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二宮寿朗「1980年生まれ。戦い続けるアスリート」

長崎FW玉田圭司の現在の哲学。「勝つために必要なのは、うまいヤツがまわりをカバーしてチームのために全力を尽くすこと」

自身の別メニューを終えたあとクラブハウスに戻ることなく、まわりからチームの全体練習を真剣に観る姿が印象的だった。(撮影/熊谷貫)
自身の別メニューを終えたあとクラブハウスに戻ることなく、まわりからチームの全体練習を真剣に観る姿が印象的だった。(撮影/熊谷貫)

「2017シーズンくらいから、サッカーの見方がはっきりと変わってきた」

確かなターニングポイントになったのはセレッソ大阪と契約満了になり、3年ぶりに名古屋に復帰した2017年シーズン。

風間八宏監督を迎えてJ2からの再スタートとなった古巣では、これまでとは違う角度でチームを眺めるようになっていた。

「名古屋に戻るもうちょい前くらいからなんですけど、サッカーの見方がはっきり変わっていきました。若いときは“自分がいいプレーをすれば試合でも勝てる”“自分が良ければ、チームも良い”というスタンスだったと思うんです。だから海外のサッカーを見るにしても、点を取る選手ばかり見ていた。でも次第にゲームをつくる選手やビルドアップをやっている選手に、自然と目が行くようになっていきました。

チームが勝つためにはどうすればいいのかを、とにかく考えるようになりました。指導者目線と言えるのかもしれない。もちろん自分が主役になりたいっていう気持ちはありますよ。でもそれだけじゃなく、いろんな選手がうまくやるためには自分は何ができるんだろうって。まわりを輝かせたうえで自分が輝く。そうしたいと思いました」

新しい玉田がそこにはいた。

中盤で起用されることが多く、まわりとの連携に注意を払った。まわりが輝けるように、サポート役もいとわない。体を張って、空いたスペースを必死にカバーした。オフザボールで汗をかくベテランの姿は、チームメイトを鼓舞した。J1復帰に貢献し、昇格した昨シーズンも存分に働いた。

昨夏のロシアワールドカップ。クロアチア代表ルカ・モドリッチ(レアル・マドリー)のプレーに目を奪われたという。勝つために必要なのは、うまいヤツがまわりをカバーしてチームのために全力を尽くすこと。己の変化に対して、映像に映るモドリッチが背中を押してくれた。

風間監督は「止める、蹴る」の基本技術を重視する指揮官である。

足の親指、つまりは「点」で止めるトラップに磨きをかけていき、30代後半にしてうまくなっている実感を持つことができた。選手をうまくさせる指導法や伝え方も、吸収することもできた。

「どうやればいいかは、タマを見てみろ」

風間監督が認めたお手本。そのひと言もうれしかった。名古屋から契約更新のオファーはなかったものの、「いい勉強になった」充実の2年間になった。

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二宮寿朗

にのみや・としお●スポーツライター。1972年、愛媛県生まれ。日本大学卒業後、スポーツニッポン新聞社に入社し、格闘技、ラグビー、ボクシング、サッカーなどを担当。退社後、文藝春秋「Number」の編集者を経て独立。様々な現場取材で培った観察眼と対象に迫る確かな筆致には定評がある。著書に「松田直樹を忘れない」(三栄書房)、「サッカー日本代表勝つ準備」(実業之日本社、北條聡氏との共著)、「中村俊輔 サッカー覚書」(文藝春秋、共著)など。現在、スポーツ報知にて「週刊文蹴」(毎週金曜日)、Number WEBにて「サムライブル―の原材料」(不定期)を好評連載中。

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