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佐藤誠二朗「グリズリー世代のバック・トゥ・ザ・ストリート」
グリズリー……それは北アメリカ北部に生息する大きな灰色のヒグマの名であると同時に、白髪交じりの頭を形容するスラング。頭にちらほら白いものが目立ち始める40~50代を、アラフォー、アラフィフといってしまえば簡単だけど、いくつになってもオシャレと音楽が大好きで遊び心を忘れない彼らを「グリズリー世代」と名付けよう――
そんな思いを胸に、自身もグリズリー世代真っ只中の著者がおくる、大人の男のためのファッション&カルチャーコラム。

過去最高のお気に入りになった、グラミチのデニムパンツ

どうも世間の“ジーンズ離れ”はかなり深刻らしい。
実際、ジーンズマーケットはかなりの勢いで縮小していると聞く。
そう言われてみると、「男は黙ってGパン」と思い込んでいた世代で、数年に一度はそれなりのジーンズを購入していた僕も、最後に買ったのはいつかと聞かれると、すぐには思い出せない。

デニム素材を使ったパンツはその後もいろいろ買っているのだが、正統派のジーンズらしいジーンズは、とんとご無沙汰なのだ。
そう気づいちゃうと、欲しくなってくるのが面倒くさいストリートおじさんの性。
今年の秋は何か一本、久しぶりに正統派ジーンズを買おうと決めていた。

ところが、いろいろ目移りしているうちに気持ちが冷めてきて、結局、正統派ではないデニムパンツを購入してしまった。
でもね、これがメチャクチャいいものだったのだ。デザイン、シルエット、色、機能性……すべて気に入った。
それはグラミチのデニムパンツだ。

最初に店頭で見つけたときは、「グラミチのデニム? ないなー」と思った。
デニムは元来、ワークアイテム。アウトドアブランドであるグラミチと相性がいいわけはなかろう。
こういうところにうるさいのだ。面倒くさいから。

でも、ものは試しにと思って試着してみると、目から鱗が落ちた。

正統派ジーンズに未練はあるけど、履きやすい進化形の方がやっぱりいいに決まってる

グラミチは、1960~70年代にアメリカ・ヨセミテで活躍した伝説的ロッククライマー、マイク・グラハムが、盟友のドン・ラブとともに1982年に創業したブランド。
“グラミチ”というのはマイクのニックネームだったのだそうだ。

マイクが活躍した当時、ロッククライミングに特化したウェアは存在せず、マイクも登山用のジャージとパーカという出で立ちで岩壁に挑んでいた。やがてクライミングテクニックを極めるうち、既存のウェアでは様々な不満点があることに気づいた彼は、納得できる新しいウェアの開発をスタート。
試行錯誤の末、独自の手法でつくりあげたのがグラミチのクライミングパンツだった。

グラミチパンツには様々な特色があるが、もっとも際立っているのは、180度の開脚を可能にするガゼットクロッチというディテール。
股部分にあしらわれたマチのことで、これがあるおかげでクライミング時に足場を求めて思い切り開脚してもつっぱらず、ビリっと破ける心配がないのだそうだ。

僕の買ったグラミチのデニムパンツは、クライミング用ではなく街穿きかアウトドア用のものだけど、グラミチらしくガゼットクロッチがしっかり施されている。
それに、かなり伸縮性の高いストレッチ生地を使っているので、スリムフィットなのに動きやすくて穿き心地は抜群だ。

ジーンズは1870年代に開発された、150年近くの歴史を持つファッションアイテム。
昔ながらの特色を堅持したものはかっこいいと思うが、やっぱり穿きにくい。
廃れてなくなっちゃうのは寂しいけど、こうした進化形でその文化を守っていけばいいような気がする。

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佐藤誠二朗

さとう・せいじろう●児童書出版社を経て宝島社へ入社。雑誌「宝島」「smart」の編集に携わる。2000~2009年は「smart」編集長。2010年に独立し、フリーの編集者、ライターとしてファッション、カルチャーから健康、家庭医学に至るまで幅広いジャンルで編集・執筆活動を行う。初の書き下ろし著書『ストリート・トラッド~メンズファッションは温故知新』はメンズストリートスタイルへのこだわりと愛が溢れる力作で、業界を問わず話題を呼び、ロングセラーに。他『糖質制限の真実』『ビジネス着こなしの教科書』『ベストドレッサー・スタイルブック』『STUSSY2017 FALL/HOLIDAY COLLECTION』『DROPtokyo 2007-2017』『ボンちゃんがいく☆』など、編集・著作物多数。

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