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佐藤誠二朗「グリズリー世代のバック・トゥ・ザ・ストリート」
グリズリー……それは北アメリカ北部に生息する大きな灰色のヒグマの名であると同時に、白髪交じりの頭を形容するスラング。頭にちらほら白いものが目立ち始める40~50代を、アラフォー、アラフィフといってしまえば簡単だけど、いくつになってもオシャレと音楽が大好きで遊び心を忘れない彼らを「グリズリー世代」と名付けよう――
そんな思いを胸に、自身もグリズリー世代真っ只中の著者がおくる、大人の男のためのファッション&カルチャーコラム。

大人の男がロマンチックで何が悪い〜鴨沢祐仁と稲垣足穂の世界

1975年に雑誌『ガロ』でデビューした漫画家・鴨沢祐仁は、イラストレーターとしても有名で、1980年代には広告や文具、それに雑誌「ビックリハウス」の表紙やCDジャケットなどでそのイラストをよく見ることができた。
惜しくも2008年に56歳の若さで亡くなってしまったが、この人が描いた世界は最高だ。特に名作とされる『クシーくんの夜の散歩』などは、ちょっと悶えてしまうほど素晴らしい。

夜の街、スパークする路面電車、墜落する流星、お月様、土星、星座、ドライマティーニ、シガレット、美少年、ジオラマ、オブジェ……。こういったものをモチーフとする独特の小宇宙が展開される。
登場人物の服装が皆おしゃれなのも特筆すべきことで、作者本人もアイビー&プレッピーに精通した洒落男だった。

身近な“タルホワールド”を探すと、その世界にますますはまっていくのだ

鴨沢祐仁の世界観は、大正から昭和期にかけて活躍した作家・稲垣足穂、特に代表作である「一千一秒物語」から強い影響を受けている。鴨沢祐仁から遡り稲垣足穂を知ってからは、自分の身の回りで “タルホ”のイメージを探し求めるようになった。

僕にとっては、東京の三鷹から調布のあたりが、タルホワールドを強く感じる街。大正から昭和初期に造られた観測施設が並ぶ国立天文台、おもちゃのような軽飛行機が発着する調布飛行場、かつて隼や零戦を作っていた中島飛行機株式会社の跡に造られたICU。ICU学内には「滑走路」と呼ばれる長い直線道路があるが、そこは昔、本当に中島飛行機の滑走路だった。中島飛行機は戦後、富士重工となり現在はスバル。そういえば僕の愛車スバルのロゴマークも、タルホ感が漂う。

二子玉川あたりもタルホチックだ。瀬田から二子玉川に降りていく国分寺崖線上の長い坂、眼下に街の灯が見える道を歩いていると、流れ星か月の欠片が落っこちてくるんじゃないかと思って、ふと夜空を見上げてしまう。
今日は少々ロマンチック過ぎましたかね。

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佐藤誠二朗

さとう・せいじろう●児童書出版社を経て宝島社へ入社。雑誌「宝島」「smart」の編集に携わる。2000~2009年は「smart」編集長。2010年に独立し、フリーの編集者、ライターとしてファッション、カルチャーから健康、家庭医学に至るまで幅広いジャンルで編集・執筆活動を行う。初の書き下ろし著書『ストリート・トラッド~メンズファッションは温故知新』はメンズストリートスタイルへのこだわりと愛が溢れる力作で、業界を問わず話題を呼び、ロングセラーに。他『糖質制限の真実』『ビジネス着こなしの教科書』『ベストドレッサー・スタイルブック』『STUSSY2017 FALL/HOLIDAY COLLECTION』『DROPtokyo 2007-2017』『ボンちゃんがいく☆』など、編集・著作物多数。

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