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ライジング!
今や、当たり前にスマホで漫画を読む時代。
才能ある作家と、新しい読者をつなぐために――編集者は新たな挑戦に乗り出す!
とある出版社の漫画アプリ開発に秘められた、汗と涙と笑い(と美食)を描くお仕事小説、開幕!

前回、アプリ妨害工作を首謀した夢岡・上條・氷上の起こした惨劇を知った太陽。苦い思いを胸に抱えつつも、これでようやく本当の「ローンチ祝い」をすることができる。

小説「ライジング!」は『週刊ヤングジャンプ』公式noteでも絶賛連載中です。

※この作品はフィクションです。作中に登場する個人名・団体名等は、すべて架空のものです。

最終回 終わらない仕事も、明けない夜もない! 暗闇にいた男が目にした光

「ライジング!」 最終回

「〝マンガホープ〟バージョンツーの完成を祝って、カンパーイ!」
 小柴による乾杯の発声で、部屋中でグラスが重なる音が響いた。

 バージョンワンのローンチ日、運命の日からは一年以上が過ぎていた。アプリ終了の危機を脱してからは、大殿にバージョンツーの開発を依頼し、ようやくこの日、完成にこぎつけたのだ。開発に際しては伝説のプログラマー、ジャバウォックこと河原崎にも手伝ってもらったそうだ。
「飲んでるかタイヨー」
 野島がビール瓶を持ってやってきた。表情はいつもと変わらないが、松田は野島の感情の動きを、雰囲気で掴むことができるようになっていた。
「ご機嫌ですね、野島さん」
「そりゃこんな日だからな。しかしコシさんも変わってるよな。あのときと同じ店を打ち上げ会場にするなんて」
 そう、いま松田たちがいるのは、〝マンガホープ〟のローンチ日に打ち上げをした中華屋さんだったのだ。
「あのときも乾杯までは幸せな気分でしたよね」
「嫌なことを思い出すなタイヨー。今日はまちがいなくずっと幸せだ」
 野島がそう言ったとき、小柴のスマホが着信音を鳴らした。小柴はスマホの画面を見て眉をしかめると、周囲に「ちょっと声落として!」と声をかけてから電話に出た。
「あれ……デジャブですかね、野島さん」
 松田の言葉を無視して、野島は小柴をじっと見ている。視線の先では小柴が難しい顔で電話に対応していた。そして不意に、その言葉を口にした。
「何ィ!! 飛んだって!?」
 松田はその場でよろめいてしまった。まさかまたあんなことが……。
 
 小柴が電話を切ると、その場にいた全員が小柴に詰めよった。先頭にいたのは野島だ。
「コシさん、何ですって!?」
「いや……それがな」
 小柴は深刻そうな顔でビールを飲んで言った。
「我が家の軒先に巣を作ってた燕のヒナが、さっき飛び立ったっていう妻からの連絡でした~! はっはっは! みんなびっくりした?」
「イタズラ好きのマメシバがぁぁぁぁ!!」
 変顔でおどける小柴に、真っ先に飛び掛かったのは松田だった。
「やって良いことと悪いことがあるでしょうがぁぁぁぁ!!」
 小柴の胸ぐらをつかみ、ぐわんぐわん揺らす松田を、野島は笑いながら見ている。
「いいぞタイヨー。今日は無礼講だ」
「笑ってないで止めてくれ野島! タイヨーも落ち着いて! ツバメが低く飛んだら雨が降るっていうけど、今日は血の雨が降りそう!」
「なにうまいこと言ってんすかぁ!」
 暴れる松田を周囲がはやし立て、楽しい夜は更けていった。

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志田用太朗

京都府出身。小説家。
第16回エンターブレインえんため大賞優秀賞を獲得して、2015年にデビュー。
集英社みらい文庫からは『僕らのはちゃめちゃ課外授業 一発逆転お宝バトル』シリーズなどが好評発売中。

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