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佐藤誠二朗「グリズリー世代のバック・トゥ・ザ・ストリート」
グリズリー……それは北アメリカ北部に生息する大きな灰色のヒグマの名であると同時に、白髪交じりの頭を形容するスラング。頭にちらほら白いものが目立ち始める40~50代を、アラフォー、アラフィフといってしまえば簡単だけど、いくつになってもオシャレと音楽が大好きで遊び心を忘れない彼らを「グリズリー世代」と名付けよう――
そんな思いを胸に、自身もグリズリー世代真っ只中の著者がおくる、大人の男のためのファッション&カルチャーコラム。

古本のススメ〜バブル前夜のバイブル『見栄講座』&『金魂巻』を読み返す

ベストセラーになったホイチョイ・プロダクションの書籍『見栄講座』。1983年出版だから、いま読むと一体どこの国の話だと思うようなことばかりだけど、それでも面白い。

あとがきにもしっかりと書かれているが、『見栄講座』は1980年にアメリカで大ヒットし、日本でも翌年に翻訳版が出版された『オフィシャル・プレッピー・ハンドブック』のノリとテイストを拝借している。

『オフィシャル・プレッピー・ハンドブック』の著者リサ・バーンバッグは、アイビーリーガーで上流階級出身者。彼女が自虐の意味を込めて、アメリカのWASPエリートのいかにも素敵な生活を、皮肉たっぷりに描写したおふざけ本だが、その重箱の隅をつつきまくる姿勢が受け、逆にプレッピーの教科書として人気となったのだ。

『見栄講座』も同じで、バブル前夜で浮き足立つ若者のために、見栄をはって本物のお金持ち、本物のいけてる人間のように見せるためにはどうすればいいのかを、大まじめ風に指南する内容。書かれているファッションから行動まで非常に的確なので、やはり当時の若者は教科書代わりにしていた。

例えば“見栄スキー”の項。
スキー場では門外漢のふりをしようと説く。年5回はスキーに来ていても、3年ぶりにくる顔をして、ロッジではヨットやサーフィンの話ばかりするべし。そうすれば失敗の8割はカバーできる……。
こんな感じだ。なるほど、やっぱりいま読んでも参考になるなあ。

“時代の徒花”的な本を古本で探して読むと面白い

『見栄講座』のヒットを受けて、翌1984年に渡辺和博が著した『金魂巻』もまた面白い。
女性アナウンサー、医者、イラストレーター、インテリア・デザイナーなどなど、当時の人気職業をあげ、それぞれの丸金、丸ビ、つまり同じ職種ながらイケてる金持ちと、ダサい貧乏人を描き分けて分析している。

エディターやフリーライターのパートもあるので久しぶりにじっくりと読み返してみたが、痛し痒しの絶妙な描写だらけ、参考になったりならなかったりでたいへん面白い。

驚くのは、各職業の丸金と丸ビの年収が書いてあるんだけど、今と大して変わっていないこと。いや、今よりも少し高い感じがする。さすがバブル前夜。
もしバブル最盛期に書かれていたら、もっと高めに設定されていたんだろうな。その後の日本の失われた何十年かを思うと、少し虚しくなる。

こういう“時代の徒花”的な本、リアルタイムで読まなければ意味がないかと思いきや、名作はいま読んでも面白いし、過ぎし世についていろいろと考えるきっかけになる。

古本って、堅い文芸書や専門書だけじゃなくて、こういう柔らかいものもまた楽しいもんですよ。

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佐藤誠二朗

さとう・せいじろう●児童書出版社を経て宝島社へ入社。雑誌「宝島」「smart」の編集に携わる。2000~2009年は「smart」編集長。2010年に独立し、フリーの編集者、ライターとしてファッション、カルチャーから健康、家庭医学に至るまで幅広いジャンルで編集・執筆活動を行う。初の書き下ろし著書『ストリート・トラッド~メンズファッションは温故知新』はメンズストリートスタイルへのこだわりと愛が溢れる力作で、業界を問わず話題を呼び、ロングセラーに。他『糖質制限の真実』『ビジネス着こなしの教科書』『ベストドレッサー・スタイルブック』『STUSSY2017 FALL/HOLIDAY COLLECTION』『DROPtokyo 2007-2017』『ボンちゃんがいく☆』など、編集・著作物多数。

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