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ライジング!
今や、当たり前にスマホで漫画を読む時代。
才能ある作家と、新しい読者をつなぐために――編集者は新たな挑戦に乗り出す!
とある出版社の漫画アプリ開発に秘められた、汗と涙と笑い(と美食)を描くお仕事小説、開幕!

前回、トラブル渦中においしいのり弁で英気を養った太陽。一方、“マンガホープ”を陥れるために動いていた夢岡たちは焦り始めていた。

小説「ライジング!」は『週刊ヤングジャンプ』公式noteでも絶賛連載中です。

※この作品はフィクションです。作中に登場する個人名・団体名等は、すべて架空のものです。

第29回 最悪の時期は終わってなかった!? 忍び寄る「どん底」の予感

「ライジング!」 第29回

 上條小春は焦っていた。自身が編集長を務める週刊ヤングウェーブを中心にした青年誌漫画アプリ〝まんがウェーブ〟の開発が遅れ始めたからだ。
 Eセサミの氷上を使った裏工作で、照鋭社の青年誌漫画アプリ〝マンガホープ〟を終わらせ、失意の青年漫画ファンを一気に獲得する。そんな計画を立てていたのだが、いつの間にか〝マンガホープ〟が息を吹き返し始め、それに呼応するように、オンスケジュールだったはずの〝まんがウェーブ〟の開発が遅れ始めたのだ。

「だから、プログラマーがいなくなったってどういうことなの!」
 小春は部下の夢岡を叱責していた。彼とは不倫関係で、周囲にバレたくないという思いからか、編集部内では強めに当たってしまうきらいがあった。
「ですから、開発を担当していたフリーのプログラマーが急用ができたとかで、連絡がつかなくなったんです。しかも、同時に何人も」
「代わりを探せばいいでしょ!」
「いろいろ当たりました。でも目ぼしいプログラマーは、ほぼ全員忙しいから無理だって言われちゃって……」
 困り顔の夢岡に近づき、小春は声を潜めた。
「もしかして、照鋭社のあんたの友だちが邪魔してるとか?」
「……いえ、ちがうと思います。反撃にしては動きが早すぎるし、そもそもあいつはそういうことは苦手なはずです」
「じゃあ何が原因だっていうのよ」
 イライラしたように机を指でトントン叩きながら小春が呟いた。
 
 実のところ、名うてのプログラマーが一斉に消えた原因は小春自身にあった。
 氷上を使っての裏工作で〝マンガホープ〟をローンチ日から瀕死の状態にさせたのは小春だ。しかしそうすることで、ジャバウォックと呼ばれた伝説のプログラマーである河原崎が〝マンガホープ〟立て直しに着手することになった。河原崎が表舞台に出てくるのは十数年ぶりで、そのニュースは大殿を経由してまたたく間にトッププログラマーたちに広まった。姿なき伝説の怪物、ジャバウォック。その名を異名に持つ男の手腕を近くで見たい。
「ギャラはいらないから、一緒に作業をさせてくれ!」
 トッププログラマーたちはそう言い、こぞって〝マンガホープ〟立て直し作業に参加していった。結果として、〝まんがウェーブ〟の作業をするプログラマーたちが消えたのだ。

「氷上さんのところなら人手があるそうなんですが……」
「なによ。いるんじゃないの。迷ってないで頼みなさいよ」
「それが、相場の五倍っていう法外なギャラを要求していて……」
「あいつ! ロクな人間じゃないわね!」
 だからこそ裏工作に協力してくれたのだが、そんな事も忘れて小春は奥歯を噛み締めていた。

あと一歩で終わるところまで追いつめたはずなのに……!
あと一歩で終わるところまで追いつめたはずなのに……!
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志田用太朗

京都府出身。小説家。
第16回エンターブレインえんため大賞優秀賞を獲得して、2015年にデビュー。
集英社みらい文庫からは『僕らのはちゃめちゃ課外授業 一発逆転お宝バトル』シリーズなどが好評発売中。

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