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佐藤誠二朗「グリズリー世代のバック・トゥ・ザ・ストリート」
グリズリー……それは北アメリカ北部に生息する大きな灰色のヒグマの名であると同時に、白髪交じりの頭を形容するスラング。頭にちらほら白いものが目立ち始める40~50代を、アラフォー、アラフィフといってしまえば簡単だけど、いくつになってもオシャレと音楽が大好きで遊び心を忘れない彼らを「グリズリー世代」と名付けよう――
そんな思いを胸に、自身もグリズリー世代真っ只中の著者がおくる、大人の男のためのファッション&カルチャーコラム。

香水〜風に薫るタクティクスと犬に好かれるポーチュガル

香水は好きでいろいろ持っているが、最近また2本買った。
1本は、オーセンティックな佇まいが前から気になっていた、老舗の4711ポーチュガル。最近はわたせせいぞうの漫画を使ったキャンペーン広告を打っているけど、まさに「ハートカクテル」なイメージで、我々グリズリー世代にはピッタリだ。

そしてもう1本もだいぶ前から買ってみたいと思っていたものの、さすがに狙いすぎかなと思って躊躇していたブツ。今回、このコラムのネタにと思ってついに買った資生堂のタクティクスだ。紡木たくの「ホットロード」、氣志團の「ワンナイトカーニバル」で有名なあの香水。「ホットロード」では、大人の事情で“タクティス”だけど。

まずタクティクスの話から。
我々世代が若かりし頃、ツッパリくん御用達だったことはご存知の通り。
いま実店舗で置いてあるところは少なく、仕方ないのでネットで買った。でも本当は、フレグランスはテスターで香りを確認してから買うべきだと思う。だって、「男らしいグリーンフローラルな香り」なんて書いてあっても、全然伝わってこないないもんね。

ネットで買わざるを得なかった僕は、キツい香りだと困るので、オーデコロンよりも軽いアフターシャワーコロンを選んだ。
さっそく、♫シャワーを浴びてwowowowコロンを叩き♫……。
おや? 意外と爽やかなフローラル系だね。その中に、ツンとスパイシーさが混ざる(個人の感想です)この香り……。嗅いだ瞬間、脳が中学の頃にトリップして、エンジェルが俺の胸を締めつけた。

部活の後、悪系の先輩が漂わせていたやつだ。それに近所のボーリング場やゲーセンにも、この香りの人がウロウロしていた。怖いからなるべく近づかないようにしていたけど。懐かしき80年代ヤンキーワールド。う〜んノスタルジック。悪くない。

山の中を走り回った愛犬からなぜか漂うムスクの香り

対するポーチュガルは、200年の歴史を持つオーデコロンの元祖だけに、落ち着いた大人の香り。最初は甘めの柑橘系だが、ラストノートにはムスクの香りが出てくる。
これまた悪くない。

ムスクといえば、ジャコウジカの臭腺から取れる分泌物を加工した香料だ。
ちょっとここから変な話になるけど。これ書いてもいいのかな? まあ、いいや。

ちょっと前のこと。山中の広い草地で、犬をリードから外して思い切り走らせた。飼ったことがある人は知ってるでしょうが、犬ってやつは、人間からするとエッと思う香りがすごく魅力的らしく、自然の中でそれを見つけると、首筋あたりに狂ったように塗りつけることがある。よくやるのはミミズで、ネコにマタタビ状態になる。

その日、うちのワンコはいたるところで大興奮して体を地面に擦りつけていた。「またミミズかな」と思って確認してみると、それは野生の鹿の糞だった。
妻と娘は「やめてー! くさいくさい」と大騒ぎだ。僕も犬の体を嗅いでみると、確かにくさいが、どこかで嗅いだことがある匂い。
ほのかにムスクの香りだったのだ。
へ〜、日本の普通の鹿にも、麝香の成分があるんだなと妙に感心した。

ところで、ポーチュガルをつけて数時間後、ムスクの香りが立ってくると、うちの犬がすり寄ってきて、やたらと匂いを嗅いでベロベロ舐めてくるんだよね。
どうしたもんだろうか。

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佐藤誠二朗

さとう・せいじろう●児童書出版社を経て宝島社へ入社。雑誌「宝島」「smart」の編集に携わる。2000~2009年は「smart」編集長。2010年に独立し、フリーの編集者、ライターとしてファッション、カルチャーから健康、家庭医学に至るまで幅広いジャンルで編集・執筆活動を行う。初の書き下ろし著書『ストリート・トラッド~メンズファッションは温故知新』はメンズストリートスタイルへのこだわりと愛が溢れる力作で、業界を問わず話題を呼び、ロングセラーに。他『糖質制限の真実』『ビジネス着こなしの教科書』『ベストドレッサー・スタイルブック』『STUSSY2017 FALL/HOLIDAY COLLECTION』『DROPtokyo 2007-2017』『ボンちゃんがいく☆』など、編集・著作物多数。

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