2026.8.19
カリフォルニアに渡りドッグサーフィン世界大会に初参加。6000人超の観客が見守る中、結果は…【サーフィン犬 コーダが教えてくれたこと 第9回後編】
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大会初参加、ゴリゴリのプロサーファーたちに囲まれる中で成し得た入賞の奇跡

カリフォルニアの海には慣れています!といった風情のコンペティティブサーファーとか、プロで大きな企業のスポンサーもついているゴリゴリの筋肉隆々サーファーで普段2階建ての家の屋根から降りてくるような高波に平然と乗っている人たちと競うのは、正直無理やで……!と思いました。アマチュアとプロを分ける大会もあるそうなのですが、今回は一緒だったので、足元にも及びませんでした。それに、女性の出場者は私&コーダとソフィ&ラスティの2組だけであとは全員男性。なんせ世界大会初参加の私たち、プロサーファーとコンぺティティブサーファーと同じ舞台に立てただけでも誇らしいことでした。今回は入賞できなかったけど、いつかヒューマンドッグタンデムサーフィンでも賞を獲りたいなと思っています。
コーダと私はドッグサーフィン部門の中型犬クラスで準優勝(2位)になりました。割といい波に乗せられたと思うけれど、前日に15分しか入っていない海は、波も荒いしとても怖かった。コーダの安全最優先でしたが、初出場で2位になり銀メダルを獲得できたのは、やはりコーダでなければ成し得なかったことだと思います。
名前を呼ばれた瞬間、コーダを抱きしめておめでとう、ありがとうと言うと、コーダは目をしょぼしょぼさせていましたがちょっと嬉しそうでした。12kgの小さな体で夢を背負って私と共に世界の果てまでも一緒に来てくれて、そしてちゃんと結果を残して日本に持ち帰る、これほどカッコいい存在は人間でも犬でもあまりいないのではないでしょうか。本当に誇らしくて愛おしい相棒です。


本場のドッグサーフィンは、犬も飼い主もみんな素晴らしかった。運営のテレビ局もジャッジメントも責任者もスポンサーも応援している人たちの温かさや大会への協力する気持ち、お互いへの尊敬や尊重、安全管理や配慮など、私がここに来て確かめたかったことは、やっぱり間違っていなかった。これが本物のドッグサーフィン。自分を信じて、コーダと共に歩んできて本当に良かった。みんな、また来年も会えるのを楽しみにしていると言ってくれて、私も別れが本当に名残り惜しかった。
最後は、夜のビーチでみんなと焚き火をして、コーダも私のそばで、穴を掘ったり海に入ったりして楽しんでいました。世界基準の、現代的かつ動物福祉に配慮した知識を身につけてドッグサーフィンに応用しているのが当たり前なこの世界に、いつか日本も追いついて欲しいと心から願う瞬間でした。
カリフォルニアでの、夢のような日々はあっという間に過ぎ、コーダは首に銀メダルをぶら下げて、私たちは帰国しました。家族が手作りの応援うちわを持って出迎えてくれ、コーダはとても疲れていたかもしれませんが、たくさん褒められて車の中では誇らしげに見えました。
そしていつまでも幸せに暮らしましたとさ――とはいかないのが人生なのかもしれません。帰国してからはサーフィン、キャンプ、スケートボード、スノーボード、ドッグスクール。テレビや雑誌に出演したりといつもの日常が戻ってきましたが、春。去年、コーダの精巣癌が発覚した時と同じ桜が咲く頃に、コーダが咳をするようになりました。私たちにまた試練の時が訪れたのです。
ずっと恐れていたこと、目を背けていたこと。現実をみるのも、知るのも嫌でした。このまま時間が止まればいいのに。

【ドッグトレーナー浅野のWANコラム-9-】
ドッグサーフィンについて
ドッグサーフィンは、見た目がとってもカッコいい!「うちの子にもやらせてみたい!」とおっしゃる方も少なくありません。その要望にお応えする形で、飼い主さん向けドッグサーフィン体験会を、コーダと一緒に毎年開催してきました。でも、ドッグトレーナーという立場からすると、飼い主の「自分の犬にサーフィンをやらせてみたい」と「犬自身がサーフィンをやりたいかどうか」が一致していることは、残念ながら少ないように感じています。
今、私はサーフィン犬をイチから育てているのですが、そこから改めて感じたのは、ドッグサーフィンは、元からその資質や才能がある犬だけができるようになるというものではなく、日々の経験やトレーニングによって培われる、犬の身体の健康や筋肉と犬の安全を脅かさないという飼い主との信頼があってのものなのだということです。さらに、実際に海に入った時には、波の音や揺れと見た目の変化、海水の温度、波のスピードに強弱がある中で安定してボードに乗っていられるような体幹や運動神経、水に落ちても泳げる泳力、飼い主による呼び戻しや待つことに対応ができ、合図で動作ができることなど、犬が「サーフィン」出来るようになるためには、「身につけておくべきこと(社会化トレーニング)」が山ほどあるのです。
加えて、ハンドラーである人間も、海の中でも陸にいる時と同様に、犬の体調を気遣うと同時にそのボディランゲージやストレスサインを読みしっかりコントロール下におくことで、犬を危険な目に遭わせたり怖がらせたりしないことが非常に重要で、実は、かなり多くのドッグトレーニングの要素が要求される、難易度の高いドッグスポーツだと思います。
そのためには、日ごろから、犬との密度の濃いコミュニケーションが必要になるため、突き詰めると「絆が深まるなんてもんじゃなくて一心同体」「以心伝心」「俺がお前でお前が俺で」……と、そのくらい犬と仲良くなるものなのです。何かが1つでも欠けていたら、そこを補わなければ、犬が自らドッグサーフィンをやりたいとは、絶対になれないのです。
あなたが言うならやってみたい。あなたが行くなら行く。あなたとなら何でも楽しい。そう思ってもらえるようにパートナーの犬を育て、自身もそれにふさわしい飼い主になる――。その集大成が、「ドッグサーフィン」なのです。
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本連載は今回が最終回です。ご愛読ありがとうございました。コーダのその後やふたりのさらなる物語の書き下ろしを加えて、2027年春ごろに単行本化を予定しております。
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