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アノラック~ロックカルチャーと結びついたギークなアウトドアウェア

グリズリー……それは北アメリカ北部に生息する大きな灰色のヒグマの名であると同時に、白髪交じりの頭を形容するスラング。頭にちらほら白いものが目立ち始める40~50代を、アラフォー、アラフィフといってしまえば簡単だけど、いくつになってもオシャレと音楽が大好きで遊び心を忘れない彼らを「グリズリー世代」と名付けよう―― そんな思いを胸に、自身もグリズリー世代真っ只中の著者がおくる、大人の男のためのファッション&カルチャーコラム。

アノラックが好きだ。

アノラックというのは、昔はヤッケとも呼ばれたフード付きアウトドアウェア。普通のマウンテンパーカーやダウンジャケットと違う最大の特徴は、前が全部開いていないプルオーバータイプであること。前が開いていないので、防寒・防風・防水に優れているが、アウターなのに頭からかぶらなければならず、脱ぎ着は若干面倒だ。

現在のアウトドアウェアは性能が高いので、前がジップやボタン留めでも十分に雨・風・寒さを防げる。つまりイヌイットの防寒具を起源とするアノラックは、そうした高性能ウェアが開発される前に成立した、アウトドアパーカの元祖のような服なのだ。

最近、アノラックがトレンドにもなったので、今、僕のクローゼットには冬物2着、春秋物2着、計4着のアノラックが入っている。

普段着のアノラックを着て珠玉のサウンドを奏でたグラスゴーのバンド

アノラック好きになったのは、その昔の1990年頃、パステルズやBMXバンディッツ、ヴァセリンズ、ティーンエイジ・ファンクラブといった、スコットランド・グラスゴーのインディー系ロックバンドを好きになったからだ。ジャンルとしてはネオアコやギターポップにも分類されるそれらのバンドのサウンドは、ちょっと腑抜けたような雰囲気で素朴なポップ。聴いたことがない人は是非この機会にどうぞ。最高だから。

彼らはグラスゴーという寒い土地を本拠としていたことと、音楽に見た目なんて関係ないんだという姿勢を示すため、肩の力の抜けた緩いファッションを好み、普段着のアノラックを着てメディアに登場することが多かった。そのため音楽業界は彼らに“アノラックサウンド”という呼び名をつけた。

アノラックを着ると、誰でもちょっとダサく、オタクっぽい感じになれる。
そこがいいんだけど、この気持ちわかってもらえるだろうか。

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佐藤誠二朗

さとう・せいじろう●児童書出版社を経て宝島社へ入社。雑誌「宝島」「smart」の編集に携わる。2000~2009年は「smart」編集長。2010年に独立し、フリーの編集者、ライターとしてファッション、カルチャーから健康、家庭医学に至るまで幅広いジャンルで編集・執筆活動を行う。初の書き下ろし著書『ストリート・トラッド~メンズファッションは温故知新』はメンズストリートスタイルへのこだわりと愛が溢れる力作で、業界を問わず話題を呼び、ロングセラーに。他『オフィシャル・サブカル・ハンドブック』『日本懐かしスニーカー大全』『ビジネス着こなしの教科書』『ベストドレッサー・スタイルブック』『DROPtokyo 2007-2017』『ボンちゃんがいく☆』など、編集・著作物多数。

ツイッター@satoseijiro

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