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2月22日に開幕するJリーグ。その中心は、もちろん3連覇を目指す川崎フロンターレだ。ユース年代から“天才”として知られ、激動のキャリアを経て、いま名実ともにJリーグと川崎を代表するスター&エースとなった家長選手を、『真説・佐山サトル』などの著書がある作家・田崎健太氏が沖縄キャンプで直撃した!
(「週刊プレイボーイ」2月18日発売号掲載分より転載)

Jリーグ開幕! 昨季のMVP家長昭博が語る王者フロンターレと自身の現在地

「勝ち続けることで、 生きたいように生きられる」。家長はそう語った。(撮影/黒田史夫)
「勝ち続けることで、 生きたいように生きられる」。家長はそう語った。(撮影/黒田史夫)

うまい言葉では気持ちは絶対に動かない

言葉を使って自分の存在を積極的に知らしめようとするアスリートと、そうでないアスリートがいる。ビジネス面、集客、競技の普及を考えれば、前者は貴重である。ただ、僕のようなへそ曲がりは、口の重い後者に心を惹かれることがある。もちろん、飛び抜けた力を持ったアスリートに限って、ではあるが。

例えば、昨シーズン、JリーグMVP(最優秀選手賞)を獲得した、川崎フロンターレの家長昭博である。
 
32歳の彼はすでに“伝説”のような話に包まれている。同じ京都府長岡京市出身、6歳下の宇佐美貴史(現・デュッセルドルフ)は小学生のときに家長の足技を見て衝撃を受けたという。ガンバ大阪のジュニアユースでは、東口順昭(現・ガンバ大阪)、本田圭佑(現・メルボルン)と同期だった。東口は家長には敵わないと悟り、フィールドプレーヤーを諦めてゴールキーパーになった。同じ左利きの本田は家長に押し出される形でサイドバックなどに回されている。そしてユースに昇格できず星稜高校に進学した――

早くから光り輝く存在だったにもかかわらず、家長に関する記事は驚くほど少ない。

「取材があまり好きではないと聞きました」

取材場所に姿を現した家長に話し掛けると、彼は表情を変えずに「はい」と短く答えた。ぶっきらぼう、ではない。普通に挨拶するような調子だった。彼が大宮アルディージャから川崎に加入したのは、2017年シーズンのことだ。16年シーズンの終わり、川崎から獲得の打診を受けたという。

「単純にいちサッカー選手として、ほかのチームから声を掛けられるのはうれしかったです。ただ、大宮との契約は残っていたので、それをまっとうするか、移籍するか」

家長は14年シーズンから大宮に在籍していた。この年、大宮はJ2に降格するも、一年でJ1へ再昇格。16年シーズンはJ1で5位に躍進していた。リーグ戦で11得点を挙げていた家長は、チームの中心的存在だった。

「いつもそうなんですけど、契約内容、来季の編成とかいろんなことを聞いて考えないといけない」

川崎側から心が動く誘い文句があったのか、と訊ねると「いや、ないです」と一瞬、口元が緩んだ。

「みんないろいろとうまいこと言うじゃないですか。誰に何と言われても、そういうのでは気持ちは動かないです」

悪戯っぽい笑みを見せた。

(次ページへ続く)

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田崎健太

たざき・けんた●1968年3月13日生まれ、京都市出身。ノンフィクション作家。早稲田大学法学部卒業後、小学館に入社。『週刊ポスト』編集部などを経て作家に。著書に『此処ではない何処かへ 広山望の挑戦』 (幻冬舎)、『ジーコジャパン11のブラジル流方程式』 (講談社プラスα文庫)、、『偶然完全 勝新太郎伝』(講談社)、『維新漂流 中田宏は何を見たのか』(集英社インターナショナル)、『球童 伊良部秀輝伝』(講談社※ミズノスポーツライター賞優秀賞)、『真説・長州力 1951-2018』(集英社)。『電通とFIFA サッカーに群がる男たち』(光文社新書)、『真説佐山サトル』(集英社インターナショナル)、『ドラガイ』(カンゼン)など多数。最新刊は『全身芸人』(太田出版)

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