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佐藤誠二朗「グリズリー世代のバック・トゥ・ザ・ストリート」
グリズリー……それは北アメリカ北部に生息する大きな灰色のヒグマの名であると同時に、白髪交じりの頭を形容するスラング。頭にちらほら白いものが目立ち始める40~50代を、アラフォー、アラフィフといってしまえば簡単だけど、いくつになってもオシャレと音楽が大好きで遊び心を忘れない彼らを「グリズリー世代」と名付けよう――
そんな思いを胸に、自身もグリズリー世代真っ只中の著者がおくる、大人の男のためのファッション&カルチャーコラム。

スニーカー~こだわりがなければないで、選ぶのが楽しいのだ

どちらかというと、僕はスニーカーよりもブーツやレザーシューズの方が好き。これは年齢によるものではなく、若い頃からずっとそうだった。

でも、ほとんど毎日をカジュアルスタイルで過ごす僕にとって、気安く履ける靴はやっぱりスニーカーだ。

するとどうなるか。
レザーシューズやブーツはこれから一生履くつもりで、本当に好きな一品を選び抜き、気合いとともに買うのだが、こだわりのないスニーカーは、1年くらいで履きつぶす予定で、そのときの気分に合わせて気軽に買う。

そんな僕の今春の愛用スニーカーは、VANSの定番中の定番「オールドスクール」だ。
1977年に発売されたオールドスクールは、スケーターのために開発されたスニーカー。アッパーの要所に組み込まれたスウェードレザーは、スケートのデッキに擦れて傷みやすい部分を補強するためのデザインだ。

多くのスケーターやロックスターに履かれてきたオールドスクールだが、僕のお手本は、マイナー・スレットというバンドのリーダーであるイアン・マッケイのスタイルだ。
マイナー・スレットは1980年代前半、ワシントンDCを中心に盛り上がった“ストレートエッジ”という、USハードコアのサブジャンルの生みの親である。

オールドスクールを見ているとストレートエッジ思想について考えてしまう

ストレートエッジのイデオロギーは、自分たちが抱える身近な問題から目をそらさず、みずからを害する物事を遠ざけ、我が身を厳しく律しようというもの。

「セックス・ドラッグ・バイオレンス」といういかにもロック的な価値観とは正反対に、タバコ、酒、ドラッグをいっさい摂取しない、暴力をふるわない、快楽目的のみのセックスをしない……という清潔・潔白なものだった。
そうした信条を激しいハードコアサウンドに乗せて訴えるストレートエッジに、当時の一部の若者は熱狂したのだ。

……まあね、僕は1980年代のアメリカの若者じゃないから、全然そこまで清潔・潔白じゃないけれど、ストレートエッジの思想とサウンドはめちゃくちゃかっこいいと思うし、そのジャンルの神様であるイアン・マッケイのスタイルは、いくつになってもお手本なのだ。

そんなこんなで、今年は人生で通算何足目になるかも忘れてしまったVANSオールドスクールで、ストレートエッジ気分なのである。
冬が来る頃までには履きつぶし、来年にはまた何か新しいスニーカーを買うのだよ。

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佐藤誠二朗

さとう・せいじろう●児童書出版社を経て宝島社へ入社。雑誌「宝島」「smart」の編集に携わる。2000~2009年は「smart」編集長。2010年に独立し、フリーの編集者、ライターとしてファッション、カルチャーから健康、家庭医学に至るまで幅広いジャンルで編集・執筆活動を行う。初の書き下ろし著書『ストリート・トラッド~メンズファッションは温故知新』はメンズストリートスタイルへのこだわりと愛が溢れる力作で、業界を問わず話題を呼び、ロングセラーに。他『糖質制限の真実』『ビジネス着こなしの教科書』『ベストドレッサー・スタイルブック』『STUSSY2017 FALL/HOLIDAY COLLECTION』『DROPtokyo 2007-2017』『ボンちゃんがいく☆』など、編集・著作物多数。

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