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歌舞伎町の飲み屋で謎のオジサンから学んだ「ニッチ」な儲け方の本質とは?

自身の壮絶な婚活体験がもとになった『婚活戦略』が、学術書ながら現在6刷、異例のヒット! いま大注目の経営学者・高橋勅徳さん初のエッセイ連載です。
高橋さんが提唱するのは、競争せず気楽に稼ぐ「そこそこ起業」。
前回は、「シトロエン」を扱う伝説のカーショップを取り上げました。
今回は、高橋さんが新宿の飲み屋で知り合った謎の男性とのエピソードです。
イラスト/德丸ゆう
イラスト/德丸ゆう

歌舞伎町で会ったオジサン

 私はビールをジョッキで一杯飲むだけでギブアップ、調子に乗って二杯飲むと二日酔い確実というほど酒に弱いのですが、酒場は好きです。焼き鳥とかモツ煮とか、居酒屋じゃないと食べるのが難しい美味しいものもたくさんありますしね。

 自宅から最寄りの町が新宿になってそろそろ8年目なのですが、当初は西口近辺をうろうろしていたのが、気がつけば飲む場合は歌舞伎町〜ゴールデン街の近辺に落ち着きました。生まれ育ちが労働者の街だったことが原因なのか、チェーン店系の居酒屋でサラリーマンに囲まれて会社や上司の愚痴を聞きながら飲み食いしていると、どうにも尻の座りが悪い。おしゃれなバーで、周りでカクテルやワインを飲んでいると、何故か場違い感が半端なくなってしまう。企業城下町で生まれ育った職人の息子で、大学時代は全国的にも治安が悪いことで有名な街で過ごしてきたからなのか、心のどこかで盛り場には猥雑さと緊迫感を求めてしまい、歌舞伎町方面に足を向けるようになったのだろうと思います。

 歌舞伎町方面というと危険な街というイメージがありますが、180cm近いプロレスラー体型が効いているのか、軍パンに軍モノのジャケットを羽織って、ワークブーツを履いて歩いている大学教員らしくない風体(町中を歩いていると人波が割れる時があります)なのが原因なのか、幸いなことに酒場で絡まれたことはありません。

 ただ、たまに話しかけられると「今日、拘置所から出てきた」とか、「病院から抜け出してきて、一杯だけ飲んで帰る(と言いながら、何杯もグラスを空けて帰る)」とか、「ホストにとんでもない金額つぎ込んだ」とか、こちらも反応に困る方が多いのも、この街で飲む魅力です。その夜に会った見知らぬ人から、経営学者として生活しているとまず見聞きすることが出来ない話を聞けるのが面白い。
 
 歌舞伎町方面に河岸を変えてしばらく経った5年ほど前、メインの通りから少し離れた場所にあるモツ焼き屋で出会ったオジサンは、一味違う方でした。

「世の中には、意外に楽に稼げる仕事っていっぱいあるんですよね」
 
 その日、私に話しかけてきたのは、50代後半の普通の……というよりは、立呑みのもつ焼き屋に馴染みすぎているオジサンでした。私は特に職業を明かしたわけじゃないのですが、脈絡もなく、いきなり変なことを言い出したのです。こういうところで儲け話を始めるやつは、場所柄だいたいは詐欺師……と私は警戒水準だけを上げて話を聞いてみることにしました。

「へぇ、どんな仕事をされているんですか?」

「週三回くらい大事な人と会ってちょっと会議して、あとはメールを数本打つくらいですね。やらなきゃならないことは。それで今年は、2000万円くらいの売上です」

(キタキタ! ネットワークビジネス? それとも不動産?)

 妙に物腰が丁寧なのが、また怖い!

「おー、すごいですね。そんな夢みたいな仕事、あるんですか?」

 とりあえずもっと話を聞いてみたいと思い、ちょっとだけ身を乗り出し気味に尋ねてみました。

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高橋勅徳

たかはし・みさのり
東京都立大学大学院経営学研究科准教授。
神戸大学大学院経営学研究科博士課程前期課程修了。2002年神戸大学大学院経営学研究科博士課程後期課程修了。博士(経営学)。
専攻は企業家研究、ソーシャル・イノベーション論。
2009年、第4回日本ベンチャー学会清成忠男賞本賞受賞。2019年、日本NPO学会 第17回日本NPO学会賞 優秀賞受賞。
自身の婚活体験を基にした著書『婚活戦略 商品化する男女と市場の力学』がSNSを中心に大きな話題となった。

Twitter @misanori0818

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