2021.10.27
1500億本中750億本捨てられる輸出用バナナ。その背景にある「不都合な真実」と「未来への希望」
貧困と環境問題を同時に解決するバナナペーパー
バナナペーパーの利点は環境配慮だけではありません。
低所得国に雇用を生み出すことを目指してバナナペーパー事業に取り組んでいるのが、スウェーデンや日本を拠点にサステナブル事業に取り組む「ワンプラネット・カフェ」のエクベリ聡子さんとペオ・エクベリさんです。
私はスウェーデン取材の際に、お二人に、とてもお世話になりました。
聡子さんとペオさんは、かつて旅行で渡航したアフリカ・ザンビアで、貧困にあえぐ人たちの姿に心を痛めたそうです。そして現地では、薪にするために大量の木が伐採されていました。
家族を養うために、違法な森林伐採を行ったり野生動物の密猟者にならざるを得ない現実……。彼らに仕事を作ることで、貧困と環境問題を同時に解決できないかと考えました。
そこでお二人は、ザンビアのバナナ農家で、通常は廃棄されているバナナの茎から繊維を取り出し、紙を作ることにしました。2011年のことです。
2012年には、バナナペーパーの試作をしてくれる日本の和紙工場が見つかりました。バナナ繊維が盗難に合うなど、ハプニングに見舞われますが、なんとかバナナペーパー第一号が完成。そしてLUSHジャパンの包装紙としてバナナペーパーが採用されることになりました。その後も、資金不足や挫折に立ち向かい、クラウドファンディングや他社との共同作業、現地での試行錯誤を続けながら進めてきました。
印刷会社や紙製品メーカーとともに商品開発と販売を進め、今では世界15か国で「ワンプラネット・カフェ」が手がけたバナナペーパーが使われるまでになりました。日本では、紙の分野で初めてWFTO認証を取得。フェアトレード認証のみならず、最近では、日本初の「クライメートポジティブ」紙にも認定されたそうです。「クライメートポジティブ」とは、二酸化炭素の削減量が、排出量より上回ることを指します。「カーボンネガティブ」と同じ意味です。
バナナペーパーは、名刺のほか、賞状やカード、小売店の包装紙として使われています。
なお、果物の枝葉が捨てられるのは、バナナだけではありません。たとえばりんごの枝なども剪定されますし、桃の葉っぱなども「葉取り」といって捨てられることが多いものです。捨てられているものを活かし、貧困や環境問題の解決にも結びつけたバナナペーパーの10年以上の取り組みには頭が下がります。
食べられるものを捨てないように工夫することはもちろんですが、皮が黒くなったバナナや、果物の枝葉など、これまでは「捨てることが当然」だと思っていたものも「本当に捨てる必要があるのか?」「何か活用できる方法があるのでは?」と考えを広げてみる――。今は、そうした意識や発想の変化が求められる段階にきているように思います。
【捨てないコツ】
・スーパーなどの店頭では、シュガースポットが出ているバナナを選んで買う。
・シュガースポットのバナナは甘さや香り、体にいい成分が増えていて、しかも安くなっていることが多いので、お得。
・すぐに食べきれないバナナは、皮をむいて冷凍し、スムージーやジュース、アイス、ケーキなどに使う。
・バナナペーパーを使った商品を生活に取り入れる。