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佐藤誠二朗「グリズリー世代のバック・トゥ・ザ・ストリート」
グリズリー……それは北アメリカ北部に生息する大きな灰色のヒグマの名であると同時に、白髪交じりの頭を形容するスラング。頭にちらほら白いものが目立ち始める40~50代を、アラフォー、アラフィフといってしまえば簡単だけど、いくつになってもオシャレと音楽が大好きで遊び心を忘れない彼らを「グリズリー世代」と名付けよう――
そんな思いを胸に、自身もグリズリー世代真っ只中の著者がおくる、大人の男のためのファッション&カルチャーコラム。

ウォッチプロテクターとドッグタグ〜80年代に流行ったラギッド小物

グリズリー世代にとっては涙ちょちょぎれものの懐かしい小物、ウォッチプロテクターとドッグタグ(認識票)である。

いきなり脇道にそれるが、“涙ちょちょぎれる”というのも懐かしい。アニメ化もされた人気漫画『いなかっぺ大将』から流行った言葉で、元々は土佐弁だという説があるそうだ。
ウォッチプロテクターもドッグタグも“涙ちょちょぎれる”も、流行という点からすれば完全に死んでいて、いまの若者からすれば「なんじゃそりゃ?」の世界である。

ウォッチプロテクターに使われるゴムはもともと、シュノーケルと水中ゴーグルを連結するために使われるダイバー用品だ。時計のプロテクターに転用しようと考えた人が誰だったのか、いつ、どこから流行がはじまったのか、今となってはわからない。当初はダイビングの際に、時計の風防を岩やサンゴから守るという実用目的だったが、徐々にファッションアイテムとして認識されるようになった。

若者にとってサーフィンとダイビングが憧れスポーツであった1980年代、おかサーファー&おかダイバーをはじめ多くの若者の腕には、プロテクターをつけたラギッドな雰囲気のダイバーズウォッチが輝いていた。
文字盤がものすごく見にくくなるという、致命的デメリットにもかかわらず。

これからの時代、ドッグタグの再流行に期待する理由とは

ドッグタグの方もやはり、ラギッドなものを求める時代の雰囲気から流行した。
こちらの発端ははっきりしている。1986年に相次いで公開されたアメリカの映画『トップガン』と『プラトーン』の影響だ。
これらの映画の中で、米兵が首からぶら下げていたドッグタグが注目された。まあ、戦場以外ではまったく無用の長物なのだが、なぜかおしゃれアイテムとして大ブレイク。日本だけではなく世界中の若者のアクセサリーとして普及した。

ウォッチプロテクターもドッグタグも、流行した80年代当時はどちらかというとチャラい人たち、今風にいうとリア充のパリピが好むものだったので、僕はどちらも敬遠していた。でも流行が終わって幾星霜の現在、なぜか買ってみてたまに使っている。
我ながら流行遅れも甚だしいが、非常に懐かしく甘酸っぱい気分になるし、同年代の人からの受けがすこぶる良い。

ウォッチプロテクターはさておき、ドッグタグはこれから再流行するといいのにとも思っている。
超高齢化社会が進行する現在、我々だって何歳まで生きるかわからないし、いずれ認知症になって家族に心配をかける可能性は大いにある。
体にマイクロチップをぶち込まれるのは抵抗があるから、僕は名前と緊急連絡先を打刻したドッグタグを常に首からぶら下げ、ラギッドなおしゃれ老人になろうと目論んでいる。

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佐藤誠二朗

さとう・せいじろう●児童書出版社を経て宝島社へ入社。雑誌「宝島」「smart」の編集に携わる。2000~2009年は「smart」編集長。2010年に独立し、フリーの編集者、ライターとしてファッション、カルチャーから健康、家庭医学に至るまで幅広いジャンルで編集・執筆活動を行う。初の書き下ろし著書『ストリート・トラッド~メンズファッションは温故知新』はメンズストリートスタイルへのこだわりと愛が溢れる力作で、業界を問わず話題を呼び、ロングセラーに。他『糖質制限の真実』『ビジネス着こなしの教科書』『ベストドレッサー・スタイルブック』『STUSSY2017 FALL/HOLIDAY COLLECTION』『DROPtokyo 2007-2017』『ボンちゃんがいく☆』など、編集・著作物多数。

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