そんな思いを胸に、自身もグリズリー世代真っ只中の著者がおくる、大人の男のためのファッション&カルチャーコラム。
2019.5.2
スニーカー~こだわりがなければないで、選ぶのが楽しいのだ
どちらかというと、僕はスニーカーよりもブーツやレザーシューズの方が好き。これは年齢によるものではなく、若い頃からずっとそうだった。
でも、ほとんど毎日をカジュアルスタイルで過ごす僕にとって、気安く履ける靴はやっぱりスニーカーだ。
するとどうなるか。
レザーシューズやブーツはこれから一生履くつもりで、本当に好きな一品を選び抜き、気合いとともに買うのだが、こだわりのないスニーカーは、1年くらいで履きつぶす予定で、そのときの気分に合わせて気軽に買う。
そんな僕の今春の愛用スニーカーは、VANSの定番中の定番「オールドスクール」だ。
1977年に発売されたオールドスクールは、スケーターのために開発されたスニーカー。アッパーの要所に組み込まれたスウェードレザーは、スケートのデッキに擦れて傷みやすい部分を補強するためのデザインだ。
多くのスケーターやロックスターに履かれてきたオールドスクールだが、僕のお手本は、マイナー・スレットというバンドのリーダーであるイアン・マッケイのスタイルだ。
マイナー・スレットは1980年代前半、ワシントンDCを中心に盛り上がった“ストレートエッジ”という、USハードコアのサブジャンルの生みの親である。
オールドスクールを見ているとストレートエッジ思想について考えてしまう
ストレートエッジのイデオロギーは、自分たちが抱える身近な問題から目をそらさず、みずからを害する物事を遠ざけ、我が身を厳しく律しようというもの。
「セックス・ドラッグ・バイオレンス」といういかにもロック的な価値観とは正反対に、タバコ、酒、ドラッグをいっさい摂取しない、暴力をふるわない、快楽目的のみのセックスをしない……という清潔・潔白なものだった。
そうした信条を激しいハードコアサウンドに乗せて訴えるストレートエッジに、当時の一部の若者は熱狂したのだ。
……まあね、僕は1980年代のアメリカの若者じゃないから、全然そこまで清潔・潔白じゃないけれど、ストレートエッジの思想とサウンドはめちゃくちゃかっこいいと思うし、そのジャンルの神様であるイアン・マッケイのスタイルは、いくつになってもお手本なのだ。
そんなこんなで、今年は人生で通算何足目になるかも忘れてしまったVANSオールドスクールで、ストレートエッジ気分なのである。
冬が来る頃までには履きつぶし、来年にはまた何か新しいスニーカーを買うのだよ。
