOLUTION」に収録されている『PUNK ALLWAYS』という曲である。
 サビで繰り返される「Punk always on my mind」という歌詞は、いつしか僕自身の座右の銘になった。
 
「いつも心はパンクで」。
 チャーミー先生から授かったこの言葉を胸に、僕もこれからの人生をアゲアゲで過ごしたいと思っている。

この日は62歳のバースディ。お祝いの花束もさらりと似合う。(撮影/木村琢也)
この日は62歳のバースディ。お祝いの花束もさらりと似合う。(撮影/木村琢也)

この項、了。次回は8月。「ニューロティカ」のATSUSHIが登場します。お楽しみに!

ドキュメンタリー「ラフィンノーズという生き方」

2011年、結成30周年時に制作・放送されたラフィンノーズ初の公式ドキュメンタリーフィルム。50歳時のチャーミー、そして当時もライブで全国を回るバンドの姿をぜひご視聴ください。

【プロフィール】
チャーミー/1961年6月21日生まれ、宮城県気仙沼市出身。
1981年12月に大阪で結成したパンクロックバンド「ラフィンノーズ」のヴォーカル。
83年12月、自ら立ち上げたインディーズ・レーベル「AA RECORES」よりファーストシングル『GET THE GLORY』をリリース。84年11月、ファーストアルバム『PUSSY FOR SALE』をリリース。85年11月、VAPよりアルバム『LAUGHIN’ NOSE』、シングル『BROKEN GENERATION』でメジャーデビューを果たすも、レコード会社の移籍、メンバーの脱退などもあり1991年に一度解散するも、1995年に再結成。以後、結成40年を超えた今も精力的なライブ活動を続けている。

その他最新情報は下記でチェックを!
公式ツイッター:@LaughinNose_
ラフィンノーズ オフィシャルHP

【撮影協力】
WONDER YOYOGI PARK
東京都渋谷区富ヶ谷1-8-7 飯島ビル2F

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佐藤誠二朗

さとう・せいじろう●児童書出版社を経て宝島社へ入社。雑誌「宝島」「smart」の編集に携わる。2000~2009年は「smart」編集長。2010年に独立し、フリーの編集者、ライターとしてファッション、カルチャーから健康、家庭医学に至るまで幅広いジャンルで編集・執筆活動を行う。初の書き下ろし著書『ストリート・トラッド~メンズファッションは温故知新』はメンズストリートスタイルへのこだわりと愛が溢れる力作で、業界を問わず話題を呼び、ロングセラーに。他『オフィシャル・サブカル・ハンドブック』『日本懐かしスニーカー大全』『ビジネス着こなしの教科書』『ベストドレッサー・スタイルブック』『DROPtokyo 2007-2017』『ボンちゃんがいく☆』など、編集・著作物多数。

ツイッター@satoseijiro

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