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鈴木涼美「×××な男~酒と泪とオトコと美学」
○○○な女〜オンナはそれを我慢している」のアンサーソングともいうべき新連載は、気鋭の文筆家・鈴木涼美によるオンナ目線の男性論。とはいえ、ここで取り上げるのは現代を生きる「今」のオトコたちの生態事情。かつてはもてはやされた男性像が、かつては相手にもされなかった男性キャラが、令和の今、どんな進化・退化・変遷を遂げているのか? 冴え渡る涼美節・男性論に乞うご期待!

堀江ワナビー男〜いいからお前は会議に出ろの話

私はアムラー世代で、元来の夢見がちな性格も相まって、安室ちゃんが結婚会見をした次の月にはバーバリーのチェックを模したプリーツスカートをSUZUTANで3000円くらいで買って、ダイエーの黒タートルと唯一持っていたストレッチブーツを合わせて街を闊歩し、年が明ける前にはシャギーヘアを真似てひたすら伸ばしていた髪をバッサリ前下がりのショートカットに切って、本人的には安室ちゃん、客観的に見ると山田花子、よく言ってもせいぜい有森裕子、みたいな髪型で中学に通っていた。

ので、人が自分とポテンシャルの違うものを真似た時に起きるのは、奇跡ではなく惨劇だということを、身を以て知っている。

人は何度だって夢を見るし、憧れを追いかける

とはいえ、人は何度だって夢を見る生き物なので、個人的アムラーブームが去った後も、森本容子や中根麗子など、私とは強調すべきボディ・パーツから似合う色から顔面偏差値から随分と違うものを真似ては何か違うものに近づき、次はスカーレット・ヨハンソンやジェシカ・アルバなど、もはや人種まで違うものを追いかけては無駄に散財し、本来的に自分にはどういったスタイルが似合うのか、を学ぶ機会をことごとく逃し、資生堂マキアージュが4人のモデルカラーとともに発売された暁には篠原涼子カラーを買い揃え、今でも「寝るときはどんな格好してるの?」と聞かれれば「シャネルの五番よ〜」と答えてみたくてしょうがない。

しかし森本容子プロデュースブランドのデニムを履くと20センチ歩幅でしか歩けなかったし、スカーレット・ヨハンソンのメイクを真似ると何故かすごくタイ人に間違えられたし、篠原涼子カラーは篠原涼子と同じ唇の色には近づくものの篠原涼子的な顔に作り変えられるわけでもなければ、36歳の文筆業の女は寝るときの格好を聞かれるチャンスにはあまり恵まれないので、「いつかは私も」はとっくに「どうせ私なんて」にすり替わっているし、生きててすみませんと思いながら生きてはいる。

しかし別に私が篠原涼子的なカラーの口紅をつけて本人ちょっと篠原気分で周囲には篠原より夏川りみに似ているわ、と思われていても、そんなに誰も傷つけていないので可愛いものではある。

篠原涼子カラーの後、栗山千明カラーも買い揃えた
篠原涼子カラーの後、栗山千明カラーも買い揃えた

先日、私としてはちょっとバッファロー66の時のクリスティーナ・リッチを意識したワンピースでいそいそと出かけた女子3人、男子3人の飲み会で、私以上の惨劇を起こしている男に出くわし、2週間経った今も同席した女友達一人と共に彼について批判的なレディキュールを続けている。

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鈴木涼美

すずき・すずみ●1983年東京都生まれ。作家、社会学者。慶應義塾大学環境情報学部を卒業後、東京大学大学院学際情報学府の修士課程修了。大学在学中からキャバクラ嬢として働きだし、20歳でAVデビュー、出演作は80本以上に及ぶ。2009年から日本経済新聞社に勤め、記者となるが、2014年に自主退職。女性、恋愛、セックスに関するエッセイやコラムを多数執筆。
公式Twitter → https://twitter.com/suzumixxx

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