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歌舞伎町の飲み屋で謎のオジサンから学んだ「ニッチ」な儲け方の本質とは?

市場の「隙間」は簡単に見つけられる

「それで、こうやって飲みながら次の営業先を探しているわけですね?」

 オジサンに、最後の答え合わせの質問をしてみました。私の経験上、結構、こういう小さなビルの個人経営の飲み屋の店主がビルそのものオーナーだったり、テナントの飲み屋にオーナーが出入りしていることが結構あったからです。実は、オジサンは次の営業先を探すために、こうやって飲み歩いているのではないか、と看板広告ビジネスの話をし始めた段階で気づいたわけです。

「兄さん、なかなか良いカンしているねぇ」とオジサンはこの日一番のいい笑顔をしてくれました。たまに、研究に直結するような、こういうイイ話を聞けるので、歌舞伎町やゴールデン街で飲むのはたまりません。

 このオジサンは過去の勤務経験から得た広告業に関する洞察と人脈を利用することで、「週3日働くだけで年収2000万円」というビジネスを作り上げたわけなのですが、ライフスタイル企業家という観点から見直したとき、一つ見落としがちな重要なメッセージを伝えてくれていました。

 ライフスタイル企業家は、趣味や経験をベースに自分のライフスタイルを楽しみながら維持するのにちょうどよい規模の起業を目指す(あるいは、意図的にその規模で成長を止める)、起業スタイルであると定義されてきました。

 このライフスタイル起業を実現するにあたって、下記の文献が指摘しているように、ライフスタイル企業家は「ニッチ」を獲得して、自分のライフスタイルに共感する人たちを顧客として「囲い込む=Staying in the fence」必要性が提唱されてきました(第2話参照)。

 しかし、その「ニッチ」を見つけるのが難しい上、その「ニッチ」が儲かると解ったら他の会社が参入してきて競争になってしまう。実際、Morrisonほか(2001)のように、ライフスタイル企業家が切り開いたニッチに、新たな企業家や既存企業が参入していくことで新産業の創出とマクロ経済への好影響を期待する論文も登場しています。

Morrison, A. J., Andrew, R., & Baum, T. G. (2001). The lifestyle economics of small tourism businesses. Journal of Travel and Tourism Research, 1(1-2), 16-25.

 しかし、そのような競争によって新産業が生まれることに注目してしまうと、「ライフスタイル企業家」という概念の意味合いが失われてしまいます。むしろライフスタイル企業家が、他の企業と競争を避ける「工夫」をいかに実践しているのかに注目する必要があるでしょう。

 そう考えたとき、オジサンの「大通りに面した大きなビルの広告はそれ相応の広告費ですし、そこに広告出せる企業に繋げるのはそれなりの規模の広告代理店になりますよ。でも、よく見ると小さいビルで看板広告出せるところはまだまだ沢山ありますし、そういうところは広告費が安すぎて大手は手を出さない」という発言は、「ニッチ探し」をする際にすごく重要な示唆を与えてくれます。

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高橋勅徳

たかはし・みさのり
東京都立大学大学院経営学研究科准教授。
神戸大学大学院経営学研究科博士課程前期課程修了。2002年神戸大学大学院経営学研究科博士課程後期課程修了。博士(経営学)。
専攻は企業家研究、ソーシャル・イノベーション論。
2009年、第4回日本ベンチャー学会清成忠男賞本賞受賞。2019年、日本NPO学会 第17回日本NPO学会賞 優秀賞受賞。
自身の婚活体験を基にした著書『婚活戦略 商品化する男女と市場の力学』がSNSを中心に大きな話題となった。

Twitter @misanori0818

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