そんな思いを胸に、自身もグリズリー世代真っ只中の著者がおくる、大人の男のためのファッション&カルチャーコラム。
2019.9.27
懐かしき青春ムービーを観ていたら、80年代の変な流行を思い出した
1980年代は青春映画全盛の時代だった。
僕は、自分もリアルに青春時代だったその頃の青春映画が、今でも大好物。
最近はNETFLIXやアマゾンプライムビデオで気軽に観られるので、時間に余裕があるとついつい、ノスタルジック青春映画鑑賞タイムに突入してしまう。
「愛と青春の旅立ち」「セント・エルモアズ・ファイア」「フットルース」「フラッシュダンス」「トップガン」「バック・トゥ・ザ・フューチャー」といった、いまも語り継がれる名作・大作もいいけど、もっと好きなのはハイスクールを舞台としたややチープな作品。
「ブレックファスト・クラブ」「プリティ・イン・ピンク」「フェリスはある朝突然に」といった、ジョン・ヒューズが監督や脚本でからんだ作品なんかが最高だ。
これらのハイスクール映画は、登場人物の属性やストーリーがある程度パターン化されていて、展開の予測がつくものばかり。
でも、その単純さもまた良いところなのだ。
そのへんをパロディにした「あるあるティーン・ムービー」(2001年公開、原題「NOT ANOTHER TEEN MOVIE」)という映画もある。
かなり下品なB級作品だけど、非常に面白いので、同好の趣味がある人にはぜひ観てほしい。
若者が服を裏返しで着たのは、大人社会に対する微かなレジスタンスの姿勢だったのか?
NETFLIXで「ブレックファスト・クラブ」と「フェリスはある朝突然に」を改めて観ていたら、ちょっと面白いことに気づいた。
脇役のダサくて真面目な男の子が、映画の後半で、なぜか服を裏返しに着ているのだ。
「ブレックファスト・クラブ」ではセーター、「フェリスはある朝突然に」ではTシャツを。
そういえばそうだった。
1980年代、トレーナー(いまはスウェットと呼ぶことが多いけど、本項ではトレーナーと呼ぶのが気分)などの服を裏返しで着るのが流行っていたのだ。
なんで裏返しがトレンドになったのかは、今となってはさっぱりわからない。
だってリバーシブルでもない服を裏返しに着ても、全然かっこよくないから。
多くの場合、ファッションの流行は繰り返すものだが、この着こなしばかりは決してリバイバルしなかった。やっぱり変だったからだろう。
時代の空気というのは恐ろしいものである。
でも上記の二作品を見ていて少し理解できたことがある。
彼らが服を裏返しで着る場面は映画の後半。はっちゃけた仲間と1日を過ごし、自分の殻を破ってひとつ成長しようとするシーンなのだ。
常識的な世の中に対する、微かなレジスタンスの表現だったのかもしれない。
いくら懐かしき青春の風俗だといっても、我々世代がいまさら服を裏返しに着るわけにはいかない。
この歳でスウェットを裏返しに着ていたら、周囲の人を不安な気分にさせるだけだろうから。
