2019.8.26
自称「卒業した」男〜おじさんのマウンティングが見苦しい話
先日、親しい友人と仕事関係の友人を含めた女4人で食事をしていた際に、そのうちの一人の独身女から聞いた話が、あるあると言えばあるある、酷いといえば酷い話だったので、その日の会合は大いに盛り上がり、気づけば自宅からタクシーで7000円のやや辺鄙な場所で午前2時前まで、その話と類似の想い出話やそこにいない友達の友達に起こった類似の話なども交えながら、15分に一回「そいつはクソだ、あなたはいい女だ」という茶番を繰り広げていた。
そして、私は午前4時に寝てから次の日、たまたま約束のあった男の人との約束に向かうまでほぼ寝てたので、起き抜けの会話で「最近何か面白いことあった?」と言われて思いつくのは、前日のアレだけであった。
したり顔で語るのは、浅く長く陳腐な分析
前日の主役の話を要約すると、こんな感じである。
春にたまたま友人の紹介で知り合った男性と、2回ほど食事デートを重ねた後、彼の家に泊まりに行き、犬一匹と男一人が暮らす部屋で、犬に鑑賞されながら犬的な体位も含めて重なり合い、彼に「○○ちゃん、もう他の男の人とデートとかしないで。誰にも取られたくない」と言われ、特に他に男もいなかったのだが正直に言うのも癪なので、「うん、じゃあ口説かれてる人、もうはっきり全部断っちゃおっかな」と返し、その後も密に連絡をとり、忙しい彼の仕事の合間に時々逢瀬を重ねる関係になった。
平均2週間に1回くらいは会えていたが、2ヶ月ほどその関係が続くと、彼が仕事が大詰め、という、この世の男が面倒臭い時に言う何の説得力もない言い訳を続けて、会う回数が激減し、それどころか夕食時に送ったラインの返信が翌朝になるようなことも増え、そんなに忙しいわけねぇと不安を募らせていたところ、案の定、彼のフェイスブック上で繋がっている女の1人(すでにチェック済み)が、浴衣を着て彼と思わしき人と歩いていたという、かなり信用性の高い筋からの情報があった。
そしてその日の夜はやはり彼に電話をかけても通じなかった。しかし翌朝彼に、なんかもう会えなそう?と連絡をしてみると、全然!めっちゃ忙しくて、落ち着いたら会おう、とキープされている。
私がかいつまんで話したそれを、フローズンマルガリータなんていうメキシコ人と女子しか飲まないものを飲みながら聞いていた40歳独身の男は、あぁ、と、なんか英語でいうと、「right,」みたいな変な相槌を打って、「それはねー」とあたかも俺の辞書にはしっかり載っていてみなまで聞かずとも全て理解した、というように話だした。
「要するにさ、彼は専業主婦の厳しいお母さんに育てられながら東大に行って、しかも実家が都内だから大学時代もきっとそれほど弾けて遊びまくってはなかったと思うんだよ。え?あ、やっぱりそんなに顔がかっこよくない? うん、そうでしょ、だからさ、イケメンとかチャラい男の人が、遊んでる時に、自分は楽しいことしてないっていうコンプレックスもあるし、若い時に女遊びの仕方も学んでいないわけ。だから、まだまだ青春の積み残しがたくさんあってね。今、たくさんの女の人を抱かないと、自分は人に比べて楽しいことをしないまま年老いていくことになる、それは損だと思ってるわけ。同情の余地はあるよね。だから、彼女のことを本当に軽視しているか、それなりにリスペクトしていたり素敵な女性だと思っていたりするかは別として、彼女に縛られるのは嫌なんだよ。一人に絞ると自由がなくなるでしょ。だから彼女の気持ちが加速しているときは小休止的に距離を取りたがる。でも一度抱いた女をそう簡単に手放さないよ。もともとモテないコンプレックスがあっただろうから、気持ちが卑しいというか、自分に都合のいい女がたくさん欲しいの。だからオンリーワンにする気はないだろうね」
こんな浅い上に長い上に陳腐かつ女子会で何度も踏襲されてきた分析を、フローズンマルガリータなんていうメキシコ帰りの浮かれた帰国子女しか飲まないような酒を片手に語ってしまうということは、お前が私の本を読んだことがあるとか言いながら実際は本を読むほど私に興味がないことはよくわかった。
が、それは一旦どうでもいい。
それより何だこの既視感は。
このセリフの語尾と接続詞と片手に持っている酒の種類を変えたスピーチを、私は直近だとつい一年半前に似たようなシチュエーションで聞いたのだった。