2019.4.12
デニム~おっさんこそが堂々と履きこなすべきは、ダメージデニムなのだ
18歳の頃、地元の教科書配送倉庫でアルバイトを始めた。そこにはパンクスの先輩バイトがいて、僕は彼が穿いていたダメージデニムに心を奪われた。
1980年代後半の当時、ダメージ加工デニムはまだ売られてなくて、DIYで作るのが常識だった。僕も何度か挑戦していたが、どうしても自然な雰囲気のダメージができなかったのだ。
ところがアナーキーな兄貴の穴あきデニムは、まさに何年も穿き古したように自然なものだった。
思い切って尋ねると、一見強面の兄貴は柔和な笑顔で教えてくれた。
「サープラスショップで弾丸の空薬莢をいくつか買ってきな。ペンチを使って薬莢の端をギザギザにして、ジーンズに絡めて洗濯機で回すんだよ」と。
ああ、なんてかっこいい……。と思ったけど、どう考えても洗濯機のダメージの方が激しく、親の激怒が予想されたのでやらなかった。
ヒッピー、パンクス、メタル、グランジのファッション
ダメージデニムの発明者は1960年代のヒッピー、そして第一継承者は1970年代前半に登場したニューヨークのパンクスだ。エコ志向のヒッピーは物を大事にする姿勢を示すため、ボロボロのデニムをパッチで飾って穿いた。パンクスはその影響を受けつつ、飾らずズタボロのまま穿く方がハードでかっこいいと思った。
おそらく最初は、仲間内だけの流行だったそうした着こなしは、70年代後半のロンドンパンク、そして80年代のハードコアパンクやメタルヘッズへと受け継がれ、90年代前半のグランジがブームになる頃には完全に市民権を得た。デニムメーカーが、ダメージ加工を施した商品を売り始めたのはその頃からだ。
ダメージデニムはグリズリー世代になじみのストリートスタイルのひとつ。
若いやつらなんかより、絶対かっこよく着こなせるはず、と自信を持って、しばらくご無沙汰している人もまた穿いてみてはいかがだろう。