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佐藤誠二朗「グリズリー世代のバック・トゥ・ザ・ストリート」
グリズリー……それは北アメリカ北部に生息する大きな灰色のヒグマの名であると同時に、白髪交じりの頭を形容するスラング。頭にちらほら白いものが目立ち始める40~50代を、アラフォー、アラフィフといってしまえば簡単だけど、いくつになってもオシャレと音楽が大好きで遊び心を忘れない彼らを「グリズリー世代」と名付けよう――
そんな思いを胸に、自身もグリズリー世代真っ只中の著者がおくる、大人の男のためのファッション&カルチャーコラム。

見えないところに気を配ってこそ本当のおしゃれ、的なアートなソックス

ブーツ好きで、秋冬の外出時はほとんど毎日履いている。
すると、どうでもよくなるファッションアイテムが靴下だ。
だってまったく見えないんだから。

履き心地や耐久性は重視したいのでいつもそれなりのものは買うが、色や柄はよほど突飛なものでなければなんでもいいと考えていた。

そんな僕だが、最近、店頭で見かけて衝動買いした靴下がある。
アメリカ・ニューヨークのマンハッタンに拠点を置く靴下メーカー、HOTSOX社の“フェイマスアーティストシリーズ”だ。

ムンクやゴッホ、レオナルド・ダ・ヴィンチ、フェルメール、クリムト、葛飾北斎などの誰もが見たことがある有名絵画を、プリントではなくすべて糸の編みで表現している靴下。
僕はその中から、ノーマン・ロックウェルのものを選んだ。

古き良きアメリカのハートウォーミングな日常風景を足元に

ノーマン・ロックウェルは、軽いタッチでアメリカ市民の生活を描いたイラストレーター。1916年から1963年にかけて、アメリカでもっとも歴史がある読み物雑誌「サタデー・イブニング・ポスト」の表紙を担当したことで有名だ。

大衆向け雑誌の表紙イラストとして、当時の庶民の平凡な日常風景を描いたロックウェル。
優しさをと哀愁を帯び、ウィットに富んだハートウォーミングなイラストは、我々がイメージする “古き良きアメリカ”そのものだ。

まあカビ臭いといえばカビ臭い、いかにもオールドウェーブなんだけど。
秋も深まり、街が徐々にクリスマス気分に染まってくると、こういうオーセンティックなものに惹かれる気分。
わかりますよね?

店頭で見たかぎり、ノーマン・ロックウェルものは六種類あったが、僕はその中から二つを選んだ。

持っていた画集と照らし合わせてみると、ひとつは「LOVE LETTERS」というタイトルで、「サタデー・イブニング・ポスト」1920年1月17日号の表紙用に描かれたもの。眉間に深いシワを寄せ、何枚もの書き損じを作りながらラブレターを書く少年と、それを心配そうに見つめる犬が愛らしい。

もう一方は同誌1938年10月8日号の表紙イラストで、「BLANK CANVAS」というタイトルがつけられている。
THE SATURDAY〜と書かれた空白のキャンバスを前に、描きあぐねて頭を悩ます画家が、ノーマン・ロックウェル自身だということは一目瞭然だ。

誰に見せるわけでもない冬の靴下だけど、履いているだけで気分はホッコリ……。
って、つい下手くそなステマのような一文でまとめちゃいそうになったけど。
でもね、確かにそんな気分なんです。

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佐藤誠二朗

さとう・せいじろう●児童書出版社を経て宝島社へ入社。雑誌「宝島」「smart」の編集に携わる。2000~2009年は「smart」編集長。2010年に独立し、フリーの編集者、ライターとしてファッション、カルチャーから健康、家庭医学に至るまで幅広いジャンルで編集・執筆活動を行う。初の書き下ろし著書『ストリート・トラッド~メンズファッションは温故知新』はメンズストリートスタイルへのこだわりと愛が溢れる力作で、業界を問わず話題を呼び、ロングセラーに。他『糖質制限の真実』『ビジネス着こなしの教科書』『ベストドレッサー・スタイルブック』『STUSSY2017 FALL/HOLIDAY COLLECTION』『DROPtokyo 2007-2017』『ボンちゃんがいく☆』など、編集・著作物多数。

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