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ライジング!
今や、当たり前にスマホで漫画を読む時代。
才能ある作家と、新しい読者をつなぐために――編集者は新たな挑戦に乗り出す!
とある出版社の漫画アプリ開発に秘められた、汗と涙と笑い(と美食)を描くお仕事小説、開幕!

前回、不吉な占い結果を受けて、厄除けを済ませた小柴と太陽。しかし、開発作業には大幅な遅れが……。

小説「ライジング!」は『週刊ヤングジャンプ』公式noteでも絶賛連載中です。

※この作品はフィクションです。作中に登場する個人名・団体名等は、すべて架空のものです。

第20回 アプリ開発の現場はとんでもない「ブラック職場」だった

「ライジング!」 第20回

〝マンガホープ〟リリース日を三週間後に控えた二月初旬。照鋭社の二〇九会議室は重苦しい空気に包まれていた。松田たちを始め、ヤングホープの編集部員も協力して細かくチェックして出していたバグをつぶす作業が、全く行われていないことが発覚したのだ。
「本当にすいません」
 平身低頭で謝る氷上を、小柴や野島、菅に松田がじっと見つめている。
「なんでそんなことに……」
 松田が信じられないと言った口調で呟いた。
「ウチの郡家というダメ社員がサボっておりまして……申し訳ございません!」
「まあいいですよ氷上さん」
 小柴が静かに語りだした。口調は穏やかだが、静かな怒りを内包しているような声色だった。
「リリースは延期します」

 小柴の決断に松田はがっくりと肩を落とした。じっくり時間をかけて作って来た〝マンガホープ〟が、予定通りのリリース日に出ないことが確定したのだ。プロジェクト開始時から携わって来たメンバーにとって、これほど残念なことはない。
 小柴の苦渋の決断に野島は天を仰ぎ、菅は対照的に顔を俯けていた。
「現実問題として、作業はいつまでに終わるんですか?」
 静かに尋ねる小柴に、氷上は少し大げさに身振りを加えて喋り出す。
「このあと帰ってですね、社員総出で事に当たるつもりです」
「いつまで、って聞いてるんですよ。質問の答えになってないでしょ。一度決めたローンチ日をズラすってのが、一体どういうことか分かってます? いつどういった宣伝を打つのか、いつまでに作家さんに原稿をあげてもらうのか。すべてローンチ日から逆算して作業していたんですよ。その予定が全部組み直しになるんですよ」
 野島が棘のある声を出した。小柴は「まあまあ」と野島をなだめ、氷上に向き直った。
「一生懸命リカバリーしていただくのは分かっています。ぜひそうしてください。それ前提で、どれぐらいバグを潰す作業に時間がかかるんですか?」
「ひと月半もあれば――

 ここで黙っていた菅が、かなり興奮した様子で話に割って入って来た。
「氷上さん! 氷上さん氷上さん! それはさすがにかかり過ぎです! 何だったら私も御社に伺って手伝いますから、もう少し何とかできないでしょうか! いや、してください! 頼みますよ!」
 アプリのプログラミング開発にEセサミと氷上を指名したのは菅である。作業の遅れは、もちろん菅の責任でもあるのだ。懇願するように言った菅を見て、氷上は考え込むような顔つきになった。
「…………二十日でどうでしょうか」
「いや十日でやりましょう氷上さん! できますよ!」
 未だ興奮冷めやらぬ様子で菅がまくし立てた。氷上は困った表情で「十日はちょっと……」と渋っていた。するとそのとき、しばらく黙っていた小柴が口を開いた。
「二週間。十四日はどうですか氷上さん」
 提案している形だが、小柴の声にはどこか有無を言わせない響があった。
「分かりました。二週間でやります」
 こうして〝マンガホープ〟は、リリース日を二週間延期することになったのだ。

リリース日が延びれば、関わる全ての部署のスケジュール調整が必要になる
リリース日が延びれば、関わる全ての部署のスケジュール調整が必要になる
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志田用太朗

京都府出身。小説家。
第16回エンターブレインえんため大賞優秀賞を獲得して、2015年にデビュー。
集英社みらい文庫からは『僕らのはちゃめちゃ課外授業 一発逆転お宝バトル』シリーズなどが好評発売中。

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