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佐藤誠二朗「グリズリー世代のバック・トゥ・ザ・ストリート」
グリズリー……それは北アメリカ北部に生息する大きな灰色のヒグマの名であると同時に、白髪交じりの頭を形容するスラング。頭にちらほら白いものが目立ち始める40~50代を、アラフォー、アラフィフといってしまえば簡単だけど、いくつになってもオシャレと音楽が大好きで遊び心を忘れない彼らを「グリズリー世代」と名付けよう――
そんな思いを胸に、自身もグリズリー世代真っ只中の著者がおくる、大人の男のためのファッション&カルチャーコラム。

懐かしき青春ムービーを観ていたら、80年代の変な流行を思い出した

1980年代は青春映画全盛の時代だった。
僕は、自分もリアルに青春時代だったその頃の青春映画が、今でも大好物。
最近はNETFLIXやアマゾンプライムビデオで気軽に観られるので、時間に余裕があるとついつい、ノスタルジック青春映画鑑賞タイムに突入してしまう。

「愛と青春の旅立ち」「セント・エルモアズ・ファイア」「フットルース」「フラッシュダンス」「トップガン」「バック・トゥ・ザ・フューチャー」といった、いまも語り継がれる名作・大作もいいけど、もっと好きなのはハイスクールを舞台としたややチープな作品。
「ブレックファスト・クラブ」「プリティ・イン・ピンク」「フェリスはある朝突然に」といった、ジョン・ヒューズが監督や脚本でからんだ作品なんかが最高だ。

これらのハイスクール映画は、登場人物の属性やストーリーがある程度パターン化されていて、展開の予測がつくものばかり。
でも、その単純さもまた良いところなのだ。

そのへんをパロディにした「あるあるティーン・ムービー」(2001年公開、原題「NOT ANOTHER TEEN MOVIE」)という映画もある。
かなり下品なB級作品だけど、非常に面白いので、同好の趣味がある人にはぜひ観てほしい。

若者が服を裏返しで着たのは、大人社会に対する微かなレジスタンスの姿勢だったのか?

NETFLIXで「ブレックファスト・クラブ」と「フェリスはある朝突然に」を改めて観ていたら、ちょっと面白いことに気づいた。
脇役のダサくて真面目な男の子が、映画の後半で、なぜか服を裏返しに着ているのだ。
「ブレックファスト・クラブ」ではセーター、「フェリスはある朝突然に」ではTシャツを。

そういえばそうだった。
1980年代、トレーナー(いまはスウェットと呼ぶことが多いけど、本項ではトレーナーと呼ぶのが気分)などの服を裏返しで着るのが流行っていたのだ。
なんで裏返しがトレンドになったのかは、今となってはさっぱりわからない。
だってリバーシブルでもない服を裏返しに着ても、全然かっこよくないから。

多くの場合、ファッションの流行は繰り返すものだが、この着こなしばかりは決してリバイバルしなかった。やっぱり変だったからだろう。
時代の空気というのは恐ろしいものである。

でも上記の二作品を見ていて少し理解できたことがある。
彼らが服を裏返しで着る場面は映画の後半。はっちゃけた仲間と1日を過ごし、自分の殻を破ってひとつ成長しようとするシーンなのだ。
常識的な世の中に対する、微かなレジスタンスの表現だったのかもしれない。

いくら懐かしき青春の風俗だといっても、我々世代がいまさら服を裏返しに着るわけにはいかない。
この歳でスウェットを裏返しに着ていたら、周囲の人を不安な気分にさせるだけだろうから。

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佐藤誠二朗

さとう・せいじろう●児童書出版社を経て宝島社へ入社。雑誌「宝島」「smart」の編集に携わる。2000~2009年は「smart」編集長。2010年に独立し、フリーの編集者、ライターとしてファッション、カルチャーから健康、家庭医学に至るまで幅広いジャンルで編集・執筆活動を行う。初の書き下ろし著書『ストリート・トラッド~メンズファッションは温故知新』はメンズストリートスタイルへのこだわりと愛が溢れる力作で、業界を問わず話題を呼び、ロングセラーに。他『糖質制限の真実』『ビジネス着こなしの教科書』『ベストドレッサー・スタイルブック』『STUSSY2017 FALL/HOLIDAY COLLECTION』『DROPtokyo 2007-2017』『ボンちゃんがいく☆』など、編集・著作物多数。

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